◆史上最大の阪神大震災災派で225万4700名
朝雲新聞に自衛隊の三ケ月間に渡る災害派遣人員数が発表されました、延べ868万というちょっと信じられない規模です。
6月の朝雲ニュース ・・・6/16日付 ニュース トップ :派遣人員 延べ868万人に・・・ 東日本大震災に伴う自衛隊の災害派遣は、3月11日から6月11日まで3カ月間で人員延べ約868万7000人、航空機同約4万1000機、艦艇同約4100隻に達したことがわかった。
1日当たりの最大派遣勢力は、人員約10万7000人(陸自約7万人、海自約1万5000人、空自約2万1600人、原発対処約500人)、航空機約540機、艦艇59隻だった。 主な成果は、人命救助1万9286人、遺体収容は9487体。物資等輸送は約1万1500トン、医療チーム等の輸送は1万8310人、患者輸送175人。
被災者の生活支援面では、給水支援が約3万2820トン、給食支援が約447万7440食、燃料支援が約1400キロリットル。このほか入浴支援は約85万4980人、衛生等支援は約2万3370人となっている。 http://www.asagumo-news.com/news/201106/110616/11061602.html
今回紹介する記事は6月11日までの三ケ月間での派遣実績です。昨日お伝えしたように自衛隊の派遣規模は縮小されていますから、今後任務終了までに延べ派遣規模がどの程度になるのかについては未知数ですが、1000万の大台に昇る可能性があり、改めて今回の災害規模が災害派遣部隊の規模からも垣間見えてきます。
自衛隊創設以来最大の災害派遣は阪神大震災への災害派遣で延べ2254700名、車両346800両、艦艇679隻、航空機13355機。現時点で東日本大震災への派遣規模は人員で既に阪神大震災の四倍に迫る規模で、艦艇派遣規模は文字通り桁が違っている状況。
自衛隊史上最長の災害派遣は雲仙普賢岳災害派遣の1658日、延べ派遣人数は207280名と車両67846両と航空機5999機となっていますが、東日本大震災は生活支援などで長期的な支援が必要な状況であり、また将来の二次災害を念頭に置けばこちらにも近づいてゆく可能性は否定できません。
この災害派遣規模ですが、自衛隊の規模を考えれば明らかに過大であるということは言うまでも無いのですけれども、他方で東海東南海南海地震に関する近年特に警戒されている連動地震への災害派遣を展望しますと、やはり再度こうした災害が起きた場合は、という想定を基に基盤的防衛力と動的防衛力の防衛力の整備を考えるべきなのでしょうか。
とにかく、今回の災害は規格外でした。まず、阪神大震災と比べた場合の民間ボランティア派遣規模は四分の一程度である、としてボランティア不足が今月上旬に報じられていましたが、航空機や艦艇を有する自衛隊でなければ入っていけないという状況が長く続きました。
東日本大震災では、しかも被災地は広大、早々とJRや阪急、阪神が復旧して近傍の大阪や京都、姫路からのアクセスが可能になった阪神大震災との相違点が浮き彫りになりました。よって、自衛隊でなければどうにもならないという状況がかなりあったわけです。
また、同様の問題は緊急消防援助隊の派遣への難しさにも繋がり、実質延べ人数で一万人程度の派遣に留まったという事を考えますと、いよいよ自衛隊の災害派遣への能力依存というのは強まってしまう、という実情を示しました。このあたり、消防や警察の空中機動能力を強化したり、野整備隊の創設という方向は現実的ではありませんので、次の震災への備えも結果的に現状のまま、という事になるのでしょうか。
減災、という考え方はあるにしても、今回のような大規模災害を想定することは非常に難しく、また地域防災基盤で対処する事にも限界があります。この点、被災地となりうる地域の地誌研究を行い、平時から部隊を配置するという基盤的防衛力の意義は、従来の防衛だけではなく災害派遣にも重要性を有しています。他方で、災害に対して今回は十万人派遣を求められた訳ですから、空中機動能力を軸に置く動的防衛力の重要性も高い、これまで幾度も記載した通りです。
しかし、自衛隊の規模を考えた場合、同時に自衛隊災害派遣の任務は復旧でして、災害派遣が続いているという事は同時に復旧が三カ月を経ても終了していない、という事。ですから、如何に迅速に災害派遣に求められる任務を完遂するか、という事も考える必要はありそうですね。この点、この国をどう守るのか、ということはもう少し全国民的な議論があっても良い、そう考える次第。
北大路機関:はるな
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