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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢-ショイグ元国防相の安全保障会議書記としての契約が2030年まで延期

2025-05-30 07:00:12 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ロシアの権力構造についてイギリス国防省の分析を適当に百里基地とかで撮影した写真と共に。

 ショイグ元国防相の安全保障会議書記としての契約が2030年まで延期された、イギリス国防省は5月19日付ウクライナ戦況報告においてロシア上級指導者人事とその概況を発表しました。ショイグ元国防相は2030年の時点で75歳となり、これはロシアの平均寿命である68歳を大きく上回ることとなりますが、健康不安説が根強く残っています。

 5月9日に挙行されたロシアの国家行事、対独戦勝記念日モスクワパレードについて、実際、ショイグ元国防相は欠席しており、これは政治的な理由では無く健康上の理由からの欠席とされています。2025年時点でプーチン大統領も72歳であり、2030年には77歳となりますが、大統領任期は延長可能として憲法を改正しています。この問題は単純ではない。

 ロシア指導部は全体的にロシア平均寿命よりも高齢化しており、この背景には権力基盤の不安定化を防ぐと言う目的が考えられるとイギリス国防省は指摘しています。権力基盤維持には、実力よりも長年の忠誠心と縁故主義という政治人事が求められ、これは権威主義国家に多い、失脚が失職ではなく生命の安否に関わるという身体的安全にかかわるゆえ。

 支持基盤となる者達も、プーチン政権維持は結果的に自身の身体的安全と直結すると共に、政権が継続する限り利益を享受し続けられるという構造が成り立っていて、こうした背景からプーチン政権は、安全の確実化を求めた結果、継続しているという。そしてそれは上級指導者達の老年政治に拍車がかかっているもよう。

 政治人事は結果的に政権と接近し、その結果として多くの利益を享受する縁故者を優先することなる。イギリス国防省はこれらの分析の結果、若手リーダー候補の世代が大きな不満と失望を抱いていると分析しました。また同時に政治の有効性や効率性を著しく損なっているとも分析しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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【榛名備防録】日産追浜工場閉鎖ならば防衛用施設建設の検討を!横須賀基地に隣接,旧海軍追浜飛行場跡地

2025-05-21 07:00:42 | 国際・政治
■日産追浜
 NHKなどで報道されており現在正式決定ではないとしていますが横須賀市が工場閉鎖騒動にゆれている。

 日産追浜工場跡地に防衛用施設を建設できないか。世界的な自動車生産事業の再編を目指す日産自動車は日本国内の複数の自動車工場閉鎖を検討しており、その中の一つに横須賀市内の追浜工場が含まれています。この施設は海上自衛隊横須賀基地に隣接しており、また臨海部にある事から岸壁も有しています。

 新日鉄呉製鉄所廃止後の海上自衛隊呉基地による跡地利用を一例に挙げれば分かる通り、海上自衛隊は現在、潜水艦隊を増強中であるとともに、掃海艇をFFM多機能護衛艦へ置き換える事で必要な岸壁が増大する為、桟橋や岸壁は不足する懸念があり、特に今後、陸上自衛隊輸送艦増強によりこの不足は顕著となるでしょう。

 潜水艦などは新しく船越地区に潜水艦桟橋が完成していますが潜水艦坑道秘匿の観点からは天蓋付桟橋などが理想であり、そのためにはやはり現状の施設は不足しているという実情があります。さらに、護衛艦に無人艇が積まれる時代、殆どの護衛艦がヘリコプターを搭載する今、千葉県の館山航空基地は距離が有り、ちなみ浸水リスクもあります。

 追浜工場はもともと、旧海軍追浜飛行場跡地であることから施設としては横須賀基地と一体運用ができるとかいう以前に、元々が横須賀軍港の施設でした。敷地面積は1707000平方メートル、滑走路跡地は自動車用テストコースとなっていますので、もとにもどすことでヘリコプター飛行場としても機能させる事が可能です。

 3000名近い雇用と年間20万台以上の自動車生産能力を持つ追浜工場、その閉鎖可能性が示唆された事で横須賀市などは大騒ぎとなっていますが、仮に実際に閉鎖される場合は、そのまま放置せず、防衛用施設として活用する道が必要です。追浜工場操業開始は1961年、あの頃より海上自衛隊は遥かに大きくなったのですからね。

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ウクライナ情勢-停戦交渉再開に際しロシア政府は改めて事実上の無条件降伏を要求

2025-05-19 07:01:20 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
ロシアのウクライナへの要求はソ連が第二次大戦後の東欧占領地に対して行った内容とほぼ重なるもよう。

ISWアメリカ戦争研究所が5月11日に発表したところによれば、二国間交渉再開の動きがあるロシアのウクライナ側への要求として、ウクライナ中立案の具体案として事実上の無条件降伏を要求していたことが判明しました。アメリカはロシアとウクライナの仲介をするにあたって現実的な要求にとどめるよう自制を求めています。

ロシアの要求、ウクライナはNATO加盟要求を放棄すると共に外国製兵器を放棄すること、陸軍の兵力は8万5000名までとすること、射程40km以上のミサイルを持たないこと、戦車342両、砲兵システム519両までに兵器を制限すること、外国軍陣の入国を制限し外国製兵器を導入しない中立条約を結ぶこと、こうした要求となっている。

ウクライナに対してはこれらの遵守を確認するために、ロシアを中心としたウクライナの中立遵守のための保証をウクライナ国内に受け容れること、等が含まれているとのこと。これはウォールストリートジャーナルの報道をISWが引用した形ですが、2025年停戦交渉とほぼ同じ内容を要求しているという2022年4月のロシア側要求の概要です。

独立国家に要求するものではありません、特に外国製の兵器については、ロシアさえイラン製無人機や北朝鮮軍兵士と砲弾二依存している中では説得力が無く、この中立ではロシア軍がウクライナを占領する状態となり、中立という単語の悪用としか言わざるを得ず1930年代に日本の満州国に求めていた内容と大差がありません。

ロシアのプーチン大統領は2025年の交渉再開をウクライナを取り巻く安全保障環境を1997年の段階まで戻すことが目的であるとしています。そして、アメリカのトランプ大統領が求める停戦交渉に応じる姿勢を見せつつ、現実的には経済制裁解除への口実として和平協議に応じる姿勢を欺瞞しているといわれても、仕方が有りません。

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ウクライナ情勢-プーチン欺瞞平和攻勢,首脳会談打診に応じたゼレンスキー大統領を無視

2025-05-16 07:01:09 | 国際・政治
■防衛情報ウクライナ戦争
 あの国とまともな外交関係が成り立つのかという不安になってくるところなのですが。

 プーチン大統領のゼレンスキー大統領への首脳会談無条件での実施に応じたゼレンスキー大統領のトルコイスタンブールでの首脳会談について、プーチン大統領は出席を拒否するという意味不明の状況が発生しています。ことの始まりは5月11日、プーチン大統領が5月15日に無条件での停戦交渉の開始をイスタンブールで行うと呼びかけたものでした。

 イスタンブールでの停戦に関する呼びかけはロシア側が一方的に発言したもので、BBC報道によれば11日時点でプーチン大統領はイスタンブールにおいてトルコのエルドアン大統領との首脳会談も予定していると発言しています。これは、ウクライナとの根回しも行わず一方的に発言したものですが、ゼレンスキー大統領は応じる姿勢を示しています。

 ゼレンスキー大統領はトルコのイスタンブールに到着、ちょうど中東歴訪中であるアメリカのトランプ大統領は、イスタンブール訪問の可能性を示唆していましたが、ロシア政府はプーチン大統領の出席はないと一方的に宣言、メジンスキー大統領補佐官を出席させる意向を示しました。そして既にイスタンブールに到着しているとも発表しましたが。

 メジンスキー補佐官は大統領の権限を代行し停戦を決定できる立場にあるのかは疑わしい、ゼレンスキー大統領はロシアにおける決定権は誰にあるのかは知っているとして、プーチン大統領以外との停戦交渉には意味が無いとしています。実際、ロシアは何度も停戦を主張した後攻撃を実施していることが各国の確認可能な情報収集により判明している。

 欺瞞的平和攻勢ではないか、ロシアは偽旗作戦として相手が攻撃を準備したと主張し自国からの先制攻撃を正当化する事例は過去幾度もあり、1945年8月9日の対日参戦さえ1941年7月に日本軍が戦争に着手したという偽旗作戦を実施しています。世界は、ロシアには経済制裁を緩和させ国力を回復しウクライナ全土占領を目指す姿勢の理解すべきでしょう。

 停戦が次の攻撃準備に用いられては意味がありません、このためにNATO加盟国は英仏を中心に停戦が実現した場合は停戦監視団を送る準備を進めています、NATO加盟国への攻撃が行われた場合は北大西洋条約五条措置によりNATO全体が集団的自衛権行使を開始し、航空戦力を駆使しモスクワを一気にたたけるためです。厳しいがこれが現実です。

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【臨時情報-印パ情勢】インド軍-パキスタン東部とカシミール地方をミサイル攻撃,過激派拠点を空爆

2025-05-08 07:01:43 | 国際・政治
■パキスタン報復を示唆
 緊張はさらに一歩厳しい情勢へ向かっています。

 インド国内でのテロ事件を受け、特にそのテロ事件首謀者がパキスタン国内を活動拠点としている事により緊張度を増していた両国の係争地カシミール地方において、懸念されていた事態が発生しました、インド軍がパキスタン領内へ航空攻撃が行われ、パキスタン領内で死者が発生しました、インド政府は攻撃の実施を発表しています。

 現地時間7日1300時過ぎ、インド軍はカシミール地方のイスラム過激派組織拠点9カ所に対してミサイル攻撃を実施し、これら過激派組織活動拠点はカシミール地方のパキスタン実効支配地域に在ったものだとしています。インド外務省のミスリ外務次官は、ミサイル攻撃は次の攻撃が差し迫っていたため、と攻撃を正当化しましたが。

 パキスタン軍が日本時間0046時までに発表したところによれば、この攻撃でこれまでに26名が死亡し46名がけがをしたという。そして攻撃が行われたのはカシミール地方にくわえてパキスタン東部のパンジャーブ州など6カ所に上ったとしています。パキスタン国内報道ではパキスタン軍がインド軍戦闘機を撃墜したという報道もある。

 パキスタンのシャリフ首相は声明を発表し、インド政府が押し付けた戦争行為に対して報復を取る権利がある、こう発言しました。両国は過去に幾度も小規模な衝突を引き起こしていますが、今回の過激派拠点とする場所への攻撃は人口密集地域に重なっており、インドとパキスタンの分割、イギリス当地以来重ねている両国民の対立も背景に。

 核戦争に発展する導火線上で起きている。今回の衝突で懸念すべきは、パキスタンとインドは双方ともに核兵器を保有している核保有国であり、偶発的な衝突が拡大した場合は、核兵器の使用が選択肢に登る懸念があるという事です。パキスタン側は戦闘機撃墜を発表していますが、実際にどういった報復を行うのかが、大きな関心事といえます。

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ウクライナ情勢-ロシア軍はポクロフスク近郊高速道路E50号線へ攻勢強化

2025-05-07 07:01:43 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
対独戦勝記念日のモスクワ軍事パレード予行が始っているようですが。

ロシア軍はポクロフスク近郊の高速道路E50号線への攻勢を強めている、ISWアメリカ戦争研究所は5月4日に発表したウクライナ戦況報告において、ポクロフスクとパブロフラドに抜ける道路網をロシア軍砲兵火力の制圧圏内に収める事を機として前進を続けているとのことで、この攻撃の主力を担っているのがオートバイとのこと。

オートバイを重視している、これはウクライナ軍のホルティツイア軍集団報道官であるトレフボフ大佐の発言でも示されていて、ロシア軍は2025年に入り、戦車や装甲車等の重装備を使用する頻度を下げているものの、攻撃前進に際して10両から100両のオートバイを同時に使用し機動力を突破能力に当てているとしています。

突撃に際しては集団の前方と後方に電子戦車両を配置し、その周りにオートバイを集中させるという運用を行っているとのこと。これにより戦域全体ではトレツク西方ではウクライナ軍が反撃に成功したものの、ロシア軍はトレツク南西地域、クピャンスク南西地域において前進したとの事、状況は一進一退という。

対独戦勝記念日が近づく中、ロシア国営テレビはプーチン大統領ドキュメンタリーを放映し、ウクライナ全土の事実上の占領は十分可能であると国民を激励する内容になっていたとのこと。これを見る限り、ロシアはウクライナ全土の非武装化やロシアを支持する政権以外を認めないという施策を依然としてけんじしている事が分ります。

ロシア国内の世論情勢をこの番組から見る通り、ロシア国内の世論は依然として不明であるものの、ロシア政府には講和を急ぐ必要はなく、大量の犠牲が出ているものの動員令を発令していない為、志願した契約兵や職業軍人だけの戦争という状況が続いているもようで、これを支持させる宣伝工作を続けている事が分るでしょう。

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【榛名備防録】大きな転換点(3)ポストアメリカの時代と多極化時代というものが渡来

2025-05-01 20:19:23 | 国際・政治
■多極化時代
 アメリカのグローバリゼーションへの回帰は難しくなりつつあるというのは根本的な政策の軌道修正が出来ない第二次トランプ政権の構造的なむずかしさがあるゆえでしょうが。

 アメリカが定点では世界最強では無かったという一方で、では西ドイツ軍が機甲師団を中東地域に派遣する場合はどれだけ時間を要するか、という視点、パワープロジェクション能力を比較するようになりますと、NATO域外派遣禁止という西ドイツ基本法の成約はありますので単純比較が無意味であることは前置きしたうえで、根本的に違いがあります。

 パワープロジェクション能力の軍事機構全体に占める位置づけが異なる、という事に気づかされるでしょう。ユニラテラリズムは、パワープロジェクション能力を求められた冷戦時代の国際政治と安全保障基盤により自然形成され、これは同時に、西半球は難攻不落、この原則論を維持する為に、アメリカが選択した、という視座がそもそもあるのだ。

 アメリカの選択があった、世界から求められてのものだけでは必ずしもない、という背景があったことに留意する必要がありますが。しかし、ユニラテラリズムというものをアメリカ自身が忌避した訳ではありません、最大の機会は2005年の米軍再編、日本では沖縄基地負担だけ強調された世界規模の米軍再編が行われた際の一例を見れば明白です。

 2005年、ブッシュ政権時代に提唱されたラムズフェルドドクトリンでは、それまでの在欧米軍や在韓米軍と在日米軍や中東駐留部隊を中心に、紛争の発生しそうな地域に大量の米軍部隊を張り付け、紛争を抑止するという構造がありましたが、ラムズフェルドドクトリンの時代には、冷戦終結後、従来型の戦力衝突可能性の低下が反映された。

 巨大な戦力をぶつけある全面戦争の蓋然性は低下したという理解のもと、アメリカ軍は若干数の世界における戦略拠点を維持したうえで、大量の兵力を世界に張り付ける体制を脱却し、戦略拠点を起点にアメリカ本土から緊急展開を行うという体制に転換を志した構図です。これはきゅうに浮上した朝三暮四の施策ではなく、長期的視野に戻づく。

 ブッシュ政権のひとつ前、クリントン政権時代に提唱されたフロムザシードクトリン、海洋からの安全保障アプローチという新戦略に対応させたものではありますが、同時に、世界規模のパワープロジェクション能力維持によるユニラテラリズム維持という決意を示した事にもほかなりません。そしてこの結果、実際日本以外の改編は凄かった。

 在欧米軍では2個重師団からなる第5軍団の整理と、在独米軍ラムシュタイン基地、在英米軍のレイクンヒース空軍基地やミルデンホール基地及びフェアフォード基地、在韓米軍では平澤基地と烏山基地といった基地群、インド洋ではイギリスから租借しているディエゴガルシア基地などに集約することとなりました。

 日本では首都圏の横田基地と相模原総合補給所に横浜と横須賀基地と艦載機を運用する岩国基地、沖縄の嘉手納基地とキャンプシュワブを中心とした基地とともに佐世保の揚陸艦部隊などへ集約されています。もっとも、米軍再編に際して在日米軍は脅威から遠い立地にあるために後方拠点としてまた司令部機能など強化された部分はあるのですが。

 ポストアメリカの時代、多極化時代というものが渡来しつつあるのは、ユニラテラリズムの構成要素が実のところ複合的な要素であることを理解しておくことでその可能性は見出すことができました。軍事力だけに論理展開を偏重させてきましたが、言うまでもなく、アメリカのユニラテラリズムを説明する際には、基軸通貨ドル、という存在があります。

 基軸通貨ドル、恩恵は計り知れないものですが維持する事での負担も大きいものでしたが。貨幣として見た場合は、既にニクソン政権時代に兌換通貨としての機能を終えているドルは、世界に流通される事で決済通貨として、また多国間投資や多国籍企業国際分業など、ユニラテラリズムという名の通りのグローバルな世界における経済活動を行う際に。

 また銀行間の決済手段として、さらに各国の準備通貨として唯一の機能を有しており、これはユーロは勿論、日本円も人民元も置き換え得るものではありません。反論として人民元取引の増大を挙げる方は多いことでしょうが、あくまで、人民元の取引は中国とその投資先という構図であり、ユーロダラー市場のような、強さの背景を生んでいます。

 ユーロダラー市場、この表現はユーロとは浮遊の意味を示すものの欧州基軸通貨とカタカナ表示が重なるので誤解を招きやすく、オフショアドル市場と訳すべきようにも考えるものなのですけれども、ドルそのものが連邦準備銀行などの影響から独立して機能しています。こうした、管理できない市場での自由な流通は、恐らく中国政府には不可能だ。

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【臨時情報】カシミール地方テロ事件,インド政府はパキスタン関与を主張-緊迫度増す核保有国同士

2025-04-25 07:01:58 | 国際・政治
■印パ対立再燃
 写真はかつて佐世保基地を訪問したインド艦隊の様子なのですが平和な当時とはことなる緊張感が。

 インドパキスタン情勢が突然緊迫度を増しました、両国は三度に渡る印パ戦争を挟み高度な緊張状態にあり、また双方が核兵器を保有していることから、世界で最も核戦争の懸念が高まっている地域でもあります。この発端となったのは4月22日に両国係争地域であるカシミール地方のインド実効支配地域で発生しましたテロ事件でした。

 カシミール地方のインド実効支配地域において22日、観光客を標的とした無差別銃撃テロ事件が発生、複数の武装したテロリストによる銃撃で観光客26名が殺害される事態となりました。この事件について、パキスタン国内のイスラム過激派が犯行声明を出しています、ただ、インド政府は警察による捜査を進めていましたが。

 テロ攻撃にパキスタン政府が関与した事が明らかになった、23日にインド外務省のミスリ次官が記者会見においてこう発言し、インド政府はインド国内のパキスタン公館から駐在武官の退去を命じた事をあきらかにしました。またBBCによればビザを保持するインド在留のパキスタン国民一部に対しても48時間以内の退去を求めています。

 パキスタン政府は国家安全保障委員会を招集、パキスタンのダール外相が公式SNSにおいて発表したところによれば、パキスタンのシャリフ首相は国家安全保障委員会の招集を決定、また、パキスタン政府は事件発生直後の段階で外務省からの事件へのお見舞いなど、関与を否定しており、今後、両国間での深刻な対立等が懸念されるところです。

 カシミール地方では、過去に幾度も砲撃戦などが発生しています、その都度、核戦争の懸念や印パ戦争再燃などの危機が懸念されていますが、幸い全面戦争などには至っていません、一方で、両国は現在核保有国であり、弾道ミサイルによる運搬手段も確保しているため、両国の対立は世界の安全保障環境に対して深刻なリスクとなりかねないのです。

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【榛名備防録】大きな転換点(2)ユニラテラリズムとアメリカを結び付ける要素-地域紛争からの全面戦争への発展危機

2025-04-24 20:18:11 | 国際・政治
■ユニラテラリズム
 アメリカの安全保障戦略は核兵器が開発される前までの西半球は難攻不落という前提とその後の世界戦略との間で大きな転換が有りました。

 西半球、例外といえば1962年キューバ危機のようなアメリカ本土へ核攻撃の蓋然性が高まった時代が挙げられるかもしれませんが、限定戦争から全面戦争に至る事態の段階的緊迫化の始点となるべき限定戦争は西半球において起こるものではなく、それはあくまで、NATO正面、朝鮮半島、北部日本地域、アメリカ本土から隔たれていた地域でした。

 ユニラテラリズムとアメリカを結び付ける要素はまさにこの点で、アメリカはこうした地域への武力紛争ぼっ発の場合に際し、限定戦争として鎮静化させるための能力が求められていた、それもグローバルな規模で、ということです。それはロジスティクスの量的な問題の格差、正面戦力よりも兵站能力が偏重したという不思議な装備体系を生んでいる。

 地域紛争からの全面戦争への発展危機、この問題は一例として1956年スエズ危機、第二次中東戦争に際しスエズ運河を巡りシナイ半島に侵攻した英仏空挺部隊へ、ソ連が友邦エジプトの要請を受け核攻撃を真剣に検討した事が挙げられるでしょう。シナイ半島が核攻撃を受けた際に、英仏が保有する核戦力の使用を思いとどまるならばいいのです。

 核攻撃を受けても報復しなければ問題は拡大しないでしょうが、現実的にはこれは考えにくく、NATO正面での緊張に直結します。これが一例として地域紛争の武力紛争化との拡大が全面核戦争に発展する懸念を具現化した一例といえる。これ以降、紛争拡大防止にアメリカが関与する姿勢を示します。この視座をもう少し紐解きますと。

 大量報復ドクトリンと段階的アプローチ戦略への転換というものが挙げられます。大量報復ドクトリンは冷戦初期のアイゼンハワー政権時代に示された、米ソの軍事対立は不可避という念頭に、全面戦争に発展する緒戦の段階で先手を打って大量の戦略爆撃機とICBM大陸間弾道弾により圧倒的な核戦力により相手を殲滅するという理念で。

 大量報復ドクトリンの概念はつまり、開戦前提で待ち伏せるような戦略ですが、ケネディ政権時代に入るとこの戦略は全面核戦争不可避という理念に他ならないことから極力避け、限定戦争に対しては限定戦争を拡大させない方式での段階的に事態拡大を阻止する体制に移行し、全面核戦争は最後の手段であるという認識への転換です。

 これを受け、ケネディ政権時代は特殊作戦部隊の創設と強化、続くカーター政権時代には緊急展開部隊という軽量装備でまとめた、軽すぎると揶揄された、部隊への転換を行ったわけです。これはヴェトナム戦争、パナマ侵攻、グレナダ侵攻、地域紛争へ積極関与する姿勢に転換しています。スエズ危機に介入しなかった情勢とは対照的といえる。

 米軍といえば緊急展開能力、という視座の根底はこの部分にあり、言い換えれば1950年朝鮮戦争などを一例とした場合、アメリカ軍の緊急展開はそれほど早くありませんでした、日本本土駐屯の第24歩兵師団展開にも時間を要していましたのが端的な事例といえるでしょう。こうした能力は、リフォージャー演習などで常設的に維持されてゆく。

 リフォージャー演習、冷戦時代に毎年行われたアメリカ本土から欧州への緊急展開訓練など、定期的な能力構築の点検と実働部隊の演練により強化され、そのまま冷戦終結を迎えました。同様の演習はフォールイーグルなどアジア地域においても整備されていますし、逆に在日米軍に正面戦力が少ないのは展開兵力のハブとなっている故ともいえる。

 ユニラテラリズムの背景にはこの緊急展開能力が裏打ちされた。つまり、グローバルパワープロジェクション能力を高い水準において維持する必要に見舞われ、適合した国防戦略を構築していた、という点が挙げられるでしょう。この視座の背景には、西半球は難攻不落、こういう理念を唯一脅かす要素は全面核戦争の脅威でありました。

 全面核戦争、地域紛争が拡大することで手の付けられない状況となる前に、全面戦争が勃発することを回避する手段を整備した結果、二極主義の片方にあたるソビエト連邦が崩壊した事で、一方的にグローバルパワープロジェクション能力を維持したこととなりました。この点は、例えば、西ドイツ機甲師団とアメリカ機甲師団を比較した場合は。

 2020年代のやせ細ったドイツ軍機甲師団は比較対象とならないのですが、冷戦末期の1985年で比較した場合には、アメリカ陸軍はM-1戦車やM-2装甲戦闘車を整備する前のM-60A3戦車とM-113装甲車という編成であったことは上げられますが、戦車部隊の規模や損耗に関する考え方で必ずしも一個機甲師団だけを単純比較した場合、最強ではない。

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【榛名備防録】大きな転換点(1)ユニラテラリズムの牽引者アメリカと冷戦の勝者に関する認識の誤認

2025-04-24 07:01:05 | 国際・政治
■榛名備防録-大きな転換点
gooブログサービスも年内に終了するという事ですのでそろそろ北大路機関らしく榛名備防録を掲載してゆきます。

大きな転換点。日本の安全保障をめぐる問題は大きく転換点を乗り越えつつあります。2025年の時点で大きな転換点、こう表現しますと、安易に米中貿易戦争やアメリカ第二次トランプ政権、ロシアウクライナ戦争の展開や中東和平とイスラエルガザ戦争、こうした時事的な命題が思い浮かべられるかもしれませんが同様の題材は十年前に。

2015年に当て嵌めれば、東日本大震災と日本GDPの世界第三位移行という問題やアメリカオバマ政権とアジア太平洋からインド太平洋という新しい海洋秩序、という視点が浮かんだのかもしれません、更に十年前の2005年に当て嵌めればアメリカとユニラテラリズム即ち単極主義の時代やテロとの戦いという安全保障上の問題を筆頭として。

イラク戦争という問題が当て嵌まったのかもしれません。こうした歴史を俯瞰した上で大きな転換点は、単極主義時代から多極化時代に入った、という事でしょうか。多極化時代、2005年の時点で単極主義を掲げていた為に不可思議と思われるかもしれませんが、この2005年から2025年の間にレジームチェンジが起こったとも、言う訳でなく。

レジームシフトが起こったとも、規範を構成する要素が抜本から転換したとも断言はしません、何れもユニラテラリズムの構成要素は様々なものであり、ユニラテラリズムを構成していた要素こそが、多国籍企業、人権意識、国連、国家、社会集団、宗教、様様なものにより成り立っており、いわば単極化した事で微細が肥大化したということで。

ユニラテラリズムという様式が一旦形成されたことにより、その構成要素は様々なシナジー効果を及ぼすようになり、そのシナジー効果こそが多極化時代を構成する要素であった、ということです。それは一括して一言で表すには複雑すぎる要素を、様々な諸制度の共通点を探すことで一見単一化し、恰も合意があったように理解した故ともいえる。

ユニラテラリズムの牽引者は、アメリカです、それは結果的に第二次世界大戦後に形成された二極主義時代、社会主義と自由主義という二つの二極時代にあって、社会主義の構造的な限界、それは二極主義の一方を牽引したソビエト連邦の社会主義が、ソ連型社会主義という、今日的に言う権威主義的構造を生んだことで構造疲労を招きました。

ソビエト連邦の社会柚木体制は、1990年代に提唱された理論で云うところの、人間の安全保障、こうした概念の萌芽を前に自己実現を目指す個人の要求に国家制度が応えられなくなったという結果の帰結、ソ連崩壊が生じたことで二極主義は単極化する事となりました。ただ、この時点で自由主義の勝利であるのか、と踏み込んで考える必要があった。

自由主義というよりもアメリカの勝利であるのかという視座の解析がもう少し必要であったのかもしれません。しかし、冷戦は勝利の余韻よりも全面核戦争で人類が滅ぶことはなくなりそうだという安ど感から来る開放感が大きかったというべきでしょうか、他方で、単極主義という時代を自由主義の勝利という冷戦の結果に直接結びつけるならば。

自由主義諸国に在って最も人口が多くまた経済力が大きな国はアメリカであったということも事実であり、更にアメリカは東西冷戦における自由主義陣営の最大の生産力と経済力を持っていた国家であり、同時に、元々のアメリカの視座、“西半球は難攻不落”という概念が、アメリカの存在をユニラテラリズムの代名詞的存在に飛躍させたという。

これは同時にアメリカの勝利であったと、解釈の齟齬を生む土壌を培ったといえるでしょう。パクスブリタニカとパクスアメリカーナ、昨今、パクスアメリカーナという単語は使われなくなったといいますか、使いにくくなったともいわれ、その背景にはアメリカが無くとも世界大戦は起きないのではないかという、視座も生まれたところです。

戦争が起きていないからこその視座があるようにも思える一方、大国が国際公序を牽引することにより世界大戦が起きないという理念がある一方、その語源となったパクスロマーナとともに、全て語彙はにているもののその実は内容が異なるという単純な事実を外郭だけみて、いやおなじものなのだ、と誤認しているのではないかと思う。

西半球は難攻不落、これはアメリカ独立後に国是となった、モンロードクトリン、対外中立主義の背景というものでしたが、米英戦争では例えば、ホワイトハウスが占拠され焼き払われるなどの事態こそありましたが、総じてその後のアメリカ安全保障政策において、西半球に直接着上陸の懸念がある時代はありませんでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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