◆防衛大臣更迭そのものが日米交渉への悪影響
田中新防衛大臣は就任後の挨拶で、普天間問題への意気込みを語りました。しかし、実際はどうなのでしょうか。
防衛大臣更迭は、そもそも防衛大臣が普天間問題において日米交渉にあたる外務大臣と並ぶ当事者、という位置づけにあるのですから、安易に失言と官僚の放言を要因として首相が防衛大臣の地位を守ることなく更迭した、ということは、そもそも日米関係においても真剣な討議を行う意思がないのではないか、と印象付ける要因となります。
防衛大臣は、特に冷戦時代における防衛庁時代は基本的に専守防衛であり、抑止力は米軍との均衡を考えたうえで整備し、という区分であり、自衛隊への重責の一方で防衛庁長官は閣僚の登竜門的な位置づけで優秀ですが経験を高めている議員が当てられていました。
しかし、昨今では次期戦闘機選定や南西諸島防衛、テロとの戦いへの対応と拡大する自衛隊の海外派遣、北方から三方へ拡大多様化する脅威と財政難下での防衛力整備、そこに普天間問題での日米交渉と、相当の手腕と実績が無ければ対応は難しい要職となっていることを忘れてはなりません。
普天間問題は既に米軍再編という世界規模の部隊改編の中で、厚木基地空母航空団移転や第一軍団司令部前方展開とともに討議され合意にいたった日米合意について政権交代を唯一の理由として一方的に反故とし、一方で代替案を用意しなかったことによる問題で、これに対し回答を用意できなかった現与党が再度合意に戻そうと住民理解をはかっている状況です。
こうしたなかで、如何に新大臣が頑張ろうとも、既に建設は強行を残して難しい局面にあり、その当事者として交渉に当たり説得に当たり調整に当たる防衛大臣を安易に更迭したことは、今後の継続の難しさ、それ以前にそのための意志の低さを露呈したこととなっており、移転に必要な費用のアメリカ側負担の正当性にも関わります。この結果だけでも好むと好まざると、普天間は固定化せざるを得ない状況になっているといえるかもしれません。
北大路機関:はるな
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