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防衛大綱改訂2018【四月一日特集】航空防衛,国運賭すに相応しいF/A-18F戦闘機導入案

2018-04-04 20:06:47 | 北大路機関特別企画
■防衛大綱改訂2018への意見
 防衛大綱改訂2018【四月一日特集】、今回が一旦最終回です、新年度も四日となりましたから、ね。

 F/A-18F戦闘機再設計により低視認性、つまりステルス性を付与させる構造を採用し、四.五世代戦闘機としての機能を有しています。第五世代戦闘機のF-35Cが開発されていますが、もともとF/A-18EはF-35Cに置き換える構想はなく、併用運用される構想でした。F/A-XXとしてF/A-18FとEの後継計画がありましたが、現在、具体的進捗はありません。

 F/A-XX計画は浮かんでは消える、第六世代戦闘機の一員で、要求仕様を研究している段階です。原型は確かに新しくはないものの、現在飛行しているF/A-18Fそのものの基本設計は新しいこともあり、米海軍では延命計画が進められています。しかし、第五世代戦闘機ほど新しい機種でもなく、ライセンス生産、取得費用はある程度明るい見通しがあります。

 自衛隊F-X選定計画ではF/A-18Eが候補機の中でいちばん安価であり、財務省が推している機種だった、という伝聞情報を聞き妙に納得したものですが、例えばF-15Jの後継としてF-35Aに伍して運用した場合でも、そもそも海軍がF-35Cと併用する構想ですので性能面の問題はありませんし、アメリカ海軍段階近代化改修計画に連動させることが可能です。

 F-2戦闘機後継についても、ここまで南西諸島の情勢が緊迫度を増した現在では、国産戦闘機を延々と多額の予算を投じて開発するよりは、機数を揃えることが優先です。国産新型機の開発よりも実用的な戦闘機の輸入を優先した事例では、イスラエルのIAIが開発したラビ戦闘機がF-16輸入を優先し、試作機試験中の状況で開発中止となった事例があります。

 国産戦闘機F-3にかんして、ここまで進んだ段階でなく将来戦闘機構成要素の研究を行っている段階です。すると、F-2戦闘機についてもF/A-18Fにて置き換えることは真剣に検討すべきと考えます。特に繰り返しますが第五世代戦闘機ではありません、が、第五世代戦闘機と協同する能力は有しています。F/A-18Fは主力艦載機、低性能機ではありません。

 すると、F-15JとF-2の後継を統合できるならば、航空整備補給体系はかなり効率化されます。それならばF-2戦闘機後継機の時代、つまり2030年代の戦闘機が対抗する2050年代の脅威にF/A-18Fが対抗できるのか、と必然的につながりますが、F/A-18Fの段階近代化改修へ取り組むことでF/A-XXの開発を日米共同開発とすることは出来るかもしれません。

 逆に我が国が将来戦闘機開発へつなげるべく進めている技術の部分開発、X-2実験機として一定の形となっていますが、この技術をそのまま放棄せず開発のみを維持してゆくならば、もっとも日本の戦闘機技術開発はとぎれることなく連綿と続き、その時点で可能な技術を機会と時機に併せて航空機として完成させている方式がとられており、霧散はしません。

 つまりF-2後継機に間に合わなかった場合にも、将来のF-3戦闘機以外の選択肢、F-4,といいますと何か古い気分で、F-5、とすると何か安っぽい印象ですが、F-2後継に固執する必要はないわけです。特に第五世代戦闘機は飛行制御技術を筆頭に一国での開発費負担は難しく、相当予算に余裕ある状況下、時間をかけ部分試作を積み重ねねばその実現は難しい。

 こうしますと、思い切ってF/A-18Fのライセンス生産を行う、それならば必要数が揃うまで生産ライン閉鎖の危惧はありません。それも毎年12機が調達されたF-15Jの後継として、毎年12機から15機程度をライセンス生産し、それも必要ならばアメリカ海軍へ、アメリカ本土でのF/A-18F製造終了後にも、輸出供給するという選択肢はあるかもしれません。

 E-767のように欲しい航空機を完全輸入に依存していますと、追加発注したいとき、または別の重要事業に予算を空転させた結果、製造ラインが閉鎖するという事例も発生します。勿論、調達中断が長引けば、我が国でのライセンス生産でもAH-64DやOH-6Dのように追加発注できなくなる事例も起こり得るのですが、その時間的猶予の幅は大きくなります。

 F/A-18F,アメリカでは生産が一段落しつつあり、現在は増加発注を除けば輸出用の機体を低量生産するのみとなっている機種ですが、遠くない将来に生産は終了します。生産を日本移管するという規模まで含め、敢えて第五世代機よりも前の機種を導入する意味はあります。この方式、実はインドとF-16戦闘機の生産で同様の施策が2017年に実施されました。

 インド空軍はMiG-21戦闘機を置き換える新戦闘機に、国産テジャス戦闘機の難航、フランスのラファール戦闘機の繋ぎとしての導入に続いてF-16Vの導入を決定します。そしてF-16Vは製造元のロッキード社が新世代のF-35戦闘機製造本格化にあわせ、製造ラインを移行する必要があったことから、アメリカ国内からインドへ移管する決定を行いました。

 勿論、インド空軍の調達計画がどこから始まるか、また過去に導入計画が二転三転した事例も多くあった、不思議な国インド空軍ですので、F-16Vをどれだけ製造するか、ロッキードでは読みとれない部分も多く、実質、それならばインドに自己責任でF-16Vを製造ラインごと転売した、という構図でもあります。ただしノックダウン生産に近いものですが。

 ただ、重要なのはこれからF-16Vを世界各国の空軍が取得を希望する場合、基本的にインドから購入するという構図となります。F/A-18Fをライセンス生産する必要性の提唱は、この構図を踏襲するねらいにほかなりません。もっとも、戦闘機に限らなければ川崎重工はアメリカ製のV-107輸送ヘリコプターについて、似た事を実施した実例はあります。

 V-107製造終了後に日本のみライセンス生産を維持していた時代、KV-107としてスウェーデン軍やサウジアラビア国境警備隊へ輸出の実績があります。もちろん、アメリカ海軍がF/A-18E/Fをさらに増強する場合などでは生産ラインが維持されることとなりましょうが、日本でのライセンス生産が実現するならば維持部品などでの利便性を確保する事に繋がる。

 F/A-18F国運賭すに相応しい,日米共通部品プールの実現など運用基盤の共通化へ道が開けます。そのうえで、例えばX-2実験機を中心とした各種技術基盤を流用するかたちで、F/A-XX計画や、F-35Aの改良型として将来予測されるF-35Dの開発へ、日本の技術を活かし、第5.5世代戦闘機や第六世代戦闘機へとつなげられるならば、日本の戦闘機開発技術の活用にも道は続く。

 このように、装備技術と装備体系を極力単純化することこそが、実はもっとも無駄のない防衛計画へつながるのかもしれません。ただ、この施策は冒頭の戦車を充分調達する事が出来るよう防衛大綱が改訂されたならば、という前提に依拠したもので、現実的にはこの施策には大きな政治決断が必要です。そして本年の防衛大綱改訂の先の見通しは実際暗い。

 防衛大綱改訂2018【四月一日特集】、こう銘打った本特集、元々は四月一日に因んだエイプリルフール的な要素を盛り込んだ内容ではありますが、無理にでも戦車300両体制に収め、戦闘機定数280機の枠内で如何に脅威増大へ対応するか、という平素の記事、視座、信条を一つ転換し、不足する部分は不足していると、阿らず、良心に基づいた提案を提示してみました次第です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (1)
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