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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

那覇基地のF-15を二個飛行隊化 中国睨み本土より飛行隊抽出を新防衛大綱で検討

2010-11-20 22:50:30 | 防衛・安全保障

◆戦闘機不足の抜本的解決は先送り

 南西諸島に中国より軍事的圧力が高まる中、防衛省では那覇基地の第83航空隊を増強する計画を検討しているようです、共同通信より引用。

Img_1739  那覇の戦闘機30機に増強へ 中国視野、新大綱で防衛省・・・ 防衛省が10年以内をめどに、航空自衛隊那覇基地の戦闘機を現行の約20機から約30機に増強し、1飛行隊から2飛行隊体制に改編する方向で検討していることが19日、複数の同省幹部の話で分かった。南西諸島の警戒監視機能も強化する。 中国海軍の空母建造の動きなども視野に、対領空侵犯措置の緊急発進(スクランブル)能力を向上させ、緊迫時に周辺空域で航空優勢を確保するのが目的で、中国側の強い反発も予想される。

Img_1141  年内に策定する新たな「防衛計画の大綱」に、「戦闘機部隊の充実」や「監視機能の強化」などと書き込む方向で、記述内容を調整している。 那覇基地では2009年3月、F4戦闘機から高性能なF15戦闘機への切り替えが完了し、飛行隊には現在、約20機のF15が所属。防衛省はこの飛行隊の戦闘機を減らした上で、F15かF2戦闘機の飛行隊を新設する方針。時期によっては、次期主力戦闘機(FX)で編成する可能性もあるという。 空自全体の12飛行隊、戦闘機約260機の体制は維持する方針で、那覇基地の増強と引き換えに、他の基地の飛行隊を2から1に減らすことを想定している。2010/11/20 02:02   【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010111901000940.html◆◆

Img_4626  那覇の第83航空隊も二個飛行隊化で遂に第9航空団へ格上げとなるのですね。しかし次期戦闘機の選定も進まない中でどこから10機捻出するのか、下手をすればF-4戦闘機40機二個飛行隊分が純減になる可能性も出てきた状況下で、何処から引き抜くというのか少し疑問です。防衛省がF-35を念頭に検討しているのは、昨今現実的なF-15EやF/A-18Eの導入に関する報道も無いことからある程度の信憑性アあると考えられます。しかし、記事にあるように今後十年間で那覇基地の戦闘機を増強する、とありますがF-35は十年後の2020年であっても防衛省が取得できるかが非常に不透明な航空機です。

Img_4981 F-35間に合わず、その場合、F-4戦闘機は、首都防空に当たる百里基地第七航空団を構成する二個飛行隊のうちの一個飛行隊、九州新田原基地お第五航空団を構成する一個飛行隊に配備されていて、これが非常に危機的な状況に陥ることが考えられています。既に現段階では飛行回数を縮減して機体に残るわずかな構造寿命を延長する運用に移行しているとも伝えられ、実質的に飛行隊の練度は最盛期と比べれば後退、緩慢な第二線への移行という状況にありますが、これがそのまま消える可能性も出てきている訳です。

Img_4653  日本中探しても一個飛行隊引きぬける航空団というのは、中々思いつきません。日本の要撃飛行隊は千歳基地、三沢基地、百里基地、小松基地、築城基地、新田原基地、那覇基地に展開しています。千歳の二個飛行隊はロシア空軍の圧力を一手に引き受ける航空団で昨今増加しているロシア空軍からの圧力に対応している航空団、三沢基地に二個飛行隊は支援戦闘機が配備されておりロシア海軍の動静が活発化している情報が統合幕僚監部ロシア海軍艦艇動向情報により報じられている状況下では引き抜けません。

Img_8208  百里基地の二個飛行隊ですが首都防空を手薄にするというのは非常に不安もあるだけでなく中国海軍の空母が出現する可能性が記事でも触れられているように太平洋上から首都圏に及ぶ脅威が現出する中で引き抜くことは不可能です。小松基地の二個飛行隊は日本海不審船事案における戦闘空中哨戒で知られたように北朝鮮を対岸睨む唯一の基地でして北朝鮮が韓国と統合されたのならば話は違ってくるのですが現段階ではその見通しはなく日本海の防空を担う飛行隊を引きぬけないばかりか最近はロシア沿海州から日本海方面に進出する航空機へも対処しなくてはなりません。築城基地の支援戦闘機と戦闘機の二個飛行隊ですがこちらは対馬海峡という重要海峡を睨むとともに朝鮮半島有事における緊張を最大限に受ける基地ですからこちらも削減は現実的ではありません。

Img_8721  考えられるのは新田原基地のF-4飛行隊と第五航空団なのですが使っているのがF-4でして十年後には日本がF-4を導入してより四十年を間近にしての配備となります、四十年型落ちの戦闘機を配備するというのは変なたとえですが90年代に緊張の増えた地域に防衛力を強化するためにF-86を配備するというようなものです。また、記事にあるように飛行隊を二から一に減らすという事ですので一個飛行隊で一個航空団を構成する第五航空団はこれ以上引き抜けません。飛行教導隊としてF-15一個飛行隊が配備されているのですけれども、こちらは戦略予備となっていますので、平時に引き抜くのはあまりに愚策です。

Img_8226  すると首都防空を手薄にして第七航空団から一個引きぬく事でしょうか。百里基地には偵察航空隊が配備されていて、現在は旧式化したRF-4偵察機を運用していますが、将来は、これも開発が難航しているので楽観視は出来ないのですけれどもRF-15として近代化改修に対応していない初期型のF-15Jを改修して偵察機に充てる構想です。これを暫定的に要撃にもあてるよう無理を重ねれば、いや無理でしょうけれども、昨今は偵察専用機から多用途化が趨勢、可能性は皆無とは言えないでしょうね。

Img_8206  三沢基地、危惧するのはここから一個飛行隊引き抜く、という可能性です。今の政府は、日ロ間が非常に友好な状況にあるかのように北海道の防衛を蔑にする北部方面隊縮小計画を進めています。大本営が日ソ不可侵条約を過信して引き抜かれ戦力が空洞化した満州の関東軍が終戦直前にソ連軍の侵攻を受け、苦戦を重ねた戦訓がありますし、厳に日本周辺に出現する国籍不明機の大半はロシア空軍、中国海軍は、はつゆき型前後の大きさの艦船ばかり日本に送ってきますが、ロシア海軍は、あたご型よりも大きな巡洋艦を日本周辺に遊弋させています、この状況下で、あたかもいまは90年代のようにロシアからの圧力が無くなったかのように北方から飛行隊を引きぬくのは、あってはなりません。

Img_6928  現状に鑑みるに、中国の空母出現という可能性に気付いているのならば、南西諸島の防空体制充実は急務なのですけれども、同時に小笠原諸島に対してもその圧力が及ぶ事は考えなければなりません。ロシア海軍も強襲揚陸艦三隻を太平洋艦隊に配備するのですし、太平洋正面や北方への圧力は冷戦時代に匹敵、多方面からの脅威を受けるという意味を踏まえれば将来の日本が受ける脅威の方が大きくなります。いっそ、いま円高なのだからF-16を100機くらい、とか、こういう時局にあるからこそ補正予算で毎年10機のF-2を六年間程度生産してF-35完成するまでの繋ぎとするとともに、南西諸島、小笠原諸島、太平洋岸の防空体制を強化しては、と考える次第。

HARUNA

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