北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】近江鉄道100形,美談だけでは無いリアリズムに基づく赤字29年連続の路線維持と沿線負担

2023-09-30 07:00:42 | コラム
■満員電車を夢見て
 都市部集中が進む中の少子高齢化による地方過疎化でローカル鉄道の赤字という問題は東京都知事が選挙公約で満員電車解消を叫ぶ中、一度くらいは満員にしたいと嘆息が出る問題だ。

 近江鉄道、通称近鉄、近畿日本鉄道よりも古い社名なのですけれど創業は19世紀、1896年という日清戦争の翌年、社名は一回も変更していない。路線は比較的長く本線が米原と貴生川を結ぶ47.7km、他に2.5kmの多賀線と若干短くなった9.3kmの八日市線がある。

 鉄道事業は全線赤字、29年連続赤字という。一日当たりの利用客は通勤通学の定期券を除けば3100名、撮影した彦根駅の利用者ではなく、近江鉄道全線の利用者が3100名という。しかし、考えているなあ、と感心するのは自治体と鉄道の関係性と結びつきの強さです。

 全線廃止が検討されてもおかしくないものですが、実際2016年に近江鉄道は自治体との法律に基づく協議会を申請、ここで経営状態の悪さを端的に財政支援かバス路線転換かで話し合ったという。ただ、鉄道欲しさだけではない地元自治体との建設的議論が在った。

 バス転換として、近江鉄道沿線の通学需要をスクールバスに切替えた場合は自治体のスクールバス運営費用が負担となる、沿線には道路状況の悪い場所も多く鉄道から道路に切替えた場合の拡幅の負担もあり、これは沿線自治体だけで年間19億円は必要だ、という。

 上下分離方式での解決、近江鉄道と沿線自治体の結論は思い切ったもので、近江鉄道の線路そのものを維持管理も含め自治体へ移管、そうした上で専門分野である鉄道の運行と管理は近江鉄道が継続する。近江鉄道は赤字でも、上記の19億円というほどではないゆえ。

 近江鉄道100形電車、西武鉄道新101系の中古車だ、このほか西武401系を譲り受けた近江鉄道800系等がゆったりと余生を送るように運営されています。この路線を守ろうと、出費も含め建設的議論の上に成り立つ鉄道というのは、凄い話だなあ、とおもうのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 令和五年度九月期十月期 陸... | トップ | 【京都発幕間旅情】榛名さん... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コラム」カテゴリの最新記事