北大路機関

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F-15戦闘機那覇空港滑走路逸脱事案、管制官の判断ミスが原因?

2011-12-22 21:18:07 | 防衛・安全保障

◆一機は離陸、逸脱機もAB点火中に中止命令

 F-15戦闘機那覇空港滑走路逸脱事案について、管制官のミスがあるのではないか、という視点です。これは既に報道されているのでしょうか。

Img_9026 事実関係を最初に整理します。12月19日1230頃、那覇基地より対領空侵犯措置へ向け緊急発進するF-15が管制官の指示を受けて離陸を中止した際に滑走路わきの緑地帯に逸脱し、滑走路は一時間半にわたり閉鎖され民間旅客機35機が欠航となったほか、二機が米空軍嘉手納基地へ着陸し待機するという事案でした。この要因は那覇空港事務所によれば着陸しようとしていた民間機との安全距離を保つために離陸中止を命令し、その結果滑走路を逸脱したとのことです。報道では、これも当然ではあるのですが管制官に要員があるとも操縦士に要因があるとも言及していませんでした。

Img_9040 しかし、この緊急発進の様子は滑走路エンド付近から民間の方に動画として撮影されており、この様子がテレビにも報道されていました。緊急発進は二機の航空機により行われますが、映像を見る限り一機目は既に離陸しており、滑走路を逸脱した二機目もアフターバーナー(AB)を吹かし離陸途中であり、ここで急制動を掛けたところで逸脱、という様子です。航空祭や基地の日常などで緊急発進展示や緊急発進をご覧になった方はご理解頂けるでしょうが、F-15はアフターバーナーを焚いた場合比較的短距離で離陸しますので、離陸中止を完成案が命じた時点で中止は難しかった可能性があります。

Img_9047 ここで疑問なのは那覇空港事務所が見解として出している”民間機との距離を保つため離陸中止を命令”、というものなのですが、対領空侵犯措置に緊急発進する戦闘機よりも、やはり民間機は優先されるものなのでしょうか、危険性を避ける観点からは上空待機を命じるべきだと思うのですが。特に一機が離陸し更に一機が滑走中、この時点で割り込ませるように二機の間に旅客機を着陸させるという航空管制そのものに無理があるようにも考えてしまうのです。一方で、航空管制官の権限は飛行場においては大きく、これを戦闘機が一方的に自らの判断を優先するということはできません。

Img_9227 F-15が緊急発進する、という動作は航空管制官も確認していることであり、管制塔からは誘導路を離陸に向かう二機の戦闘機の姿は確認できるのですし、離陸した一機についても管制官の許可があって初めて離陸したのであり、勿論逸脱した戦闘機についても管制官の許可があったのだからABを点火し緊急発進に臨んだのです。どう考えても判断ミスがあったのはどちらかは明白で、このあたり、航空管制官には着陸航空機と離陸航空機の相関関係を当然のことですが配慮して航空管制を行ってほしいところです。航空管制官は空を往く全ての人命を司る重責があるのですから、判断ミスは困ります。

Img_9104 それにしても、不幸中の幸いでした。万一戦闘機ではなく離陸直前の速度に或る旅客機に同様の命令を発して、緊急停止していたならば、これは重大な事故につながった可能性があります。また、擱座機救難の訓練を行っており、これに関連する機材を準備している航空自衛隊だからこそ一時間半での滑走路復旧となりましたが、これが那覇空港に多くが発着するワイドボディの大型旅客機であれば、重量が大きいわけですし、乗客を緊急だ出させなければなりません。復旧まで下手をすれば一日程度滑走路が完全封鎖となてしまうところでした。

Img_9194 他方、結果的に滑走路は閉鎖されましたので、もちろん有事の際であれば安全確認よりも作戦稼働率を重視しますので同様の事態が発生した場合でも運用可能な滑走路部分を利用して発着を続けるのでしょうが、やはり過密空港である那覇空港に滑走路が一本であり、ここを航空自衛隊、海上自衛隊と共に民間旅客機と、そして海上保安庁も滑走路を共有している、というところには少なくない脆弱性があるようにも見て取れます。このあたり、もちろん有事の際には米軍の普天間基地や嘉手納基地へ分散展開するという選択肢もあるのでしょうが、那覇空港の拡張の必要性も垣間見えるようですね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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12 コメント

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同趣旨で私もブログに書こうかと思っていたのです... (数多久遠)
2011-12-22 22:03:43
同趣旨で私もブログに書こうかと思っていたのですが、先を越されてしまいました!

現時点では、エンジンを停止させてしまったパイロットの操作ミスで油圧を失ったことが、逸脱の原因とする報道しかないと思います。

ですが、詳細が分からないので断言はできませんが、ご指摘の通り管制官の判断ミスが少なからず影響していると思います。
立場上、空自はCABのせいには出来ないと思いますが、1機目の離陸後に2機目を止める判断は不適切だろうと思います。
返信する
こんばんは (ドナルド)
2011-12-23 03:33:33
こんばんは

事情はいずれ判明すると思いますが、現時点での情報から考える限り、管制官のミスの可能性が高いと、私も考えます。戦闘機の離陸はかなり自在であり、機体故障でもなく滑走路を逸脱するなど、そうとう無理な指令が来たと考える方が、自然です。

ま、数週間で事実は判明するでしょう。

那覇空港ですが、google mapで見ても確かに狭いですよね。1度言ったことがありますが、忙しい空港、という印象です。

拡張計画案を調べて見ると、1310m沖合への展開案とか、210mの並行滑走路案とかいろいろ出ていますが、事業規模や珊瑚礁被害を考えると、210m案が良さそうに見えます(1300億円だそうです)。ついでに新滑走路は、津波対策として2mほどかさ上げをしてはいかがでしょう。

沖縄は、失礼ながら、無駄な埋め立て地を多く造成しています。東部具志川の埋め立て地は半分が空き地。南部の豊崎にも巨大な空き地。いまもう一つ、泡瀬に観光用の人工島を作っています。沖縄の人間ではないので辛口になりますが、泡瀬などは、豊かな自然を破壊しているだけの、自殺行為です。観光が重要な収入なのに、観光資源である自然を大切にしない。見ていて腹が立ちます。土木産業救済の意図は分かりますが、人口島を作っても、県外の私には、何の魅力もありません。東京にはお台場がありますから。

那覇空港の沖合拡張も、知事は1310m沖合拡張などと言っていますが、これだと貴重なサンゴ礁を極めて大規模に破壊します。観光客を受け入れるための拡張のはずなのに、本末転倒だと呆れます。(資料を漁っているうちに、怒りが湧いてきました:苦笑)

ですが、泡瀬埋め立てなどに比べれば、はるかにマシな話です。那覇空港はパンク寸前であり、空港拡張には明確な経済的メリットがあります。防衛上も、滑走路が2本になるのはメリットです。210mの並行滑走路では同時離発着はできませんが、かなり物事は緩和されるでしょう。冒頭に記したように、ついでに全体を2mもかさ上げすれば、土木業者の皆さんも、仕事が増えて喜ぶでしょう。


ところで、防衛上の話に戻ると、いっそのこと、空自が嘉手納に移動(共用)することはできないのでしょうか?そうすれば、那覇空港の負荷も減って、サンゴ礁を埋める必要もなくなるかもしれません。デメリットは、普天間を嘉手納に統合する案とかぶって、普天間問題がますます泥沼化すること。米軍のメリットは、嘉手納基地の防衛を、自衛隊の対空ミサイルが分担できることです。「自分たちの基地」ですから、防衛して当然。実現性は低そうですけどね。。

海自だけでも嘉手納に移動できると良いかもしれませんね。
返信する
情報が少ないのでなんとも...ですが (SUS)
2011-12-23 12:21:16
情報が少ないのでなんとも...ですが

はたして、スクランブルで1番機が離陸した直後に、民間機を
着陸進入させる事が恒常的に有るのでしょうか?

那覇の過密さからの想像ですが、ギリギリの管制を目指した
のではないかな?と
管制官はスクランブル発進後直ちに民間機を着陸させたかったが、
タイミングがずれてしまった。とか?

那覇飛行場管制は国交省所管だったと思いますが、空自管制隊なら
このような事は起きなかったのではないかなあ?とも思ってしまいます

那覇空港の早期拡張が望まれると共に、将来的には米軍が転出した後の
普天間へ自衛隊が移転するとかそういう変化が必要ではないでしょうか
返信する
沖縄の管制業務を自衛隊に移管してもらいたいですね。 (ウルトラマン)
2011-12-23 17:03:05
沖縄の管制業務を自衛隊に移管してもらいたいですね。
世界でも例を見ない領空侵犯処置中の戦闘機を止めて民間機を優先させるアホの国日本。
民間機を優先させて侵犯機が空港を破壊。
破壊された空港に着陸できない民間機は当然他にダイバードできない場合着水を選択。
多くの人命が失われたとさ!メデタシ、メデタシ。

『チギャーウヨ!』
返信する
はるな様は以前から那覇空港拡張を提案されていま... (雨辰)
2011-12-25 06:03:22
はるな様は以前から那覇空港拡張を提案されていましたが、未だ計画段階のようでで今後もこの種の事故が懸念されます。抗堪性の観点からも滑走路の増設が必要ですね。

それにしても待機中ならいざ知らず、滑走中の機体への離陸中止指令は相手側に緊急を要する事態があったとは伝えられておらず、事前に離陸を許可したことを含めて明確な判断ミスではないでしょうか。
返信する
数多久遠 様 おはようございます (はるな)
2011-12-31 09:30:35
数多久遠 様 おはようございます

トラックバックどうもです。

当方、報道映像を見まして、ああれ?何故これで航空自衛官の判断ミスになるの?、つか、あの時点で滑走停止してよくオーバーランしなかったね・・、というのが偽らざる印象でしたが、しかし、報道はズレていますよね、と急ぎ記事としました次第。
返信する
ドナルド 様 どうもです (はるな)
2011-12-31 09:36:49
ドナルド 様 どうもです

嘉手納は有事の際の過密を考えるとあまり得策ではないだろう、と。

むしろ、考えるべきは普天間航空基地、ではないかな、と考えます。元々米海軍のP-3C哨戒機が展開した基地ですし、滑走路も2700mあります。

陸上自衛隊も将来的には第15旅団の増勢は不可避と思いますので、増強される空中機動部隊はどこか新しい駐屯地が必要で、普天間駐屯地として併設が望ましいのでは、と。

普天間移設を求める声に、実際現地で聞いたのですが”米軍基地であるので世界から狙われる危険”=自衛隊基地ならば容認する要素となる、”老朽化した基地であるので米軍が新しい基地を欲しがっているに違いない”=自衛隊であれば滑走路さえ補修すれば使用可能。こう解釈できましたからね。

なにより、沖縄でも過去には八重山方面で大きな地震と津波が発生しています。高台に自衛隊の航空拠点がないのは非常に危険です。
返信する
SUS 様 おはようございます (はるな)
2011-12-31 09:39:15
SUS 様 おはようございます

当方も、沖縄の航空管制の日常、だけは知りえないのですよね。過密さは理解するのですが。

逆に離陸滑走を始めまもなく機体が浮揚する直前に、戦闘機が下りてくるから緊急に離陸を停止せよ、と管制官が命じて旅客機が急停止し滑走路から逸脱した場合。

つまり逆の立場になったらば、旅客機の操縦ミス、とか航空会社に再発防止を自治体が要請、となるのでしょうかね。
返信する
ウルトラマン 様 どうもです (はるな)
2011-12-31 09:40:25
ウルトラマン 様 どうもです

那覇ですが千歳のような拡張後に別々の飛行場として運用する必要性はありそうです。

人命が失われる規模の事故が起きる前に。
返信する
雨辰 様 おはようございます (はるな)
2011-12-31 09:41:32
雨辰 様 おはようございます

ううむ、続報が無く、特にメディアは放置する腹構えなのでしょうが、現時点ではいるすべての情報は、管制官の判断ミスであった事を示しています。
返信する

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