北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省平成二九年度予算概算要求の検証【8】 統合機動防衛力、迅速な展開・対処能力の向上

2016-10-26 21:28:51 | 北大路機関特別企画
■迅速な展開・対処能力の向上
 防衛省平成二九年度予算概算要求の検証、第八回は迅速な展開・対処能力の向上について、これは基盤的防衛力整備から統合機動防衛力整備への転換の重要事業です。

 自衛隊将来装備の目玉としまして、航空装備ではMV-22可動翼機の調達がF-35A戦闘機と並び示されています、実際にはMV-22よりもEC-225やEC-725のような航空機の数を揃え、少数の精鋭航空機よりは多数の幅広い能力構築が望まれるのですが、現在南西諸島へ突き付けられた脅威へ一定以上水準の装備を揃えなければ対処出来ないとの判断でしょう。

 迅速な展開・対処能力の向上、来年度予算概算要求における重要施策は現在の防衛計画の大綱に明示されています島嶼部防衛能力の確立で、この為には有事の際に本土部隊を脅威正面へ迅速展開させる緊急展開能力、更に展開可能な装備体系を構築し展開した上での対処能力を整備しなければなりません、この為展開装備と対処装備の要求が行われています。

 CH-47JA輸送ヘリコプター6機の取得に456億円、V-22ティルトローター機4機の取得に393億円、それぞれ計上されています。多用途ヘリコプターの新型機を開発中であり、観測ヘリコプターの減勢や対戦車ヘリコプターの戦闘ヘリコプター大隊事業が停滞している為、航空機調達に非常に大きな課題を抱えている中ではありますが調達計画の画定です。

 航空機整備事業は島嶼部防衛を主眼に迅速かつ大規模な輸送展開能力を確保するとしまして、輸送ヘリコプターCH-47JAを整備し、輸送ヘリコプターの輸送能力を巡航速度や航続距離等の観点から補完強化する可動翼航空機の導入計画を進展させ水陸両用作戦における部隊の展開能力を強化するとしまして、更に補用品関連経費へ392億円が要求されました。

 緊急展開能力強化は航空自衛隊輸送機も陸上自衛隊航空部隊に加えて実施されます、C-2輸送機3機の取得に667億円が要求されました、これは現有のC-1輸送機減勢を踏まえ実施されました調達計画で、航続距離や搭載重量等を大幅に強化した新型機を導入する事で、大規模な展開能力を確保します。ただ、この整備計画は当初計画より大幅に遅れています。

 16式機動戦闘車33両の取得へ237億円が要求されました。上記までの航空装備品調達計画は展開能力の整備ですが、16式機動戦闘車の調達については対処能力の整備という事となるのでしょう、ただ、16式機動戦闘車の調達と共に本土に配備されている74式戦車が廃止され、徐々に本土防衛力から戦車戦力が廃止されてゆきます、評価は何とも言えません。

 この事業は機動運用を基本とする作戦基本部隊としての機動師団及び機動旅団等に航空機等での輸送に適した16式機動戦闘車を整備し作戦基本部隊の機動展開能力を強化する、としています。16式機動戦闘車は105mm砲を搭載した装輪機動砲で、緊急展開能力に優れると共に戦車の撃破能力は有していますが、機動砲であるので戦車戦闘には適していない。

 防衛省では16式機動戦闘車を機動連隊へ配備する計画で、機動連隊には装甲化普通科中隊と軽装甲機動車中隊に16式機動戦闘車中隊と重迫撃砲中隊を持つ、一方機動師団や機動旅団は全て機動連隊により編成されるのではなく、機動連隊一個を基幹とし戦車や火砲による支援を受けない純粋な軽歩兵部隊としての普通科連隊を混成し運用する計画とのことで、普通科連隊の能力と機動連隊の能力格差は非常におおきくなります。

北大路機関:はるな くらま
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