1988年7月、テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」枠で放映された、原作=横溝正史/脚本=佐治 乾/監督=野村 孝による単発2時間ドラマ。
我らが殿下=小野寺昭 主演による「名探偵・金田一耕助」シリーズの3作目で、1作目が『真珠郎』、2作目が『仮面舞踏会』、4作目が『夜歩く』と、ほとんど映画化されてないマイナーな原作を選んでるのが本シリーズの特長。
ただし『三つ首塔』は1972年、1977年、1993年にもTVドラマ化はされており、’77年版(連ドラ)と’93年版(単発)は共に古谷一行さんが金田一探偵を演じてます。
原作が比較的マイナーなのは金田一の出番が少ないせいもあり、’72年版ドラマには金田一が登場しないとか。
それを如何にして「金田一モノ」として成立させるかが腕の見せどころで、この土曜ワイド劇場版『三つ首塔』はキャスティング、すなわち金田一耕助=七曲署の殿下であることが最大限に活かされてます。
まず、原作に準じた袴姿が殿下の場合、純白カラーという爽やかさ。本来メンズ向けの娯楽小説だった金田一モノを、女性たちにも楽しんでもらおうっていう明確な意図を感じます。
そもそも殿下は『太陽にほえろ!』で女性人気ナンバーワンを誇った人。頭を掻くたびフケを撒き散らす金田一役には本来向かない貴公子キャラなんです。
そしてメインゲストがこの人。同じ七曲署の「山さん」こと、露口 茂さんですよ!
山さんはメンズにも人気があるけど、全身がエロで出来てる女優の太地喜和子さんが「理想の男性」として名前を挙げたほどの超セクシーガイでもある。
『太陽にほえろ!』を観て育った世代がそろそろ映像業界に入り始めた時期、っていう側面もあるにせよ、殿下+山さんの組み合わせは特に女性ファンたちの琴線に触れたはず。
いきなりネタバレになるけど、山さん扮する国文学者=上杉誠也が連続殺人事件の真犯人で、’72年版では仲谷昇さん、’77年版では佐分利信さんが演じておられます。(’93年版には未登場)
さらに’72年版で島田陽子さん、’77年版で真野響子さん、’93年版で安永亜衣さんが演じられたヒロイン=音禰(おとね)役には、ちょうど本作が放映された’88年から1年間『探偵!ナイトスクープ』の初代秘書役を務められた、松原千明さん。
お馴染みキャラの等々力警部役には、若けりゃ若いほど近藤春菜に見えちゃう角野卓造さん。
山さんの顧問弁護士役には西部署から「山村くぅ〜ん!」とハイトーンボイスで駆けつけた二宮係長こと、庄司永建さん。
おまけに事件の鍵を握る謎の青年役には、私鉄沿線の97分署から駆けつけた本城刑事こと、古尾谷雅人さん。
偶然にせよ必然にせよ、とにかくレビューしないワケにいかないメンツが揃ってるワケです。
で、冒頭シーンで山さんが殿下を自宅に招き、姪っ子で養女の千明さんを「嫁にどうだい?」と切り出したもんだから、大いに照れちゃう殿下。
ヒロインと金田一にほのかなロマンスが生まれるのも殿下シリーズの特長で、その辺りにも女性視聴者への配慮を感じます。
が、そこは横溝正史原作ですから、ほのぼのした場面はここまで。千明さんの遠縁にあたる資産家が、数千億円にのぼる遺産の相続人に彼女を指名したもんだから、血で血を洗う争奪戦が勃発!
遺産を狙うライバルたちを高林由紀子さん、水原ゆう紀さん、そしてボインぼよよ〜ん!と武田久美子さんが演じておられます。
山さんに何不自由なく育てられた千明さんは遺産なんか欲しくないのに、身の周りで次々と人が殺されるわ、警察には容疑者扱いされるわ、古尾谷雅人には再三レイプされるわで、踏まれたり蹴られたり犯されたり。
ただこの、清楚で儚げな松原千明さんの苦悶顔、あるいは困惑顔が、我々の奥底にあるSっ気を絶妙に刺激してくれて本当に素晴らしい!
ああそうさ、オレは変態さ。なにが悪いっ!?💢
けど変態はオレだけじゃなかったようで、松原千明さんは次作(シリーズ第4弾)の『夜歩く女』でも再びヒロイン役に起用されてます。
それはともかく殿下は気づいてしまう。あの山さんも変態の1人だったことに!
千明さんの周りで起こった連続殺人の犯人は、彼女を護りたい一心で……というより手放したくない一心で暴走した、我らが山さんだった!
そう、山さんは姪っ子で養女の千明さんを、ひとりの異性として愛しちゃった。
ひとつ屋根の下で一緒に暮らしながら、何年も何年もチョメチョメしたくてチョメチョメしたくてチョメチョメしたくて悶々としてたワケです。山さんが悶々とチョメチョメ。姪っ子とチョメチョメ。養女とチョメチョメ。
すべての元凶となった3人の男の首が並ぶ供養塔、すなわち三つ首塔についての説明は面倒だから(と言うかよく解らんから)省略しますが、そこで山さんは武田久美子も殺すつもりだった。
けど、その寝顔が千明さんとダブってどうしても殺せなかった……っていう甘さは横溝正史らしくなく、ちょっと蛇足に感じました。これはたぶん、山さん=露口茂さんのご要望により付け足された場面だろうと推察します。
見るからに聡明で、人生の成功者だった男を狂わせてしまった、老いらくの恋。そんなあまりに人間くさい犯人像にこそ惹かれて、露口さんは出演オファーを引き受けられたんでしょう。(ただの友情出演とは思えない)
最後は例によって犯人の自害(今回は三つ首塔と共に焼死)で幕を閉じますが、それじゃ後味悪いので千明さんと古尾谷雅人の結婚がエピローグで描かれます。
この古尾谷さんもまた、実は千明さんを護るために色々動いてたらしいけど、だったらレイプなどせず最初からそう言えよ!って話だし、山さんの恋とネタが被っとるやん!とも思う。
原作から大きく改変されてるのかも知れないけど、金田一シリーズの中で『三つ首塔』がマイナーなのは、そのへんにも理由がありそうな気がします。
まあしかし、ストーリーは正直どうでもいい。とにかく殿下と山さんの再共演をレビューしたかっただけで、正和さんや健さんはその前フリに過ぎません。
あと、ナイトスクープ初代秘書=松原千明さんのセクシーショットと。(ただし3枚しか見つからず、不足分は武田久美子さんにカバーして頂きます)
むしろ、これだけは映画としてリメイクされてない、ってのが不思議です…というか、まぁ、単にミステリとしてはイマイチ、ってだけですが。
同じように金田一の出番が少なくても『八つ墓村』は面白いのに、『三つ首塔』は話が複雑すぎるし、コレと言った売りが見当たらないですよね。山さんが出てなきゃ途中で観るのをやめただろうと思います。
しかも主人公がアタマが悪い(笑)。
八つ墓村の主人公とは雲泥の差ですね。
まさに「ドSイケメン」に虐待されつつ愛されたい、昨今の少女漫画ヒロインにも受け継がれてる白痴ぶりですね。
いや、男が女に優しくなり過ぎた(草食化した)せいで少子化が進んでるとすれば、実はその白痴ぶりこそ男女の本来あるべき姿なのかも?
なるほど、と。
結果、今だと男女共にある意味「偏差値が上がっちゃって」。
子供を作るのがリスク以外にならなくなった、ってのが一因でしょうねぇ。
「考えすぎ」が少子化の一因、ってのはその通りだ、と思います。
バース・コントロールもリスクコントロールの1つになっちゃった。
余談だけど、「フランスを見習え」とか言っても、実際フランスで増えてるのは「移民であるイスラム系の出生率だ」って話もあって、あっちの国もそんなに出生率回復は上手く行ってない、らしいです。
知らんけど。