◆空中給油対応のUH-60J 試験飛行
航空自衛隊向け救難ヘリコプターUH-60Jが飛行試験を行っている様子を撮影した写真が入手できたので掲載したい。三菱重工小牧南工場で製造された新造機の写真だ。
UH-60Jは航空自衛隊に救難ヘリコプターとして制式化されており、全国の救難隊に配備、運用されている。写真はその新造機である588号機。機首部分に注目してみると、細長い管のようなものが突き出ているのがみてとれるが、これが空中給油機からの燃料を送るドローグホースから燃料を受け取る給油プローブである。
空中給油方式としては、KC-767のように給油ブームから流し込む方式で戦闘機などに給油する方式があるが、上部にローターが装着されているヘリコプターに対してはこの方式は不可能である。従って、ヘリコプターに対する空中給油ではドローグホース方式を米軍が採用している。なお、ヘリコプターに対する空中給油というのは世界各国の航空救難体制を俯瞰しても稀有な事例とのこと。
航空自衛隊では、現在、救難ヘリコプターとともにC-130H輸送機に対してドローグホース装置や機内燃料タンクを増設し、空中給油機として運用する計画だ。現行でもUH-60Jは滞空時間では救難機U-125よりも長いのだが、滞空時間を延ばすことにより、燃料消費が増大する悪天候時や、天候急変で着陸基地を替えなければならない状況、回送の距離を延ばすことにもつながる。
他方で、ヘリコプターへの空中給油というのは高い操縦技量を必要とする。何分、固定翼の空中給油機と回転翼のヘリコプターが同じ速度で飛行し、空中給油機の後方気流やローターが巻き起こすダウンウォッシュが吹き荒れる中、ドローグホースに給油プローブを挿入しなければならないからだ。
この588号機は、小牧の救難教育隊に装備されるのだろうか。小牧基地であれば、空中給油機に転用する計画のC-130Hが配備されている基地でもあるし、合点はいくのだけれども、給油プローブ付の機体は、例えば米海軍艦載機の移転に伴う救難体制の見直しを睨んだ一部地域の能力充実を目指したものなのか、C-Xが実用化され輸送機数に余裕が出るという見通しのもとで、C-130H空中給油機仕様の機体を今後分遣隊として広く配備する構想があるのか、気になったりもするしだい。
UH-60J-588号機について、航空雑誌などをみてみると、小牧での初飛行は昨年十二月上旬とのこと、ただし、この時点では。給油プローブは装着されていなかったとのことで、給油プローブを取り付けての飛行試験は、今年の今月上旬からとの事だ。つまり、かなり貴重な写真、ということができるのかな、と。
HARUNA
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KC-767の導入が要求されていた時代は、F-22の日本への販売についても楽観的な意見が出てましたし、F-22が導入される前提ならば、タイフーンやスーパーホーネットも当て馬扱いになってしまいますので、ブーム方式だけだったのにも合点はいきくように思えます。
他方、KC-135にドローグ方式の給油装置を取り付けている国は多いですが、それでヘリに給油、というのは聞いたことが無いです。たぶん、速度的に厳しいのと、後方気流の問題があるのでは、と。
でも、「エアポート75」映画で、小型機が空中衝突して操縦士が死傷したボーイング747にヘリでパイロットを送り込もうとする描写があったような気がします。この場合、ヘリが747の上に位置してましたが・・。
映画『エアポート75』は私もみました。たしか、もう少しのところで失敗しましたね。ジャンボの着陸速度は確か300㎞/hくらいだったような気がしますが、戦闘ヘリの最高速度なみですから難しいでしょうね。まあ、基本的にC-130に給油供給装置を付けるのは賛成です。これができるといろいろなオペレーションが可能性が高まりますからね。※給油による飛行時間が長くなりパイロットの疲労がたまるが、逆に悪天候時に給油が出来てあわてなくて済むという安心感もうまれますからね。
飛行時間が延びれば、いざというときにも、なんとかなりますしね。ただ、確か、パーフェクトストームって映画で、難破した漁船を救助に向かったヘリが悪天候でドローグホースに挿入できなくて空中給油を受けられず、墜落するという描写があったのですが、二重遭難が起きないよう、運用には注意が必要かと。
滞空時間では、UH-60Jの方が、U-125よりも長いので、逆にU-125の後継機が何になるのか、気になってきたりします。