■祭りのあとに
豊川駐屯地祭の終了後、名鉄豊川線の終点、豊川稲荷駅の駅名にもなった尾張三河のお稲荷さんを拝するべく、足を進めた。
いよいよ師走が近づき、初詣は何処に行こうかと思い巡らされている方も多いのではないだろうか。さてさて、今回特集する豊川稲荷は伊勢神宮、熱田神宮とならび、東海三県初詣の参拝客が多く集うところであり、名古屋鉄道は二月下旬までの間特別ダイヤを組んで旅客需要の変動に対応する。名鉄豊川線は毎時二本の本線急行が乗り入れるほか、特急電車も直通運行されており、主力特急である1000形パノラマスーパーも乗り入れる路線である。
豊川市は、本ブログで既報のような陸上自衛隊の一大拠点であると同時に、何よりも“お稲荷さん”として親しまれている土地柄であることは、駅を出れば一目で分かる。JRと名鉄が面した駅前広場は愉快で様々なポーズのお狐さまが来客を迎えてくれる。中には葉っぱを頭に載せ、なにかしらの変身をするだろう狐もおり、ここから大きな通りにそって歩いていけば、ものの十分ほどで目指す豊川稲荷に到達することが出来る。
表通りは車道であり、ここを歩いてゆくのが最も分かりやすいのだが、やはり参道を歩いた方が参拝するという雰囲気が溢れているように思う。豊川市豊川町一番地という、文字通り町の中心地にあるお稲荷さんは、商売繁盛をつかさどる日本三大稲荷の一つといわれ、その起源は1441年ごろにまで遡る事が出来る。ここには今川義元や織田信長、豊臣秀吉といった戦国の武将を始め、江戸時代には大岡越前守忠相も参拝している。
豊川稲荷、正しくは曹洞宗の豊川閣妙厳寺鎮守豊川託枳尼真天が正式名称で、ここでは初詣の他、春季大祭、秋季大祭と、みたま祭りが有名である。
特に、みたま祭りは1945年8月7日の豊川海軍工廠爆撃の犠牲者を弔うもので、動員女子学徒を中心として受難した2500名の冥福を祈り盆踊りが駅前と境内に盛大に執り行われる。
三大稲荷とはいうものの、伏見稲荷を頂点としてその他には豊川稲荷の他、近いところでは岐阜県平田町の千代保稲荷、奈良県新庄町の瓢箪山稲荷、宮城県の竹駒稲荷、茨城県は笠間稲荷、岡山県最上稲荷、そして佐賀県の祐徳稲荷と数多くあり、この点、“伏見稲荷と並ぶ三大稲荷の一つに数えられ”とパンフや表示の多くの記載にあらわれているといえ、逆にそれだけの信仰を集めているともいえよう。
さてさて、先日掲載した伏見稲荷では、三大稲荷とは、伏見稲荷を頂点として、あとの二つは地域により異なる旨が記載されており、ここの記述が的を射ているのではないかと思う。また別の資料を散見すると、寺院であることから伏見稲荷とは異なり、別格本山とされることもあるため、いわばバチカンとカンタベリーの関係のようなものだろうか。
本殿祭壇には江戸時代に伏見宮家より贈られた毘沙門天、有栖川宮家より贈られた聖観世音菩薩が安置されており、明治時代に有栖川宮家より豊川閣の大額が下賜され、掲揚されている。本殿そのものは1930年に造営され、今日に至る。豊川稲荷そのものも江戸時代に火災により焼失しているが再び興され今日に至っている。本殿の隣には見事な庭園がある。赤坂に東京別院、札幌市中央区に札幌別院、また福岡県春日市に九州別院があるので、豊川以外の方も初詣を検討されては如何だろうか。
勾配を曲がる1800形特急。名鉄では、有料指定席を有する特別車1000形2輌に、本線特急(豊橋・名鉄名古屋・名鉄岐阜)と常滑線(中部国際空港・常滑・神宮前・名鉄名古屋)では特急料金不要の一般車1200形4輌を加えた編成で特急を運行しており、加えて混雑時には二両編成の1800形を増結して運行している。豊川線への本線からのアクセスは豊橋駅の手前、国府駅にて乗り換えることが出来、初詣の際に参考となれば幸いである。
豊川線であるが、全駅急行停車駅で、諏訪町駅には特急が停車する。しかし、特急停車駅の割には片側島型ホームというのを見られて驚かれるかもしれない。実は意外に知られていないが、1990年代まで、ここは鉄道線ではなく、路面電車と法律上同じ扱いの軌道線で、しかも戦後もしばらくは、文字通り“路面電車”的な路線風景であったという。路面電車である軌道線、かつて名鉄市内線では急行が走ってはいたが、ここ豊川線では軌道線時代も特急が走っていたというのは一つ、驚きではなかろうか。
少し、鉄道へ話が逸れてしまったが、お正月の初詣として豊川稲荷は、豊川稲荷駅というものがあるほどだから、やはり名鉄特急で行くのが一番だろう。350円の特別車券(旧指定席券)を買うと、展望席からの眺望とともにものの一時間で名古屋から到達することが出来る。
HARUNA
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