アールグレイ日和

春畑 茜(短歌人+里俳句会)のつれづれ。
降っても晴れても、そこにサッカーはある。

『翌朝回路』宮崎斗士句集を読む

2006年02月27日 15時29分03秒 | 歌集・句集を読む
『翌朝回路』は宮崎斗士さん(俳人)の第一句集。
短歌人の宇田川寛之さんがはじめられた六花書林から、2005年12月2日に発行された。
全体がアイボリーで、そこに黒い文字、そしてちいさな黒い鍵の絵の、シンプルな表紙があたたかい。

あとがきの最後に「何とか一冊出来上がりました。ひとつ可愛がってやってください。」という宮崎さんの言葉があって、共感を覚えた。
句集でも歌集でも、出す時には何かしら「子供を世の中に送り出すような」、そんな気持ちになるものだ。

『翌朝回路』の構成は春からはじまり、夏、秋、冬、また春へとつづく。
春ではじまり、また春で終る、そんなところもこの句集の良質なあかるさであろうか。


・揚雲雀あっという間の地図である
・春昼や福耳姉妹のいるような
・梅散ってしまって金物屋にいる
・ハムエッグのあかしろきいろ休暇果つ
・ピロシキの最後のひとつ冬景色

それぞれがあたたい色彩のスケッチのようであり、読後になんとも言えないぬくもりがのこる。ほどほどのさびしさの味も忘れ難い。


・日本語はふわふわであり桜鯛
・音読のような朝ですかたつむり
・「一昨日」と答えるだけの海鼠かな

このような音感に訴えてくる句も多い。
また、桜鯛もかたつむりも海鼠も、まるで童話のなかに生きているような、そんな存在感があって、好ましく思われた。


・春の夜鱗描き続けてひとり
・千代紙は売り切れました日向ぼこ

春の夜を描かれてゆく鱗の美しさ、そしてひとり描き続けている孤独。
また、冬の日差しあたたかさと、売り切れてしまった千代紙。
これらの句の、良質な童話のような世界が、私の中ではとくに印象深かった。

この句集が多くの方々に読まれ、可愛がってもらえますように。





最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (うだがわひろゆき)
2006-02-28 11:20:50
『翌朝回路』を取り上げていただきありがとうございます。

宮崎さんとは十数年の付き合いでして…。

五島高資さん、高山れおなさん、守谷茂泰さん、正岡豊さんなど16人の合同句集に一緒に参加したことがあったり…。

「もののふの会」の初期のメンバーでもありました。

著者もきっと喜ぶと思います。

まずは御礼まで。

返信する
こんにちは (はるはたあかね)
2006-02-28 23:02:22
うだがわさん、こんにちは(^^)

『翌朝回路』とてもよい本ですね。こちらこそありがとうございます。

これからも、どうぞよい本作りにがんばってください。

返信する
はじめまして (宮崎斗士)
2006-03-07 00:14:21
春畑茜様。

この度は句集「翌朝回路」に関しましての、

身に余るお言葉、ご鑑賞をどうもありがとうございました。

とても嬉しく、はなはだ恐縮いたしております。

まだまだ句集などおこがましいのでは・・と考えつつも、

「えいやっ」と出してしまった、という感じです。

宇田川君にもずいぶんと面倒をかけました。



暗中模索、試行錯誤の俳句生活ではありますが、

これからも自分なりに頑張っていきたいと思います。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
返信する
はじめまして (はるはたあかね)
2006-03-07 10:09:35
宮崎斗士さま、はじめまして(^^)

こちらこそたのしく読ませていただきました。ありがとうございました。

益々のご活躍をお祈りしています。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。