アールグレイ日和

春畑 茜(短歌人+里俳句会)のつれづれ。
降っても晴れても、そこにサッカーはある。

『東京遊泳』(野口恵子歌集)を読む

2006年02月07日 15時31分28秒 | 歌集・句集を読む
『東京遊泳』は野口恵子さん(「開放区」所属)の第一歌集。
2005年12月19日、ながらみ書房発行。300首がおさめられている。


・始まりは東西南北を見通せる銀座四丁目交差点から

・光りごけ群生している森にいる晴海通りを湿らす明り

・東京の夜の雲にはうっすらと魚群の影が映されている

・群青の空の裂け目に波が立ち巨大な都市が海に沈みぬ

・東京を魚眼レンズで覗いたら未来が見えるわたしはいない


歌集のタイトルにもなった「東京遊泳」より五首ひく。
この歌集中でいちばん読み応えがあったのが、この「東京遊泳」の章だった。
現実の東京と幻影が交錯し、近未来的な危うさがうかびあがる。
スケールも大きく、一首一首の孕む空間は決して狭くない。
また、銀座四丁目や晴海通りという固有名詞に、動かし難い存在感があると思う。



あとがきによると、野口恵子さんはこの歌集を編む三年前から歌を作り出したという。
「そして短歌のことを多く学んでしまう前に第一歌集を出したいと思っていた」という言葉が、とてもみずみずしい。
これから先、野口さんの歌はどのように変化していくのか、たのしみにしたいと思う。



・暗雲に呑まれる世界で君と聞くダリア花咲く傘の雨音

・涼やかな鉄琴音を響かせて日比谷通りに雨が弾ける


この2首のような、「雨音の歌」の魅力も忘れがたい。
多くの方々に読んでいただけたらと思う。







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