北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】フィリピン軍-アジア最弱軍隊脱却への変革,揚陸艦と自走砲に地対艦ミサイルと水上戦闘艦

2022-05-30 20:12:51 | 防衛・安全保障
■特報:世界の防衛,最新論点
 フィリピン軍はアジア最弱と一時は評価されていましたが相次ぐ危機管理上の問題から変わろうとしている軍隊です、はつゆき型中古艦なども供与を検討すべきだったようにもおもう。

 フィリピン海軍が修理中のフリゲイトグレゴリオデルピラールが海上公試を順調に進めています。フィリピン最大の水上戦闘艦であるグレゴリオデルピラールは2018年に座礁事故を起こしており航行不能となりました、この修理が三年間実施されていて、2022年3月には第二回海上公試を実施したかたちで、今回の修理では合せて部分改修も行われました。

 グレゴリオデルピラールの事故は2018年8月に発生、事故はハサハサショール沖合で座礁、この際にスクリューの可変ピッチプロペラが欠損する損害を受けています、しかし、修理は別の意味で難航しました、2022年からのCOVID-19によるサプライチェーンの崩壊で、2021年に海上公試を実施しましたが、この際にはエンジンから異常排気が確認されました。

 ハミルトン級カッター、グレゴリオデルピラールはアメリカ沿岸警備隊のカッターを中古譲渡されたものです、その満載排水量は3050tでフィリピン海軍では3隻を運用、船体は大型で76mm艦砲や航空機格納庫を有していて、使いやすい事からフィリピン海軍の他、ヴェトナム海上警察やスリランカ海軍、ナイジェリア海軍などでも中古艦が運用中です。
■ブラモス地対艦ミサイル
 政治的制約が少ない分自衛隊の88式地対艦ミサイルより射程が長いのですね。

 フィリピン海兵隊は4月3日、インドから導入するブラモス地対艦ミサイル大隊の運用を開始しました。部隊新編式ではデルフィンロレンザナ国防大臣とインドのブラモス社よりアトゥルディンカーレーン社長が出席しました。ブラモス地対艦ミサイルは189億ペソにて取得、自走式発射装置3基からなる射撃中隊3個を基幹として大隊を編成します。

 ブラモス地対艦ミサイルの取得は2021年1月にフィリピン国防省がインド政府との間で導入契約を結んだもので、速度はマッハ2.8と非常に速く沿岸防衛の切り札として期待されています。インドではブラモスの改良が続いており、フィリピン政府のほか、ヴェトナム政府が関心を示している一方、ロシアの技術協力により開発されており、完成は未知数です。

 フィリピン軍は1992年に自国領域であった南シナ海のミスチーフ環礁を中国当局に不法占拠された際、何もできなかったばかりか、その情報が第三国の商船からの通報と云う形で知るまで打つ手が無く、ミスチーフ環礁はその後中国に人工島化され航空基地となっています。ただ、この厳しい戦訓はフィリピン軍に変革迫る第一歩となったのかもしれません。
■ATMOS-2000自走砲
 置換えなければならない旧式火砲と陸軍師団の数が非常に多いのですがまずは一歩前進です。

 フィリピン陸軍はイスラエル導入したATMOS-2000自走榴弾砲初の実弾射撃訓練を実施しました。これは導入に併せ新編された陸軍王兵連隊第1訓練学校が統括し陸軍フォートマグセイセイ演習場にて4月6日から二日間にわたり行われた集成訓練によるもので、この装備運用にはイスラエル及びアメリカの直接及び間接的支援があったとされています。

 ATMOS-2000はイスラエルのソルタム社が開発した52口径自走砲で射程は41km、車体部分にはドイツのMAN社製トラックが採用されています。フィリピン軍は23億8600万ドル、米ドル換算で4720万ドルを投じて12両を調達しており、2021年12月に12両揃ってフィリピンへ納入、一般公開なども行われていましたが実弾射撃は今回が初となります。

 105mm砲よりも大きな火砲をフィリピン軍が運用するのは今回が初めてであり、またアメリカからの供与ではなく自ら砲兵装備を選定し取得のも今回が初めてです、これは2016年にフィリピンのマラウィにイスラム武装勢力数百名が浸透し、フィリピン軍が全力を投入したものの市街地奪還に半年以上を要した事で、砲兵強化の必要性を実感した為でしょう。
■ターラック級揚陸艦
 輸送艦としては先ず数を揃える点を重視した点は評価されるべきです。

 フィリピン海軍はターラック級揚陸艦の初度作戦能力への評価を実施しました。ターラック級は揚陸艦であると共に人道支援や災害派遣などを想定しており、フィリピン海軍では戦略海上輸送艦と区分しています。これは同時に強力な揚陸艦を装備することにより、緊張が続くものの経済協力も重要とされる中国を過度に刺激しない目的があるのでしょう。

 ターラック級は一番艦が2016年に竣工し二番艦ダバオデルスルが2017年に竣工しています、建造はインドネシアスラバヤのPTPALにて執り行われインドネシア海軍のドクタースハルソ級の准同型艦となています、特筆すべきは満載排水量で11583tあり、フィリピン海軍が初めて導入する一万トンを超える艦艇です。その航続距離は1万7300kmにも達する。

 揚陸艦としての性能は、兵員500名と車両などを輸送できるとしており、ヘリコプター甲板があり、ウェルデッキにはLCM上陸用舟艇2隻か韓国より導入したKAAV-7両用強襲車4両を収納すると共にダビット部分には2隻の複合高速艇や小型方陸用舟艇を搭載可能という。速力は16ノットと抑えられていますが、相応に有力な両用艦艇といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウクライナ-アメリカが供与兵... | トップ | 【G3X撮影速報】大久保駐屯地... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (通りすがりの人)
2022-06-22 22:56:11
フィリピン軍。実は陸軍の対ゲリラ戦の能力は非常に高くアメリカ軍も教えを請いにくるほど。
返信する
2001年の頃は (はるな)
2022-06-22 23:50:38
こんばんは

フィリピン軍はモロ解放戦線とのたたかいで経験は豊富ですが、ただ、マラウイ騒乱で、対ゲリラ戦の能力不足を露呈しているのですよね、勝ちましたが市街戦は半年かかりました

この点ですが、フィリピンの伝統的な武装勢力相手は充分対応出来るのですが、ISIL系の訓練された武装勢力相手は問題が、という結果を残したよう思います
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事