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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【08】はるな型護衛艦の対潜中枢艦から群直轄艦への近代化

2017-01-14 23:07:01 | 先端軍事テクノロジー
■システム艦と護衛隊群旗艦へ
 はるな型護衛艦の対潜中枢艦から群直轄艦への近代化という運用の転換という事例から近代化改修を考えてみましょう。

 護衛艦のFRAM改修には多くの時間と費用を代償に就役期間の数年程度の延伸が達成されます、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦は、FRAM改修が成功した一例ですが、このように多くの期間を経て改修し、教育訓練も刷新する注力の背景には何があったのでしょうか、みてゆきますと、新鋭しらね型ヘリコプター搭載護衛艦との能力格差の大きさがあります。

 海上自衛隊初のシステム艦として建造されたヘリコプター搭載護衛艦しらね型は、護衛隊群基幹としての情報処理能力やデータリンク能力を重視し設計、一番艦しらね、は第1護衛隊群第51護衛隊に所属し、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦ひえい、と。二番艦くらま、は第2護衛隊群第52護衛隊に所属し、ヘリコプター搭載護衛艦はるな、と組みました。

 当時海上自衛隊には哨戒ヘリコプターを運用できる護衛艦はヘリコプター搭載護衛艦のみであった為、2隻のヘリコプター搭載護衛艦へ合計6機のヘリコプターを運用し対潜掃討を行う方針であった訳です、しかしその後汎用護衛艦へも哨戒ヘリコプターを搭載する方針が定まり、この指針は護衛艦はつゆき型、護衛艦あさぎり型大量建造へ収斂してゆきます。

 ここで、ヘリコプター搭載護衛艦を護衛隊群直轄艦として実質的な旗艦運用を行う指針へ転換する事となりましたが、新鋭の護衛艦しらね、護衛艦くらま、に関しては充分な示威統制能力と通信能力を備えていたものの、護衛艦はるな、護衛艦ひえい、については、護衛隊群旗艦として、システム艦の能力を設計当時求められていなかった点が露出します。

 護衛隊群旗艦として運用するには、艦隊ミサイル戦や電子戦能力が、指揮するという視点から重要になります、艦隊防空ミサイルを搭載していなくとも、隷下のミサイル護衛艦を指揮しなければなりませんし、当時の、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦には、短SAMやCIWSが無く、電子戦装備も非常に貧弱で、ミサイル戦へ生存性が充分ではなかったのです。

 特別修理と共に延命修理を行う事で24年程度とされた現役期間を32年以上に延伸するとともに、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦に準じたシステム艦としての能力を増強配備し、CIWSの追加や短SAMの搭載、ECM等電子戦システムと装置の一新など、対ミサイル戦能力も整備、これにより将来にわたる護衛隊群旗艦に対応する能力を付与したものでした。

 しらね型護衛艦、三番艦きりしま、四番艦こんごう、と仮に建造が継続されているならば、はるな型護衛艦へのFRAM改修は検討されなかった可能性があります、故に新造しシステム艦を護衛艦隊隷下の4個護衛隊群へ配備するか、既存のヘリコプター搭載護衛艦をシステム艦へ改修するか、海上防衛力整備への選択肢はこの二つしか存在しなかった構図です。

 即ち、航空中枢艦という設計の艦艇に対しシステム艦としての護衛隊群旗艦という任務を追加する、任務の変更を受けての必要な改造が、はるな型へのFRAM工事であったといえるでしょう。言い換えれば、時間と費用を必要とするものの、行わなければ護衛隊群における必要な任務を遂行できない、第一線に留まれるか、一隻代替艦を新造し第二線へ置き換えるか、という選択の結果ともいえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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