北大路機関

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【防衛情報】アーレイバーク級ミサイル駆逐艦三隻一括建造契約とニルギリ級フリゲイト,ミエチュニク級フリゲイト

2023-11-07 20:01:11 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題を中心にお伝えしますが、アメリカ海軍は沿海域戦闘艦計画の事実上の失敗による新型艦艇建造の空白期間が響いている印象です。

 アメリカ海軍はゼネラルダイナミクス社との間でアーレイバーク級ミサイル駆逐艦三隻の一括建造契約を締結しました。これはゼネラルダイナミクス社傘下のバス鉄工所が建造を担当するもので、2023会計年度と2024会計年度及び2026会計年度に1隻づつの固定価格画定契約の形をとっています。アーレイバーク級ミサイル駆逐艦は主力駆逐艦だ。

 DDG 122ジョンバジロン、DDG 124ハーベイCバーナムジュニア、DDG 127パトリックギャラガン、DDG 126ルイスHウィルソンジュニア、DDG 130ウィリアムシャレット、DDG 132クエンティンウォルシュ、現在バス鉄工所では上記3隻が建造中で、ルイスHウィルソンジュニア以降のものは最新の拡大型であるフライトⅢとなっています。

 アーレイバーク級はイージスシステムを搭載した駆逐艦で第二次世界大戦後に量産されたアメリカ海軍水上戦闘艦艇では最大の建造数を誇っています。このほどDDG125ジャックHルーカスがアメリカ海軍へ引き渡されたばかりであり、今回の増強は本型の優秀性を示すとともに、一方でこれに続く新型艦の開発が停滞していることをしめします。
■ドルフィン2
 イスラエルは前々から核兵器の運搬手段として潜水艦を運用すると考えられていましたが。

 イスラエル海軍はドイツのティッセンクルップマリン社よりドルフィン2級潜水艦の就役計画を受領しました。今回受領したのはドルフィン2級3番艦であり、艦名は非公式発表でダカールであると伝えられています。ドルフィン2級はディーゼルエレクトリック方式潜水艦として世界中に輸出されているドイツ製209型潜水艦の最大規模のもの。

 ドルフィン2級については明確化されていない情報がいくつかあり、可能性としてイスラエル海軍は巡航ミサイル発射用にVLS区画を挿入する検討があるという。209型潜水艦はさまざまな形式が各国に提案されていますが、ドイツ海軍が運用するAIP潜水艦である212型潜水艦よりもドルフィン2級は大型であり、これが装備の憶測をよんでいます。
■イタリア特殊潜航艇
 体当たり用を除けば特殊潜航艇先進国はイギリスとイタリアでした。

 イタリアのフィンカンティエリ社とCABIカッタネロ社は8月7日、特殊潜航艇に関する覚書を交わしました。CABIカッタネロ社は特殊部隊向け小型潜水艇を製造するイタリアの造船会社で、この建造は具体的な顧客や国などは明示されていないものの潜在的な海外需要に対して行う特殊作戦用潜水艇での両社の技術協力を進めることが狙いという。

 フィンカンティエリ社とCABIカッタネロ社の覚書について特筆すべきは署名式典にはイタリア海軍のピエロベルトフォルジェ-ロ海軍長官が臨席しているということ。特殊作戦用潜水艇は21世紀ではアメリカ海軍がオハイオ級巡航ミサイル潜水艦などに搭載するネイビーシールズ用のものが知られていますが、中小型については採用国が多い。

 ディープシャドウ特殊潜航艇はCABIカッタネロ社が2018年に開発した最新型でイタリア海軍の通常動力潜水艦などから運用可能、4名の特殊部隊員が搭乗可能です。この種の装備は第二次世界大戦において軍港に停泊する戦艦などの重要目標へリンペット機雷攻撃で大きな威力を発揮しており、同社は1936年からこの種の装備を製造し続けています。
■スーシティ
 もがみ型とよく比較されるもCOVID-19の感染拡大から数年間の時機が沿岸海域戦闘艦退役加速の時期と重なりほとんど見る機会が無いという。

 アメリカ海軍は沿海域戦闘艦スーシティを僅か5年間で退役させました。スーシティはインディペンデンス級沿海域戦闘艦6番艦となっていまして、インディペンデンス級は特徴的な短いモノハル構造を採用、軽合金とウォータージェットの高速性能と幅広い上部構造物容積を利用し様々な任務に対応する計画でしたが、数多くの困難にさらされる。

 インディペンデンス級は想像以上に高温海域での軽合金船体腐食が進むとともに想定以上に燃費が悪く、またウォータージェット推進は深刻な推進装置と変速装置などの問題を抱え、更に様々な装備を換装することで多様な任務に対応するはずが、2022年まで哨戒任務のみ、水上戦闘モジュールを搭載したのは2022年5月になってからのことです。

 シーシティの退役は8月14日、フロリダ州メイポート基地において行われました。式典では有意義な5年間と乗員と支える支援の意義に加え次世代への能力評価という視点が協調されていますが、建造費が非常に大きかったインディペンデンス級は機関部などの欠陥を修正するよりは退役した方がまだ安価であるとし、初期艦の退役が進んでいます。
■アトマカミサイル
 ハープーンやSSM-1と同じくらいで射程は平均的なのですがトルコの場合は国産出来た事に意味があるのでしょう。

 トルコ海軍は新型のアトマカ対艦ミサイルを海軍の11隻へ装備させる方向で改修作業を行う計画です。これはトルコ防衛産業のSAHAイスタンブール会議が8月に開催したオンライン会議においてトルコ海軍との調整中であるアトマカ対艦ミサイルの配備方針において示したもの、これにより旧式化したハープーン対艦ミサイルを置き換えるという。

 アトマカ対艦ミサイルはトルコの防衛産業であるロケットサン社により開発、その射程は220㎞とされ、発射後の目標再選択や目標の脅威がなくなった場合の自爆機能など発射後のデータリンク能力を持つとされています。既に2020年には200㎞先の目標へ命中させており、海軍艦艇などへの搭載が具体的に進められていて、今回具体化しました。
■ファニ級掃海艇
 非磁性鋼製船体を採用しているもの。

 インドネシア海軍は新型のファニ級掃海艇2隻を就役させました。今回就役したのは艦番号731のプラウファニ、艦番号732のプラウファニルドの2隻で、8月14日に東ジャワ州スラバヤ基地において記念式典が行われています。インドネシアでは実際の機雷戦に加え第二次世界大戦中の残留機雷という問題を突き付けられ掃海艇が重視されている。

 ファニ級掃海艇の建造はドイツのアベキングラスムッセン造船所において行われていまして、ドイツ海軍が運用するフランケンダール級掃海艇のインドネシア試用、全長61.4mと全幅11.1m、船体は掃海艇には珍しい鋼製となっていて磁気機雷に対抗すべく船体消磁システムを備え非磁性特性を有しています。機雷探知にはROV水中無人機などを使う。
■揚陸艦ナション
 ゆら型輸送艦のように輸送揚陸艦というべきタイプです。

 イスラエル海軍は揚陸艦ナションを受領しました。これは8月9日にアメリカのパスカグーラにおいて建造中であった揚陸艦で、2019年より導入計画が進められていました。イスラエル国防軍はこの揚陸艦が国内の離れた地域への部隊移動を迅速化するものと期待しており、数か月以内に回航し、ナションは2024年に作戦能力を整備するという。

 ナションはアメリカ政府によるイスラエル軍事支援政策の一環として建造、船体前部に揚陸扉を配置したLST戦車揚陸艦型の艦艇で、揚陸作戦よりは輸送揚陸艦としての兵站輸送を想定し設計、個艦戦闘能力等については想定されていないもよう。その排水量2500tで全長95mと全幅20m、イスラエル海軍はハイファ海軍基地へ配備する計画とのことです。
■イージス艦延命
 とりたてて性能が陳腐化している訳はないのがアップデートの利くイージス艦の強みとおもう。

 アメリカ海軍はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の延命計画追加を発表しました。アメリカ海軍では水上戦闘艦の耐用年数を35年として設計しており、今回の追加計画は数年内に退役する予定の駆逐艦耐用年数を4年ないし5年延長することを念頭に延命改修を行う。改修の対象はラメージ、ベンフォールド、ミッチャー、ミリアスの四隻です。

 アーレイバーク級ミサイル駆逐艦はアメリカ海軍の主力駆逐艦であるとともに第二次世界大戦後にアメリカが量産した駆逐艦では最大の勢力を誇り、また改良型の建造が続いています。その要諦はイージスシステムを搭載した多様な戦闘能力にあり、一番艦アーレイバークの延命改修も2023年3月に決定、今回の追加はこれに続く形となりました。

 ラメージは延命改修により耐用年数は2035会計年度まで延伸、ベンフォールドは2036年まで、またミッチャーは2034年、ミリアスも2035年まで現役に留まることとなる。アメリカ海軍は2020年に海軍全ての駆逐艦の耐用年数を算出し、各艦の船体状況を把握、延命改修に多額費用を要する場合は除き可能な艦は積極的に延命する方針としています。
■ミエチュニク級
 カナダのハリファクス級後継艦と相乗りでしたか。

 ポーランド海軍が導入するミエチュニク級フリゲイト1番艦が起工式を迎えました。スチールカット式とも呼ばれる起工式が行われたのは8月16日、ポーランドのグディニアにおいて行われています。ミエチュニク級フリゲイトはイギリスの31型フリゲイト輸出仕様であり、計画ではピーランド海軍は本級2隻を導入しバルト海へ配備する見込み。

 ミエチュニク級フリゲイトの原型となる31型フリゲイトは満載排水量5700tでポーランド海軍最大の水上戦闘艦となります。その兵装はCAAM対空ミサイルを搭載するMk41VLS垂直発射装置と対地攻撃能力を有するRBS-15対艦ミサイル発射器及びOTOメララ/ガリレオ社製76mm艦砲と近接防空用のOSU-35K/35mm機関砲2基、短魚雷など。

 CAAM対空ミサイルはイギリスが開発した共通モジュール式対空ミサイルでASRAAM短距離空対空ミサイルを基に開発され射程は25㎞、ただASRAAMは赤外線画像ホーミング方式を採用しているのに対して艦載型及び地上発射型スカイセイバーのCAAMはアクティヴレーダーホーミング方式を採用、この搭載で僚艦防空能力が付与されます。
■ニルギリ級フリゲイト
 造船力というものの大切さを身に染みて感じるところです。

 インド海軍はニルギリ級ミサイルフリゲイトヴィンディヤギリに進水式を挙行しました。進水式が行われたのはインドのGRSEガーデンリーチ造船所、防衛装備品の外国製依存度問題からの国産装備強化政策の一環を受け建造されているもので、このヴィンディヤギリはシヴァリク級ミサイルフリゲイト改良型ニルギリ級の6番艦となります。

 ニルギリ級ミサイルフリゲイトは満載排水量6670t、全長149mで建造費は計画当時4000億ルピー、米貨換算では6億ドル程度とされています。艦隊防空用として32基のバラク8艦対空ミサイルを搭載しその射程は150㎞、弾道ミサイル迎撃能力も有するとされています。そして艦対艦ミサイルとしてはブラモス超音速対艦ミサイル8基を搭載する。

 防空システムとしてはイスラエルのエルタ社製EL/M-2248 MF-STARレーダーを搭載、これはAESA方式で460㎞の索敵能力を有し、CMS-17A戦闘情報システムにより複数の目標に同時対応が可能とされています。本型は一番艦のニルギリが2024年竣工予定、ヴィンディヤギリも2026年に竣工する計画で、インド海軍は全体で7隻を建造する計画です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-クピャンスクとライマンの激戦,ロシア長距離爆撃航空司令部の不活性と北朝鮮製弾薬の受領を開始

2023-11-07 07:00:36 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 北朝鮮の暴風号戦車がウクライナでレオパルト2と戦車戦を展開するのもそう遠い話ではないのでしょうか。

 ロシア軍は北朝鮮製弾薬の受領を開始していることは確実だ、イギリス国防省ウクライナ戦況報告10月26日付発表において分析概要を示しています。この分析では、ロシア政府は公式には否定しているがロシア西部の弾薬集積所に北朝鮮からの貨物列車輸送によるコンテナが到着し始めている概要を衛星写真などから分析しています。その概要は。

 北朝鮮からの軍事関連物資はここ数週間でコンテナ1000個以上が到着しているとして、ロシア軍にとり北朝鮮はイランやベラルーシと並ぶ重要な武器供給国になっているとしている。ただ、イギリス国防省が重視しているのはここ数週間、ロシア高官が相次いで北朝鮮を訪問しており、ロシア側が北朝鮮に見返りに何を提供するかが不明だとしています。
■クピャンスクとライマン
 10万というと東日本大震災の自衛隊展開規模と同じ。

 ロシア軍はクピャンスクとライマン地区に10万名規模の部隊を張り付けている、ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告10月26日付戦況分析において概況を示しています。この10万という数字はウクライナ陸軍司令部報道官のフィティヨ中佐がロシア軍侵攻状況についての見解を示した際に提示した数字で、これは夏ごろからかわっていません。

 東部戦線北部でのこのところの活況となったロシア軍攻撃はクピャンスクの北東9km、クピャンスクの東6km、クピャンスクの南東20km、スヴァトヴェの南西15km、スヴァトヴェの南西21km、局地的ながら複数地域で攻撃を行っているとのことですが、ウクライナ軍は攻撃を撃退しているとのこと。その背景には攻撃が小規模であったとされています。
■長距離爆撃航空司令部
 航空宇宙軍長距離爆撃航空司令部の不可解な状況について。

 ロシア軍が一か月以上にわたりウクライナへの巡航ミサイル攻撃を実施していない、イギリス国防省ウクライナ戦況報告10月27日付戦況報告においてロシア航空宇宙軍長距離爆撃航空司令部の不活性な動静への分析を発表しています。一か月以上爆撃機が任務飛行を行わない事は2022年2月の侵攻開始以来空白期間としては最長になったという。

 Kh-101巡航ミサイル、ロシア名AS-23Aコディアックミサイルの枯渇がその背景になっているとみられます。ただ、在庫が払底しているわけではなく細々と密輸確保した半導体を用いて巡航ミサイルを製造し蓄積中と考えられていて、その背景には十分にミサイルを備蓄したうえで冬季のウクライナ電力インフラ攻撃に備えているものと分析しています。

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