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【防衛情報】インド海軍,空母ヴィクラマディーチャ近代化改修と来年竣工新空母ヴィクラント

2021-09-28 20:16:38 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はインド海軍の空母特集です。ヴィクラマディーチャという艦名はサンスクリット語の神の名を示すのですが護衛艦くらま艦名の鞍馬語源と実は重なる。

 インド海軍は空母ヴィクラマディーチャ近代化改修へロシアのセヴマッシュ社の協力を受け入れます。ヴィクラマディーチャは2015年にインドせ再就役した比較的新しい空母ですが、旧ソ連時代の1978年に起工しており、船体そのものは最新鋭とは言い難い。セヴマッシュ社はインド国内の造船所を空母改修可能な水準まで近代化改修するとのことでした。

 ヴィクラマディーチャは旧ソ連が1987年に就役させたキエフ級航空母艦4番艦バクーがソ連崩壊後に空母アドミラルゴルシコフとなり、1992年に火災事故に見舞われていました、これが2005年にインド売却が決定、キエフ級の特色であった強力なミサイル兵装を全通飛行甲板に切替える大改修を行った上で艦載機をYaK-38から強力なMiG-29としています。

 アドミラルゴルシコフ時代に火災に見舞われたヴィクラマディーチャは2021年5月に軽微な火災に見舞われたとしており、防火システムの改修が行われると共に、セヴマッシュ社はキエフ級用の予備部品などをインドへ新規製造し供給するとのこと。ヴィクラマディーチャの満載排水量は45500t、インドが建造中の国産空母ヴィクラントよりも大型艦です。
■空母ヴィクラントの竣工が遅れ
 空母ヴィクラントの竣工が遅れるようです。海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずも以上の大型艦となっています。

 インド海軍はADS防空艦として建造が進む空母ヴィクラントが2022年前半にも就役する見通しであると発表しました。これはインド軍のラージナートシン国防相が6月25日にヴィクラント建造を進めるコーチン造船所を視察した際に発言したものです。本来ヴィクラントは2021年に竣工予定とされてきましたが、建造の遅れが指摘されていたとことです。

 ヴィクラントは満載排水量40862tの航空母艦でガスタービン推進方式を採用、現在のところMiG-29戦闘機30機など艦載機40機を搭載する計画、この建造にはロシアより中古取得した空母アドミラルゴルシコフ、改め空母ヴィクラマディーチャとともにロシアの技術協力とイタリアのフィンカンティエーリ社の設計支援を受け建造している航空母艦です。

 ヴィクラントの建造は2009年に起工式を経て2013年に進水式を迎え、そのまま建造が続いています。インド海軍ではヴィクラントをヴィクラント級航空母艦の一番艦と位置づけており、当初計画では3隻が建造される構想でした。建造の遅れは指摘されていますが6月25日時点で、シン国防相は7月中に洋上公試を行う方針であるとも、発言しています。
■ヴィクラントにインド製艦載機
 インドでは空母国産化とともに空母艦載機の開発を本格的に始動しています。

 インドのラージナートシン国防相は国産空母艦載機にMiG-29に加え国産航空機を含める考えを示しました。これは6月25日にヴィクラント建造を進めるコーチン造船所を視察した際の発言の一つで、国産の軽量ヘリコプターを艦載機として搭載するとのこと。ただ、哨戒用か救難用か両用作戦用か軽量ヘリコプターの用途については明らかにしていません。

 MiG-29K戦闘機を空母艦載機として運用する空母ヴィクラントは、更に早期警戒機としてロシア製カモフMi-31AEWヘリコプター、そして近く導入が開始されるアメリカ製MH-60R多用途ヘリコプターの搭載が発表されていました。軽量ヘリコプターとはHAL社製ALHドゥループと思われ、ALHドゥループはフリゲイト艦載機へ訓練が進んでいます。

 インドでは将来の航空母艦増強に向け空母艦載機の開発が大車輪で進められており、国産戦闘機テジャス艦載機型も開発予定です。テジャス艦載機型はナット軽戦闘機後継として1960年代から延々と開発され2020年に漸く完成したテジャス戦闘機を改良するもので、縮尺模型が空母模型上に並べ兵器見本市等に展示されていますが、進展度合いは不明です。
■インド,MiG-21を三年後廃止
 自衛隊の退役したF-4戦闘機と同世代の戦闘機にMiG-21というものがありますが。

 インド空軍はMiG-21戦闘機を2024年までに完全退役させると発表しました。これはインド空軍のブハドゥラティア空軍参謀総長が6月18日に発表したもので、インド空軍では手堅い超音速戦闘機として導入されたものの旧式化が進み過ぎ、2000年代から2020年代に掛けて墜落事故が相次ぎ発生している為で、また後継戦闘機の目処が立った為ともいう。

 MiG-21戦闘機は旧ソ連が開発し超音速戦闘機としては異例の一万機以上が生産、同盟国や友好国等60か国へ供与されている。電子装備が最小限度で運用費用も安価である事から、供与された諸国ではソ連崩壊後、ソ連からの軍事援助の終了を以て、より新型で高性能であるも運用費の高いMiG-23やMiG-29を廃止し、MiG-21を運用する空軍も存在している。
■AMCA戦闘機開発へ
 インド空軍はAMCA戦闘機という新型戦闘機を開発するとのこと。

 インド空軍はMiG-21戦闘機の運用終了目処と共に後継機となるAMCA戦闘機開発を加速化させると発表しました。インド空軍はMiG-21を早ければ2023年、遅くとも2024年に運用終了します。そして空軍はその後継機として、フランスから36機を導入したラファール戦闘機を更に36機増強する交渉を行うと共に、国産戦闘機開発を進めるといいます。

 AMCA戦闘機はインドが独自に開発する第五世代の中型戦闘機で、また、インドがナット軽戦闘機後継機として長年開発を延々と継続し続けたLCAテジャス軽量戦闘機の量産目処も漸く実りつつあり、LCA開発により得られた様々な知見と反省を活かしAMCA戦闘機開発を加速させるようです。インドはMiG-21を1961年より実に1200機、取得しました。
■時事:珠海航空ショー開幕
 此処からは時事問題を見てみましょう。中国において2020年に予定され延期されていた隔年実施の航空ショーが開始されたもよう。

 中国では9月28日より珠海中国国際航空宇宙展覧会が開始された。珠海航空ショーとしても知られる展覧会は中国国内において行われる最大規模の兵器見本市でもある。珠海中国国際航空宇宙展覧会では、中国製無人機が注目を集めている。市販無人機として世界シェアの最大シェアを占める中国製無人機であるが、軍用の大型無人機も開発が進んでいる。

 J-16D電子戦機は珠海中国国際航空宇宙展覧会において展示された極めて注目度の高い航空機である。これはロシアより導入したSu-27戦闘機をリバースエンジニアリングにより国産化した殲撃16戦闘機を元に専用電子戦としたもので、この分野での専用機はアメリカ海軍のEA-18G電子攻撃機が有名であるが、中国も電子航空戦の技術実用化を進めている。

 彩虹六-CH6無人機が珠海中国国際航空宇宙展覧会には展示され、こちらは全幅20mと全長15mあり、無人偵察機であると共に攻撃能力を持つ。中国では高高度を数十時間に渡り飛行する滞空時間を持ち極めて広範囲の海域や国境線における情報収集に当る無人機も開発され、この分野で先行するアメリカ製RQ-4グローバルホーク無人偵察機を猛追している。
■時事:北朝鮮弾道弾発射
 北朝鮮のミサイル問題がまた再燃しており我が国ミサイル防衛の重要性を再認識するところです。

 北朝鮮は9月28日、弾道ミサイルを日本海へ発射した。韓国軍発表によれば少なくとも一発の飛翔体上昇を確認しており、防衛省によれば上昇高度から弾道ミサイルの可能性が指摘されている、我が国排他的経済水域での被害はない。北朝鮮は9月にはいり巡航ミサイル実験を筆頭に国連決議により禁止されている弾道ミサイル開発実験を繰り返している。

 相次ぐミサイル実験を受け、国連を含め各国が非難を続けているが、北朝鮮国連代表部の国連大使は、弾道ミサイル開発は北朝鮮の権利であるとし、国連制裁を受け入れない主張を行っている。北朝鮮は韓国のムンジェイン政権より朝鮮戦争終戦宣言に関する外交交渉を示唆されているが、同時に韓国も弾道ミサイル実験を実施しており、緊張は続いている。

 北朝鮮は今月二度目の弾道ミサイル実験となるが、一度目の弾道ミサイル実験は韓国海軍が新しく開発した弾道ミサイル潜水艦によるミサイル実験と同日であり、両国ともこの実施を予期していなかったとしている。28日の実験が、その対抗策であるのかは未知数だが、北朝鮮も潜水艦発射弾道弾を開発中であり、今回の実験が何を意味するか注視が必要だ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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