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プーチン大統領唯一の空母をシリアに派遣する理由【前篇】 イギリス戦闘機三沢到着話題の裏で

2016-10-24 22:12:06 | 国際・政治
■ロシア空母ドーバー海峡出現
プーチン大統領唯一の空母をシリアに派遣する理由、ロイターコラムとして興味深い記事が掲載されていました。

イギリス空軍のEF-2000タイフーン戦闘機が航空自衛隊との共同訓練を行うべく三沢基地へ到着、特徴的な新世代戦闘機タイフーンの日本展開に大きな注目が集まっていますが、同じころ、タイフーンを派遣した英本土ではドーバー海峡にロシア海軍空母が原子力ミサイル巡洋艦などを伴い出現しました、空母アドミラルクズネツォフ、護衛艦ひゅうが型の三倍という大型艦です。

ロシア海軍が空母アドミラルクズネツォフをシリア沖へ派遣しました。シリア内戦へのロシア海軍の空母派遣は今回で八回目を数える事となりましたが、この意図について、ロイターコラムにおいて海軍力の再整備と、欧州地域への軍事的示威行動である、との分析が示されていました。アドミラルクズネツォフは現在ロシア海軍唯一の空母となっています。

加えてソ連時代に唯一建造されたCTOL空母、陸上から運用する戦闘機と同規模の航空機を運用可能な空母です、が、シリア空爆へはシリア領内とイラン領内へ基地を有していますので必ずしも空母を派遣する必要がない、との分析が示されています、実際、バックファイア爆撃機など多数を展開させ経空脅威の無い現状、空母からの攻撃は必要ないのです。

アドミラルクズネツォフは満載排水量59000tの通常動力型空母で、艦首にスキージャンプ台を設置、Su-33戦闘機や最新鋭のMiG-29艦載型など24機を搭載すると共に、ヘリコプター多数の運用能力を持ち、艦隊打撃力の中枢、P-700巡航ミサイル12発を搭載、オスカー級巡航ミサイル原潜やキーロフ級原子力巡洋艦、スラヴァ級ミサイル巡洋艦と同じもの。

このP-700は超音速巡航ミサイルでミサイル本体がMiG-19戦闘機と同規模のもの、ミサイルは相互に情報共有し編隊飛行を実施、ミサイル指揮官の統制下コンピュータにより目標へ編隊攻撃を加える極めて強力なミサイルです、蒸気カタパルトの技術が充分でないためスキージャンプ台方式を採用し艦載機運用に制限がある為、ミサイルの重要度が大きい。

ロシア空母は旧式化しつつあります、1985年に進水式を迎え1990年に就役、ソ連海軍では二番艦の建造も進めていましたがソ連崩壊とその後に続く経済崩壊により実現せず、二番艦は中国へスクラップとして売却されてしまいました。しかし、能力的にはアメリカ空母よりも上限があるものの、その示威能力の多寡さを誇示する事に大きな意味があります。

シリア沖への今回のアドミラルクズネツォフ展開ですが、併せて、イギリス沖でのヘリコプター発着訓練を行う可能性が示されていまして、北海に進出したアドミラルクズネツォフはそのままドーバー海峡を通行し、ドーバー海峡はイギリスから対岸のフランスが見えます、自動的にイギリス沿岸部からもロシア空母の威容が望見できることとなりました。

非常に稀有な状況といえるものですが、併せてロシア艦複数がイベリア半島をイギリスへ北上中で、これによりイギリス海軍の見える範囲内において通常訓練としょうする訓練を実施する事でイギリス海軍の関心を惹起させ、その上でこの情報がイギリス国内や、イギリスメディアから世界へ報道させることによりその存在感を世界へ示す可能性もあります。

北大路機関:はるな くらま
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