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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省、F-2生産終了とF-35導入内定方針 脅威高まる中で果たしてこれは妥当か? 

2010-11-11 23:41:31 | 防衛・安全保障

◆F-2は安定性能、F-35は価格納期性能が未定

 防衛省は次期戦闘機としてF-35の導入を方針として内定させ、F-2の調達を終了するようです。将来発展性と運用基盤のあるF-2を諦めて、まだ未完成の機体に全てを賭けるとのことになります。

Img_7839  十一月八日と、少々記事が古いのですが、次期戦闘機のF-35への取得方針の表明とF-2の調達終了について以下は共同通信からの記事の引用です。 F35軸に12年度予算化へ 次期戦闘機で防衛省・・・ 防衛省は航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)について、次世代戦闘機F35を軸に2012年度予算の概算要求で調達経費を計上する方針を固めた。年明けに機種選定委員会を開いて調整を本格化させる。これに伴い、選定までの穴埋めとして検討していた現有戦闘機F2の追加調達を断念した。複数の防衛省、自衛隊関係者が7日、明らかにした。

Img_0231  FX選定で防衛省は当初、F35開発の遅れや価格の高騰を受け、暫定措置としてF2の追加調達や現有の主力戦闘機F15の改修継続で対処する方向だった。だが軍事的にも台頭する中国に対して航空優勢を確保するため、レーダーに捕捉されにくいステルス性と超音速巡航能力を特徴とするF35など第5世代機導入の早急な決定が必要との判断に傾いた。40機弱の導入を想定している。 中国はF15に匹敵する「殲11」など第4世代戦闘機を量産し、第5世代戦闘機の開発も目指している。このため、性能が比較的劣るF2の追加調達は抑止力や経費面で得策ではないとの分析も第5世代機経費計上の方針を後押しした。2010/11/08 02:02   【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010110701000412.html

Img_5227  F-2支援戦闘機もいよいよこれまでのようです。来年度予算の概算要求にF-2の新規調達が盛り込まれていなかった時点ですでに終了なのですが、政府はF-35,よりにもよってF-35の方に方針を転換するようです。しかし、F-2で対応できない脅威、というのは中々少ないのではないでしょうかね、ステルス機等はレーダー反射面積を局限化するためにかなり無理をしていますので有視界戦闘ではF-35とF-2ではF-2の方が利がありますし、F-2の搭載しているレーダーは国産品でまだまだ発展要素があります。F-35のレーダーの将来性も凄いですが、技術が全て日本に開示される訳ではありません。

Img_5576  例えばF-2ではなくF-4のような古い機体を見た上で中国空軍の第四世代戦闘機は性能を単体で見た場合は確かに脅威ではあるのですが、データリンクや空対空ミサイルの性能、戦闘機の基幹部分と言うべきエンジンを近年に関係が悪化しているロシアから導入している点やもともと高稼働率ではなく劣悪な状況下での最低限の運用体制を維持するというロシア機の設計思想を受け継いだ事での整備性の問題からの戦闘機稼働率の低さ等を踏まえれば、必ずしも日本の防空体制が第四世代戦闘機で維持できない、というわけではありません。

Img_5543 第一に日本は専守防衛を国是としていますから、上海や北京上空の制空権をとりに侵攻する訳ではありません、逆に向こうから来るのを迎撃するのですから航空戦では高機動により燃費が急激に悪化するのですけれども、基地に近い日本の場合は圧倒的に有利ですし、地上のレーダーサイトや航空自衛隊の空中管制を行う早期警戒機の支援を受けられます。むしろ、同じ取得費用で高額となることが必至な開発中のF-35を導入するよりも機数として多くのF-2を揃えた方が圧倒的に有利ですし、予備部品などはかなり多くのものを備蓄する必要が出てきまして、これが予算的に圧迫してしまいます。

Img_7862  こういうのも、今までは戦闘機のライセンス生産を行う事で予備部品を必要な時に必要なだけ補充する、在庫を持たない、つまり日本が世界に誇るトヨティズム方式が成り立っていたのですが、ライセンス生産が出来なければ予備部品も輸入しなければなりません、つまり多くの在庫を抱えますし、その取得と管理に費用が掛かるという構図が生まれます。日本でF-35がライセンス生産を認められる可能性は、F-35が多くの国が開発に参加し、多くの国が設計関係のパテントを分散して保有する一点からも絶望的ですので、これはどうにもならないでしょう。また、F-2の生産終了で日本における戦闘機生産は終了しますので、航空自衛隊の戦闘機稼働率を支えてきた部品メーカーが防衛産業から撤退する事となります。撤退は始まっているのですが、完全に撤退してしまえば現行の自衛隊機の予備部品も外国から特注で調達するか、国内で特注するか、結局割高になります。

Img_6601  F-35はF-2に比べて稼働率も下がります、国内に運用基盤が出来ないのですし、NATOのように協同運用基盤制定を行う事は憲法の集団的自衛権の観点から難しいのですからね。すると例えば100機あったとして、これまで稼働率を90%に維持出来た場合、18個飛行隊に換算して5個飛行隊が全国の基地で要撃任務に当たる事が出来るのですが、NATO推奨の最低稼働率水準とされる(十年ほど前の江畑先生の著書に旧東独のMiG-29がこの稼働率を割った、として出ていた数字です、うろ覚えでのすので間違っていた場合はご指摘いただけると有難いです)50%前後で推移した場合、三個飛行隊が稼働、となる訳です。中国空軍が一方向からしか来ないのであれば、三個飛行隊あれば充分対処できるのでしょうけれども、多方向から来た場合を想定すれば、しかも、目標が同時多目標であった場合では三個飛行隊よりも五個飛行隊の方が望ましいでしょう。

Img_6609  しかも、このF-35は現在開発難航で納期未定、友人でアメリカで仕事の際に立ち寄った航空祭でF-35のモックアップを撮ってくれた、というのはあるのですが、当方はこのF-35,実物は見た事がありません。F-35が日本に導入されて岐阜基地の飛行開発実験団で試験を終了して問題なし、となった後で航空自衛隊の航空団に配備されるのは何年先か、先日も更に数年延びる、という記事を紹介しましたけれども、下手をすれば2020年よりも後、という可能性もありまして、それまで中国空軍が絶対に圧力を掛けてこないという保証はどこにあるのか、非常に心配です。

Img_2840  時事通信:在韓米軍など海外駐留削減=次世代機F35開発もカット-超党派委草案・・・ 【ワシントン時事】オバマ米大統領が設置した超党派の財政赤字削減委員会は10日に発表した共同委員長草案に、欧州とアジアの駐留米軍の規模を3分の1削減することや、開発中の次世代戦闘機F35の調達機数を大幅に減らすことなどを盛り込んだ。 草案によると、2015会計年度までに国防費1000億ドル(約8兆2000億円)以上を削減する。欧州、アジアに駐留する米兵約15万人を5万人削減し、15年度までに85億ドルを節約できるとした。内訳は欧州で3万3000人、在韓米軍で1万7000人減らす。在日米軍については言及しなかった。

Img_2600  また、空・海軍と海兵隊はF35を計2443機調達する計画だが、草案は機体の構造が複雑で技術的問題が指摘されている海兵隊仕様のF35の開発中止を提言。また、空軍、海軍向けも、調達機数を計画の半分にとどめ、残りはF35(単価約1億3300万ドル)より大幅に安いF16やF18スーパーホーネットを充てるべきだとしている。これにより15年度までに95億ドルの支出を抑える。 また、沖縄に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレーの調達を計画の約3分の2に当たる288機にとどめ、15年度までに11億ドルの支出を削減するとしている。  同委員会は委員18人で構成され、最終報告の承認には14人の賛成が必要。委員会は12月1日までに最終報告をまとめる。国防装備費の大幅カットは、雇用対策にも影響するだけに軍需関連企業を地元に抱える議員の反発を招くのは必至で、草案は修正される可能性もある。(2010/11/11-19:09)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010111100840

Img_2861  航空自衛隊が導入しようというF-35ですが、これは国際共同開発の航空機でして、生産数に応じて機体の値段に開発費が上乗せされますし、開発費が増大する場合にはその増大分も支払わなければなりません、お客様は神様、という言葉がありますがF-35は国際共同開発なので日本は顧客ではなくリスクのステイクホルダー、事業パートナーという形になる訳です。神様としてメーカーに指図出来ない訳ですね。納期が未定であるだけではなく、開発費用がどれだけ大きくなるかも未定、その開発費が余りにも大きくなりすぎて、アメリカが負担軽減を求めているという状況です。そこで日本が求められるのはお金、資金の拠出です。そこでアメリカは写真のホーネットやファルコンを充てるべき、という声が出ている次第。アメリカがファルコン、つまりF-16を充てるべき、というのならば日本もF-2を、考えてもいいのではないかな、とこのブログで繰り返しています。日米共同生産なのでF-2は日本の一存で生産が継続できないのですが、完成すればF35を調達します、と条件付きで首脳交渉すれば、動くのではないかな、と考えます次第。

Img_2705  F-35,幾らになるか分かりません、いつ完成するかも分かりません、どのくらいの性能が発揮できるかは現在開発中ですから未知数です、ステルス性以外の性能でF-2よりも上か下かも未知数。アメリカはこういう状況で、日本からちょうど円高で日本円が強いのですから、開発費にポーンと100億ドルくらい出してほしい、と考えているのでしょうね。開発費が無くて困っている、パートナーもそんなF-35のプロジェクトから抜け出したい、イギリスやイタリア、オランダは配備数の下方修正を検討中とも伝えられます、こんな中に日本は飛びこむのですよね。完成すれば良い戦闘機になると思います。しかし、完成するまで日本はまってもいいのではないでしょうか。

Img_6188  排他的経済水域に中国調査船=中止求め、3時間後域外へ-鹿児島・奄美・・・ 9日午後4時40分ごろ、パトロール中の海上保安庁の航空機が、鹿児島県奄美大島の西方約390キロに位置する日本の排他的経済水域(EEZ)で中国海洋調査船を確認した。同機は無線で調査中止を要求。同船は同8時ごろに同水域外に出た。 第10管区海上保安本部(鹿児島市)によると、確認された海洋調査船は「濱海512」(1964トン)。船尾からケーブルのようなものを5本引いて航行していた。 航空機から無線を通じて英語で呼び掛けると、同船は「きのうから調査をしている」と応答。同機が「事前同意のない(EEZ内での)調査活動は認められない」と中止を要求したところ、同船からは「ここは中国の海だ」と応答があったという。 (2010/11/10-00:27)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010111000014

Img_9734  奄美大島と言えば九州の離島です。今度は沖縄県のみならず九州の鹿児島県が中国領だ、中国の海だ、と強く出てきました。ううむ、尖閣諸島を中国が領有宣言している、というのは聞いたことがあるのですが、九州も中国領だ、と主張してきたのですから、放置しておくと本州の中国地方も領有宣言してくるかもしれませんし、第二次大戦中のカイロ会談で四国を中華民国が管理する案が出ていたようですので、あの時中華人民共和国は影も形も無かったのですが、四国の領有宣言をしてくるかもしれません。日本はこういう非常識な国から軍事的圧力と領土割譲の圧力を受けているのでして、こうした状況下で自衛隊の防衛力を再度冷戦時代の規模にまで戻して、加えて西方南方の防衛警備を強化しなければならない、という時期なのですけれども、こういう時期に日本の航空防衛産業を危機に曝してまで、いつ完成するか、どういう性能か、どのくらいの費用か分からない機体を修得しよう、というのはちょっと理解に苦しみます。

HARUNA

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