■特報:世界の防衛,最新論点
クウェートがM-1A2戦車の更なる近代化改修を行ったと発表し驚かされました。そこで今回は各国の戦車の話題をいくつか紹介しましょう。
クウェート陸軍は新型のM-1A2K戦車を発表しました、アメリカのM-1A2SEP-V2を元に能力向上させた戦車です。クウェート軍は潤沢な石油資源を狙われ1991年のイラクからの侵略を受けて以降陸軍戦力の近代化に高い予算的優先度を付与しており、M-1A2戦車が湾岸戦争後に開発された際にも、隣国サウジアラビアとともに率先して取得しています。
M-1A2K戦車は高性能なM-1A2SEP-V2に加えてTMS改良型排熱システムを採用し、高温の中東における電子機器の保護を図り、APU補助動力システムもACPS補助動力車体冷却システムに換装、更にCS/AMM対狙撃マウントを採用、また外見上の特色として主砲砲身上に12.7mm機銃を積載装着しており、戦車全体で連装銃など機銃4丁を搭載します。
M-1A2K戦車は既存のM-1A2戦車からの近代化改修となっています、クウェート軍は更にM-865-TPCSDS-T訓練用徹甲弾1万0260発、M-1002-TPMP-T訓練用多目的榴弾、12.7mm重機関銃弾21万5000発、7.62mm機銃弾60万発を5960万ドルで取得しており、間もなく導入から30年を迎えるM-1A2戦車の能力を第一線水準とする努力を継続しています。
■チャレンジャー2HAAIP計画
全面的な徹底改修は戦車国産能力のある国から見ますと費用対効果というものを真剣に考えてしまいます。
イギリス陸軍はチャレンジャー2戦車近代化計画HAAIPプログラムを開始しました。チャレンジャー2は長らくイギリス陸軍の主力を務めるチャレンジャー戦車シリーズの最新型ですが、いまだに分離式弾薬として砲弾と装薬を別々に装填する120mmライフル砲を採用しており、また2010年前後の戦車の優先度低下を受け、旧式化に任せている現状です。
HAAIPプログラムが開始された背景には2014年クリミア併合を受け、久々にロシア軍事力の現状を突き付けられ、ロシアのT-14アルマータ戦車に対してチャレンジャー2では対応できない事が議会でも強く問題視されました。しかしイギリスは戦車開発や生産を中断してから20年近くが経っており、独自の戦車改修技術が乏しく、漸く実現したかたちです。
チャレンジャー2戦車の改修はラインメタルBAEシステムズ社が担当、まず車体を完全に分解し、老朽部分超音波検査と老朽箇所溶接修理、砲塔を新型に置換え、エンジンと変速機や懸架装置を一新し、新造状態まで戻す計画です。この費用は8億ポンドが見積もられていますが、邦貨換算で1216億円、10式戦車新造の81両分に匹敵する改修計画です。
■オランダレオパルド2海外派遣
オランダは一時戦車を全廃した事で我が国戦車懐疑派から注目されていますが、その戦車を再生し海外派遣させるという。
オランダ陸軍はリトアニアへレオパルド2A6戦車部隊半年間駐留を開始したとのこと。これはNATO前方プレゼンス計画に基づき、ロシアの軍事的圧力に曝されるバルト海沿岸のリトアニアへ重戦力を前方展開させる一環として実施され、オランダ軍戦車部隊は7月31日に鉄道輸送により到着、リトアニアには現在、ドイツ軍とノルウェー軍が駐屯中です。
レオパルド2戦車をオランダ軍は冷戦時代に1000両という膨大な数を運用していました、これはNATO正面が突破された場合、国際商港の多数並ぶオランダは存亡の危機に曝される為でした。しかし東西冷戦終結後、オランダ軍戦車は徐々に廃止され2011年には全廃されました。転機となったのは2015年、緊張再燃を背景に教育戦車小隊を再編しています。
オランダ軍の戦車保有数は現在18両、全てレオパルド2A6であり2017年よりドイツオランダ合同部隊である第43国際機械化旅団の第414戦車大隊第4中隊に集中配備されており、戦車中隊の基本定数14両に教育小隊を加え18両編成となっています。皮肉にもNATOでは18両編成のこのオランダ戦車中隊が戦車中隊としては最大の規模となっているもよう。
■ルクレルクをジャガー装甲車と
日本の場合は戦車と装甲偵察車輛の連接をもっと真剣に考えるべきですが10式戦車と16式機動戦闘車は現在全く違う部隊で運用されています。
フランス陸軍はルクレルク戦車をジャガー装甲偵察車と統合運用する近代化改修に着手しました。フランス陸軍では将来に渡り200両のルクレルク戦車を運用する計画ですが、当面は50両のルクレルク戦車を近代化改修する事となっています。従来の近代化改修としては、火器管制装置の更新やIED簡易爆発物妨害装置の追加等が既に行われていました。
ジャガー装甲偵察車はEBRCとも称される最新鋭の装甲偵察車で六輪方式の車体は戦闘重量25t、40mmCTA機関砲を搭載しています。主として105mm砲を搭載するAMX-10RC装甲偵察車の更新に充てられる装備で、対戦車戦闘が可能な一発当たりの威力が大きな105mm砲のAMX-10RCに代えて連射性能の高い40mmCTA機関砲を採用し注目される。
SICS戦闘指揮システム、もともとジャガー用に開発されたものをルクレルクに搭載する計画で、ルクレルクは開発時点からデータリンクシステムを搭載した画期的設計でしたが、SICSを搭載する事で一世代進んだ能力を有する事となります。ただ、EBRCが照準した目標をルクレルクが間接照準するような車体間共同戦闘能力については考えられていません。
■時事:南北朝鮮弾道弾実験
此処からは時事です。日本のミサイル防衛について新たに頭の痛い問題が増加しつつあるようです。
北朝鮮と韓国が相次ぎ弾道ミサイル実験を実施しました、韓国は9月15日、韓国初となるSLBM潜水艦発射弾道弾の発射に成功したとしてその実験映像を公開、SLBMの発射試験に成功した世界七番目の国になったとしています。試験を実施したのはドサンアンチャングホ級潜水艦一番艦ドサンアンチャングホ、その射程は500km以上だとしています。
北朝鮮は韓国のSLBM試験よりも二時間前、内陸部から二発の弾道ミサイルを発射しています。韓国のSLBM試験は北朝鮮のミサイル実験に対抗するものではありませんが、期せずして同日に実施されました、ミサイルは内陸部の鉄道車両から発射され、日本御EEZ排他的経済水域まで到達しています。この二日前にも巡航ミサイル試験を実施しました。
■時事:豪州原潜導入を発表
青天の霹靂という表現が相応しい驚きとはまさにこのことでしょうか。
オーストラリアはAUKUSアメリカイギリスオーストラリア防衛協力の一環として16日、原子力潜水艦の建造計画を発表しました。南太平洋非核地帯条約を発議したオーストラリア原子力潜水艦導入計画は驚きを以て迎えられましたが、ニュージーランド政府は条約に基づきANZUS防衛条約下でも原子力潜水艦の領域内進入拒否を発表する事となりました。
原子力潜水艦はコリンズ級潜水艦後継計画として提示され、また同日、オーストラリア政府はフランスとの間で進めていたアタック級潜水艦計画の中止を一方的に発表、2016年に成約した400億ドル規模の契約破棄にフランスは激怒し、駐豪駐米大使を召還、EU欧州連合と豪州のFTA自由貿易圏構想の破棄をも示唆する激しい国際問題へと発展しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
クウェートがM-1A2戦車の更なる近代化改修を行ったと発表し驚かされました。そこで今回は各国の戦車の話題をいくつか紹介しましょう。
クウェート陸軍は新型のM-1A2K戦車を発表しました、アメリカのM-1A2SEP-V2を元に能力向上させた戦車です。クウェート軍は潤沢な石油資源を狙われ1991年のイラクからの侵略を受けて以降陸軍戦力の近代化に高い予算的優先度を付与しており、M-1A2戦車が湾岸戦争後に開発された際にも、隣国サウジアラビアとともに率先して取得しています。
M-1A2K戦車は高性能なM-1A2SEP-V2に加えてTMS改良型排熱システムを採用し、高温の中東における電子機器の保護を図り、APU補助動力システムもACPS補助動力車体冷却システムに換装、更にCS/AMM対狙撃マウントを採用、また外見上の特色として主砲砲身上に12.7mm機銃を積載装着しており、戦車全体で連装銃など機銃4丁を搭載します。
M-1A2K戦車は既存のM-1A2戦車からの近代化改修となっています、クウェート軍は更にM-865-TPCSDS-T訓練用徹甲弾1万0260発、M-1002-TPMP-T訓練用多目的榴弾、12.7mm重機関銃弾21万5000発、7.62mm機銃弾60万発を5960万ドルで取得しており、間もなく導入から30年を迎えるM-1A2戦車の能力を第一線水準とする努力を継続しています。
■チャレンジャー2HAAIP計画
全面的な徹底改修は戦車国産能力のある国から見ますと費用対効果というものを真剣に考えてしまいます。
イギリス陸軍はチャレンジャー2戦車近代化計画HAAIPプログラムを開始しました。チャレンジャー2は長らくイギリス陸軍の主力を務めるチャレンジャー戦車シリーズの最新型ですが、いまだに分離式弾薬として砲弾と装薬を別々に装填する120mmライフル砲を採用しており、また2010年前後の戦車の優先度低下を受け、旧式化に任せている現状です。
HAAIPプログラムが開始された背景には2014年クリミア併合を受け、久々にロシア軍事力の現状を突き付けられ、ロシアのT-14アルマータ戦車に対してチャレンジャー2では対応できない事が議会でも強く問題視されました。しかしイギリスは戦車開発や生産を中断してから20年近くが経っており、独自の戦車改修技術が乏しく、漸く実現したかたちです。
チャレンジャー2戦車の改修はラインメタルBAEシステムズ社が担当、まず車体を完全に分解し、老朽部分超音波検査と老朽箇所溶接修理、砲塔を新型に置換え、エンジンと変速機や懸架装置を一新し、新造状態まで戻す計画です。この費用は8億ポンドが見積もられていますが、邦貨換算で1216億円、10式戦車新造の81両分に匹敵する改修計画です。
■オランダレオパルド2海外派遣
オランダは一時戦車を全廃した事で我が国戦車懐疑派から注目されていますが、その戦車を再生し海外派遣させるという。
オランダ陸軍はリトアニアへレオパルド2A6戦車部隊半年間駐留を開始したとのこと。これはNATO前方プレゼンス計画に基づき、ロシアの軍事的圧力に曝されるバルト海沿岸のリトアニアへ重戦力を前方展開させる一環として実施され、オランダ軍戦車部隊は7月31日に鉄道輸送により到着、リトアニアには現在、ドイツ軍とノルウェー軍が駐屯中です。
レオパルド2戦車をオランダ軍は冷戦時代に1000両という膨大な数を運用していました、これはNATO正面が突破された場合、国際商港の多数並ぶオランダは存亡の危機に曝される為でした。しかし東西冷戦終結後、オランダ軍戦車は徐々に廃止され2011年には全廃されました。転機となったのは2015年、緊張再燃を背景に教育戦車小隊を再編しています。
オランダ軍の戦車保有数は現在18両、全てレオパルド2A6であり2017年よりドイツオランダ合同部隊である第43国際機械化旅団の第414戦車大隊第4中隊に集中配備されており、戦車中隊の基本定数14両に教育小隊を加え18両編成となっています。皮肉にもNATOでは18両編成のこのオランダ戦車中隊が戦車中隊としては最大の規模となっているもよう。
■ルクレルクをジャガー装甲車と
日本の場合は戦車と装甲偵察車輛の連接をもっと真剣に考えるべきですが10式戦車と16式機動戦闘車は現在全く違う部隊で運用されています。
フランス陸軍はルクレルク戦車をジャガー装甲偵察車と統合運用する近代化改修に着手しました。フランス陸軍では将来に渡り200両のルクレルク戦車を運用する計画ですが、当面は50両のルクレルク戦車を近代化改修する事となっています。従来の近代化改修としては、火器管制装置の更新やIED簡易爆発物妨害装置の追加等が既に行われていました。
ジャガー装甲偵察車はEBRCとも称される最新鋭の装甲偵察車で六輪方式の車体は戦闘重量25t、40mmCTA機関砲を搭載しています。主として105mm砲を搭載するAMX-10RC装甲偵察車の更新に充てられる装備で、対戦車戦闘が可能な一発当たりの威力が大きな105mm砲のAMX-10RCに代えて連射性能の高い40mmCTA機関砲を採用し注目される。
SICS戦闘指揮システム、もともとジャガー用に開発されたものをルクレルクに搭載する計画で、ルクレルクは開発時点からデータリンクシステムを搭載した画期的設計でしたが、SICSを搭載する事で一世代進んだ能力を有する事となります。ただ、EBRCが照準した目標をルクレルクが間接照準するような車体間共同戦闘能力については考えられていません。
■時事:南北朝鮮弾道弾実験
此処からは時事です。日本のミサイル防衛について新たに頭の痛い問題が増加しつつあるようです。
北朝鮮と韓国が相次ぎ弾道ミサイル実験を実施しました、韓国は9月15日、韓国初となるSLBM潜水艦発射弾道弾の発射に成功したとしてその実験映像を公開、SLBMの発射試験に成功した世界七番目の国になったとしています。試験を実施したのはドサンアンチャングホ級潜水艦一番艦ドサンアンチャングホ、その射程は500km以上だとしています。
北朝鮮は韓国のSLBM試験よりも二時間前、内陸部から二発の弾道ミサイルを発射しています。韓国のSLBM試験は北朝鮮のミサイル実験に対抗するものではありませんが、期せずして同日に実施されました、ミサイルは内陸部の鉄道車両から発射され、日本御EEZ排他的経済水域まで到達しています。この二日前にも巡航ミサイル試験を実施しました。
■時事:豪州原潜導入を発表
青天の霹靂という表現が相応しい驚きとはまさにこのことでしょうか。
オーストラリアはAUKUSアメリカイギリスオーストラリア防衛協力の一環として16日、原子力潜水艦の建造計画を発表しました。南太平洋非核地帯条約を発議したオーストラリア原子力潜水艦導入計画は驚きを以て迎えられましたが、ニュージーランド政府は条約に基づきANZUS防衛条約下でも原子力潜水艦の領域内進入拒否を発表する事となりました。
原子力潜水艦はコリンズ級潜水艦後継計画として提示され、また同日、オーストラリア政府はフランスとの間で進めていたアタック級潜水艦計画の中止を一方的に発表、2016年に成約した400億ドル規模の契約破棄にフランスは激怒し、駐豪駐米大使を召還、EU欧州連合と豪州のFTA自由貿易圏構想の破棄をも示唆する激しい国際問題へと発展しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
という話も盛り上がるかもねー
でも韓国に先を越されたりして。
中型?空母も先を越されたりして~
情けない状況ですな~
帝国日本海軍の名が廃る
通常型と原潜は別次元の潜水艦と考えた方がいいですよ。
はよう海自も原潜と通常型とのミックスで36隻以上配備して欲しいなあ~
オーストラリアがキャンセルしたアタック級をそのままシュフラン級に再設計した原潜を日本でが購入したら意外に早く原潜が買えるかもしれません!
潜水艦代の400億ドル、なんとかなるでしょう、例えば不正なコロナ補助金を返してもらうとかね?オーストラリアのキャンセル料でもっと安く買えるかも?いま円安だからなあ、円高の時に払えば良いよね?
しかもフランスと防衛協力も進み、EUからも感謝されるでしょう!ルクレルク戦車なんかも買って、シャルル・ド・ゴール級空母も買ってみたりしてね
>中型?空母も先を越されたりして~
>情けない状況ですな~
>帝国日本海軍の名が廃る
軍事のことを知らない様ですが、日本海軍には空母はたくさんあったのですよ?