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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

次期救難ヘリコプターに三菱重工案のUH-60J改を選定 防衛省発表

2010-11-06 20:59:10 | 先端軍事テクノロジー

◆川重KE101,ユーロコプターEC725を退けUH-60J

 防衛省は航空自衛隊が現在運用しているUH-60J救難ヘリコプター後継機の選定作業を続けてきましたが、この程決定した旨、11月5日に報道発表されました。

Img_17932 報道資料 > お知らせ > 航空自衛隊の次期救難救助機の機種決定について・・・航空自衛隊の次期救難救助機の機種決定について:平成22年11月5日防衛省:平成23年度概算要求に計上している航空自衛隊の次期救難救助機として、本日、以下のとおり機種を決定したので、お知らせします。

Img_18321 1 提案会社及び機種三菱重工業提案のUH―60J(近代化)※ UH-60J(近代化)は、次期救難救助機に関する防衛省の要求を満たすよう現有のUH-60Jをベースに三菱重工業が改良する能力向上型

2 選定理由UH―60J(近代化)は、航空自衛隊の次期救難救助機として必要な要求事項を全て満足しており、また、経費についても妥当性を有するものであった。※ 経費(機体取得経費(約40機分)及び20年間の維持経費等):約1,900億円

Img_12213_1 (参考)○ 機種選定作業の経緯:平成22年 7月 5日 提案希望会社に対して提案要求書手交  8月31日 提案会社から提案書を受領   11月 5日 防衛省において機種決定 。川崎重工業(株) KE101 (英)アグスタウエストランド社 ライセンス国産 ●三菱重工業(株) UH-60J(近代化) (米)シコルスキー社 ライセンス国産 ●ユーロコプタージャパン(株) EC725 (仏)ユーロコプター社 輸入及びノックダウンhttp://www.mod.go.jp/j/press/news/2010/11/05e.html

Img_18126  航空自衛隊は現行のUH-60J救難ヘリコプターを能力向上し、事実上の継続調達を行う事とするようです。既存機種の改良型を運用するという事は必然的に新型機種を導入する場合と比べて教育訓練や初度調達装備数を縮小できる事となり、結果的に運用コストや取得コストの低減につながります。

Img_14277  またUH-60を基本とした哨戒ヘリコプターSH-60Jが海上自衛隊には100機近く納入されており、現在はこの改良型であるSH-60Kへ順次置き換えを実施中で既に約40機が納入されています。生産は三菱重工小牧南工場で行われており、予備部品や整備効率の面でもUH-60Jの改良型を導入する事は理にかなっているともいえましょう。

Img_11050  陸上自衛隊でも中央即応集団や東部方面航空隊、西部方面隊、第12ヘリコプター隊、第15飛行隊等に配備されまして部隊は変化している可能性もありますが、現在は30機程度を運用中です。本来は200機近くを導入して旧式化したUH-1多用途ヘリコプターを置き換える構想でしたが、取得費用が大きく、多数を揃える事は出来なかったのです。

Img_18057  UH-1JとともにUH-60も細々と調達を続けてきたのですが、航空自衛隊向けのUH-60Jが生産終了するとともに量産効果の低下によって取得費用は更に増大し、一方で航続距離が1000km以上あるUH-60JAは島嶼部防衛等に必要という板挟みにあってきました。航空自衛隊にUH-60J改が配備されるのであれば、陸上自衛隊の継続調達も希望が出てきますし、全天候型の救難型を特殊戦用として導入すれば、やや費用低減につながるやもしれません。

Img_12626_1  ただ、機体の大きさを考えますとKE-101救難ヘリコプターというのも選択肢としてもう少し評価されても良かったのかな、と少し考えてしまいます。海上自衛隊ではMCH-101掃海輸送ヘリコプター、CH-101輸送ヘリコプターとして既に運用実績がありますし、ね。他方でユーロコプターが提示していたEC-725は直輸入と日本で部品の身組み立てるノックダウン生産を提示していましたから採用は難しかったでしょう。

Img_10268  海上自衛隊は館山航空基地の第73航空隊や大村航空基地の第72航空隊において救難ヘリコプターを運用していますが現在の機種はUH-60J、この後継機がUH-60系統となるのか、MCH-101の系統になるのか、そしてSH-60Kの後継機もどうなるのか、ということにはかなりの興味が涌いてきます。

Img_11113  航空自衛隊の救難ヘリコプターは洋上や山間部での航空機事故に即応体制を構える事で航空自衛隊の実戦に匹敵する訓練を担保するとともに消防や警察、防災ヘリコプターで対応が困難な遭難事案等への災害派遣、はたまた離島の急患輸送から珍しいものでは荒天期の離島からの受験生輸送まで活躍しています。今後とも万一への備えとして、期待したいですね。

HARUNA

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コメント (16)
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