ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

「夢から覚めて泣いた話」

2022-03-12 00:20:08 | 日記

東日本大震災から11年と聞いて私が思ったのは、あの時、親父はまだ元気だったしボケてなかったよなあってこと。

もちろん震災についてあらためて考えたりもするけど、大きな災害はもはや毎年起こってるし、悲惨な事故、理不尽な犯罪、疫病、戦争……いちいち心を痛めてたらキリが無い。身がもたない。

この11年で何が一番変わったかと言えば、私にとっては父なんですよね。母は11年前からすでにボケ始めてたけど、進行がとても緩やかなんであまり変わった感じがしない。

それに対して父は、頭はしっかりしてたし身体も元気で、毎日スーパーまで歩いて買い物に行ったり庭仕事したり大工仕事したり……それら全て、ここ3〜4年で出来なくなっちゃった。まさに坂道を転がり落ちるような感じで。もう96歳だから生きてるだけで奇跡なんだけど……

私が今そんなことを考えるのは、ちょっと前に父が夢に出て来たからなんですよね。まだ頭がしっかりしてて身体も元気な、ちょうど11年ぐらい前の父が。目覚めた時、もう泣けて泣けて……



私自身は、この11年の間に結婚と離婚をしてるんだけどw、あっという間に別れたから実感が無いし、根本的にはなんにも変わってない。その頃に書いてたブログは閉鎖しちゃったけど、書いてる内容は今も全然変わってないw まあ身体は確実に衰えてるけど、親父に比べればね……

そう言えば勤め先も11年前と変わってない! それまで5年以上続いた試しが無かったのに! まあ、そりゃそうですよね。この歳になって自ら職場を変えるようなエネルギーは、もう沸きません。

エネルギーと言えば、離婚してからエッチなこともしてないか…… 性欲は変わってないと思うけど、行動に移す気力がもう沸かない。めんどくさい。なんの話や。



しかしそれにしても、11年前はしょっちゅう「(世の中は) 破滅です」ってブログに書いてたのに、今はもう怖くて書けません。

なんだかんだ言っても自分が生きてる間は大丈夫やろって思ってたのに、ここ数年でえらい加速してるような気が…… まるで親父が急速に衰えたのとシンクロしてるみたいで……

あかん。考えると沼に嵌っちゃう。なるようにしかならん。グッバイ!おっぱい!


 

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『誇りの報酬』#37 (再)

2022-03-09 22:00:13 | 刑事ドラマ'80年代

’80年代アイドル特集第8弾は、桂木文さん! '78年のドラマ『ムー一族』で女優デビュー、'80年の『翔んだカップル』連ドラ版のヒロイン役で注目され、翌'81年にいきなりヌード写真集を発表して世間を驚かせ、我々を悦ばせてくれました。

'90年代末まで数々の作品に出演され、刑事ドラマは本作のほか『刑事貴族』『刑事貴族3』『さすらい刑事 旅情編』『風の刑事・東京発!』等にゲスト出演。ヌードグラビアは20歳の頃に撮られたもので、ファースト写真集は私も買いました。その節は大変お世話になりましたw



なお、2クール放映を予定してた『誇りの報酬』は好評につき4クールまで延長。第24話で退職した真山秘書(篠ひろ子)に代わり、第25話から結城 緑(伊藤 蘭)が捜査一課に着任し、最終回まで活躍することになります。

課長室からほとんど出なかった真山さんとは対照的に、バリバリ現場に出て男勝り(死語?)の活躍を見せる結城刑事の名字は、恐らく『大追跡』(’78) の結城佳代子(長谷直美)から受け継いだものと思われます。



☆第37話『天草灘に落日を追え』

(1986.6.22.OA/脚本=長野 洋/監督=大洲 齊)

萩原刑事(根津甚八)が休暇を取り、別れた妻との息子である修一を連れて熊本一周旅行へと出掛けます。

もちろん、どこへ行こうと事件が追いかけて来るのが、昭和ドラマにおける刑事さんの宿命。今回もまた、萩原に恨みを持つ犯罪者が絶妙なタイミングで刑期を終え、出所しちゃいました。

誰が演じてるかと言えば、やっぱりこの男ですw ↓



これだけ各番組から頻繁に呼ばれるってことは、きっと素顔はイイ人なんでしょうw

5年前に強盗傷害事件を起こした片桐竜次は、萩原&芹沢(中村雅俊)コンビに追われて車で逃走、飛び出して来た通行人をはねそうになり、萩原がとっさにマグナムでタイヤを吹き飛ばし、強引に彼の車を止めた。その弾みで車は横転し、同乗してた妻子が死んでしまった。

やむ無き処置だったとは言え、片桐竜次にとって萩原は愛する妻子の命を奪った仇。その萩原が息子を連れて九州旅行へ出掛けたと知って(どうやって知った!?)、竜次が放っておく筈がありません。

で、彼が萩原を追って九州へ向かったことを、これまた恐るべき捜査力で察知した芹沢も、九州へ飛びます。



かくして熊本・天草を舞台に、萩原刑事VS片桐竜次の追いかけ合いと決死の対決が描かれます。



もちろん片桐竜次ですから、義妹の真弓(桂木 文)を使って修一を人質に取るなど卑劣な手段に出ますが……



後から駆けつけた結城刑事に真弓を説得され、最終的には萩原からフルボッコの刑を食らい、あえなく撃沈。



こういう地方ロケ編にありがちな事ですが、ストーリーがシンプルなのは良いにしてもドラマが希薄で、どうにもレビューには向かない内容です。

前述のように事件が刑事の旅行先まで追いかけて来たり、犯人が観光名所をまんべんなく回って逃げたり等の強引さも地方ロケ編の風物詩ではあるんだけど、それにしても『誇りの報酬』にはこういうフワっとしてると言うか、捉えどころの無いエピソードが目立ちます。

いや、それは'80年代中盤から'90年代にかけて創られたアクションドラマ全般に言える事かも知れません。要するに、中身が軽くなっちゃった。話が薄いってことですね。

それは脚本力が落ちたからと言うより、やっぱり時代の流れなんだと思います。視聴者が湿っぽいドラマを好まなくなったせいもあるし、世の中が豊かになって犯罪そのものの質も軽い(貧困や怨恨に起因しない)ものになって来た影響もあった事でしょう。

後番組『あぶない刑事』はそんな時代の変化に対応し、ゲーム感覚で犯罪を楽しむ愉快犯が敵になることが多くなりました。それが遊び感覚で捜査したり銃撃戦したりする刑事のキャラと見事にマッチしたんですよね。

『誇りの報酬』の芹沢&萩原コンビもかなりノリが軽くなってはいるけど、事件の内容がまだ中途半端に浪花節だったりして、うまくマッチしてない気がします。刑事ドラマの在り方が変わるちょうど過渡期で、新時代への橋渡し役を務めたのが『誇りの報酬』だった。そんな気がします。


 

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『誇りの報酬』#16 (再)

2022-03-08 22:22:05 | 刑事ドラマ'80年代

『誇りの報酬』は1985年10月から翌年9月まで、日本テレビ系列の日曜夜9時枠で全49話が放映されたフィルム撮りの刑事ドラマ。

制作は『太陽にほえろ!』と同じ日テレ&東宝で、かつて松田優作&中村雅俊のコンビで制作された『俺たちの勲章』(’75) の続編として企画され、優作さんが出演を辞退されたことで中村雅俊&根津甚八という新たなコンビ、新たな設定を得てスタートした作品。その後番組がセントラル・アーツ制作の大ヒット作『あぶない刑事』となります。

’86年になって『誇りの報酬』も1クールを経過し、オープニングのテーマ曲がバラード調からアップテンポ・バージョンに替わり、タイトルバックの映像も一部差し替えられ、よりアクティブさが強調されるようになりました。

確かに、バラード調の曲はメリハリが無くフワッとしてて、あの時代の空気、番組のカラーにも合ってない気がしてました。新バージョンの方が断然グッドです。

これらの変更によって『俺たちの勲章』の続編というイメージから離れ、'80年代ならではのPOPなバディ・アクション刑事ドラマ、すなわち『あぶない刑事』前身としての『誇りの報酬』独自の世界観が確立されたように思います。

ちなみに音楽担当はタケカワユキヒデ&浅野孝己、音楽プロデューサーはジョニー野村という布陣。エンディング主題歌『日付変更線』を唄うのはもちろん、主演の中村雅俊さん。



主役は警視庁捜査一課に所属するハミダシ刑事=芹沢春樹(中村雅俊)と萩原秋夫(根津甚八)。地方へ出張しての捜査が多いのは『〜勲章』を踏襲しつつも、厄介払いで飛ばされてるような悲壮感は払拭され、’80年代らしく呑気で明るいコンビとして描かれてます。



『〜勲章』では資料室の管理人だった柳生博さんが、本作では主役コンビの上司=田沼課長役に昇格。温厚だった性格が権力を得て荒っぽくなってますw



課長秘書=真山幸子を演じる篠ひろ子さんも、’70年代は陰影ある役ばかりだったのに明朗快活なキャラに変貌。「真山」という名字は『あぶない刑事』の浅野温子さんに継承される事になります。



ほか、芹沢・萩原いきつけの喫茶店「バルビゾン」のマスターに鈴木ヒロミツ、そこの常連客で芹沢刑事の情報屋を請け負うチンピラ・コンビに石橋正次&宮田恭男。



そして芹沢刑事と同居する妹=歩に、朝ドラ『澪つくし』のヒロイン役を終えたばかりの沢口靖子、といったレギュラーキャストの布陣。

この第16話のゲストは、前回レビューした『太陽にほえろ!PART2』#02 に続いて、’80年代アイドルの甲斐智枝美さん。以下、レビューは以前アップした記事のリバイバル版となります。



☆第16話『三河湾に哀歌をきいた』

(1986.1.26.OA/脚本=長野 洋/監督=木下 亮)

新橋のサラ金に二人組の強盗が侵入、金庫の現金を強奪しようとするも途中で発見され、警備員の一人に重傷を負わせて逃走します。

その犯人たちはすぐに捕まるんだけど、金庫にあった現金500万円が行方不明。犯人は二人とも、奪う前に警備員らに見つかったから「俺たちは盗ってない」と主張。

で、同じ現場にいながら負傷しなかった若い警備員=野口(安藤一夫)がネコババしたと睨んだ芹沢&萩原コンビは、彼をマークするんだけど取り逃がし、潜伏先と見られる愛知県の蒲郡(野口の生まれ故郷)へと飛びます。

野口は同じ蒲郡出身の婚約者=恵子(甲斐智枝美)に「蒲郡で会いたい」と連絡を入れており、彼を自首させたい恵子は芹沢たちと同行するのでした。



あとはもう、三河湾の観光名所を巡る逃走&追跡劇が繰り広げられ、野口の口を封じたい黒幕(立川貴司)も絡んで吸った揉んだした挙げ句、もちろん最終的には野口も黒幕も逮捕され一件落着。地方ロケ編ってのは得てしてこんなもん、それ以上でも以下でもない、ってな内容でした。

ただ、最後に芹沢刑事が野口を説得するときの台詞は良かったです。

「これ以上逃げ回ってどうするんだ? 刑務所に入るのがそんなに怖いのか? お前はまだいい。世間と隔離されて生きていけるんだからな。だが彼女は違うぞ! 彼女はこれから先、世間の冷たい眼を浴びながら生きていかなくちゃいけないんだ! 彼女こそこれから先どうやって生きていったらいいんだっ!?」



それと、地元の新米刑事役で登場した若い俳優さん。無名にしちゃヤケに演技が上手いと思ってたら、今やチョー売れっ子バイプレーヤーの光石 研さんなんですね。クレジットを見るまで全然判りませんでした。



ストーリーとしては凡作だけど、光石さんの好演と甲斐智枝美さんの熱演に救われました。キャスティングの勝利かと思います。

セクシーショットはもちろん甲斐智枝美さん、当時22歳。『スター誕生!』が生んだアイドル歌手で、本作と同じ'86年に『太陽にほえろ!PART2』第2話にもゲスト出演されてます。

本作でのしっとりとしたOL役とは対照的に『太陽~』ではキャピキャピした女子大生の役。どちらも違和感なく魅力的に演じておられて、女優さんとしての才能を感じます。が、'90年の結婚を機に引退され、2006年に自ら命を絶たれてしまいました。合掌。


 
 

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『太陽にほえろ!PART2』#02

2022-03-06 23:23:05 | 刑事ドラマ'80年代

’80年代アイドル特集、第7弾は甲斐智枝美さん! 松田聖子さんや柏原芳恵さん、河合奈保子さん、田原俊彦などと同期デビューでアイドル全盛期の一翼を担ったけど、歌手としてより女優業でのご活躍の方が強く印象に残ってます。

本作と同じ’86年に『誇りの報酬』#16 に出られたほか、刑事ドラマは『特捜最前線』#396 と『はぐれ刑事純情派(第1シリーズ)』#16 にゲスト出演。日テレ系の朝ドラ『見上げればいつも青空』(’87) では主演を務められました。

が、’90年の結婚を機に芸能界を引退され、2006年に自殺という形で他界。それは残念なことだけど、智枝美さんの素晴らしい演技はこうして作品として残ってるし、素晴らしいヌードグラビアもまたしかり。至宝です!



☆第2話『探偵物語』(1986.12.5.OA/脚本=柏原寛司/監督=手銭弘喜)

『太陽にほえろ!PART2』は1986年11月から翌年2月まで、石原裕次郎さんの体調悪化→降板により急きょ終了を余儀なくされた前作から新番組『ジャングル』までの「つなぎ」として、最初から1クール(全12話)限定で制作された刑事ドラマ。

連ドラとしてはたぶん初の「女性ボス」を登場させた先見性と、何より「刑事役の集大成」として取り組まれた新レギュラー・寺尾聰さんの魅力がひときわ光るシリーズで、もっともっと評価されて然るべき作品だと私は思ってます。

藤堂ボスが栄転で七曲署を去り、篁朝子(奈良岡朋子)を新係長に迎えた捜査一係のメンバーは、ドック(神田正輝)、マミー(長谷直美)、ブルース(又野誠治)、マイコン(石原良純w)、DJ(西山浩司)、トシさん(地井武男)。



そして警察学校の教官職から現場復帰した長さん(下川辰平)に、番組史上初めてニックネームがついてない新任刑事=喜多 収(寺尾 聰)も加わって、総勢9名!



今回は喜多刑事=寺尾聰さんの『太陽〜』初主演エピソード。友人の私立探偵=飯山の事務所を借りて、歩美(甲斐智枝美)という女子大生のアパートを喜多さんとブルースが張り込みます。

歩美は宝石店強盗の容疑者=平田(森川正太)の恋人であり、現在のところ唯一の手掛かりなのでした。



ところがなんと、その歩美が自ら飯山の事務所を訪ねて来たから驚いた!

「警察より先にカレを見つけて、逃して欲しいの」

喜多さんとブルースを探偵だと思い込んだ歩美は、今まさに2人が追ってる容疑者=平田の逃亡補助を依頼して来たのでした。

「引き受けましょう」

ノリの軽い喜多さんは、とっさに飯山探偵に成りすました上、その依頼を二つ返事で請け合い、ブルースを呆れさせます。七曲署史上、最もふざけた刑事がこの男なんですw



時は1986年の暮れ。すでに同じ日テレ系で『あぶない刑事』がスタートしており、今回はそのメインライターである柏原寛司さんの脚本。

しかもネタが「探偵」なもんだから、本来チョー生真面目番組の『太陽にほえろ!』に『あぶデカ』流の軽いノリと「ハードボイルド」を持ち込んだ、かなりの異色作となってます。

きっと寺尾聰さんならそれがサマになる、と踏んでの事なんでしょう。ふだんの『太陽〜』じゃ聞かれないキザな台詞も満載! 例えば、喫茶店で待ち合わせた歩美と喜多さんのやり取り。

「早いじゃない」

「オンナ待たせるのは嫌いなんだ」

「私、好きよ。オトコ待たせるの」



そしてカフェバーに現れた平田を追跡するも、何者かに背後から拳銃で殴られ、倒れてるところに駆けつけた歩美と、こんなやり取り。

「探偵さん、どうしたの!?」

「ちょっと休憩してたんだ」



「これからオレの出番だ。オンナの時間はもう終わりだ」

とにかくいちいちカッコつけるw けど、それをチャーミングに感じさせちゃう。同じクール系でもスコッチ(沖 雅也)やデューク(金田賢一)だと違和感あるし、同じ軽妙キャラでもドックやDJには似合わない。クールさと軽妙さ、ハードさとソフトさを兼ね備えた寺尾聰さんだからこそ成立する、唯一無二のキャラクター。

ところで、そんな喜多さんを背後から拳銃で殴った卑劣な凶悪犯は、もちろんコイツらですw ↓



ほら出た! 髪を短くしようがヒゲを生やそうがどうせ血も涙もない片桐竜次と、内田勝正! この顔ぶれに人情や説得が通じる筈もなく、最後は銃撃戦しか有り得ませんw

当然、ヤツらの狙いは平田が隠し持ってると思われる宝石。どうやら宝石店を襲ったのはこの2人で、その計画を盗み聞きした平田が後からネコババした。だから2人は平田を探し出して拉致し、彼を追って来た喜多さんを殴り倒したワケです。



さて、平田がカフェバーに現れた時に一緒にいた悦子(岩城徳栄)という女を探し出した喜多さんは、宝石をネコババした平田がまず(歩美ではなく)悦子のアパートに転がり込んだこと、そして宝石を隠したであろうパイロットケースを彼女に預けた事実を聞き出します。

つまり平田は浮気していた。それに気づいてる筈なのに、相変わらず平田を逃がそうと頑張る歩美に、ハードボイルド喜多さんもさすがに情が入って来ちゃった様子。

「好きなのか、本気で? ヤツを助けたことがバレたら、自分だって警察に追われるんだぞ?」

「その時は助けてくれるんでしょ? 探、偵、さん」

「…………」



「どうしたの、元気ないわよ?」

「借金も悩みも多い年頃なのよ」

「好きな人いるんじゃない? そうでしょ」

「バカ言ってんじゃありませんよ」

「ふふ。可愛いのね」

こんな会話に我々が赤面したり失笑したりしないで済むのも、演じてるのがこのお二人だから。もしマイコンだったら何もかも台無しですw

甲斐智枝美さんがまた良いんですよね! 松本伊代さんや早見優さんの演技には正直「アイドル歌手の副業」感が拭えなかったけど、智枝美さんからは女優業に賭ける「本気」がヒシヒシ伝わって来ます。そういう人しかキャスティングしない姿勢を『太陽にほえろ!』は貫いてましたよね。

しかし! そんな良いムードも束の間、やっぱりあの男が乱入して来ちゃいます。



「取引なんて面倒なことは、中止だ。受け取りに来た」

「懐かしい顔だな。会いたかったぜ」



とっさに愛銃COLTパイソン2.5インチを抜く喜多さんだけど、片桐竜次が歩美を人質に取らないワケがありません。



「日本の探偵ってのは拳銃持ってるのか? お前、デカなんだろ?」

「えっ、そうなの!?」

喜多さんを飯山探偵だと信じきってた歩美は、当然ハイパー激怒します。

「悪かった。騙す気は無かったんだ」

「結果的には騙したんじゃない! バカッ!!」

「なんとでも言ってくれ」

「俺たちの宝石を持って来てもらおうか。逆らえば女と平田が死ぬぞ」

宝石を隠したパイロットケースは、平田に頼まれた悦子によって「拾得物」として七曲署に届けられてました。ほとぼりが冷めるまで保管するには警察署が一番安全ってワケです。

しかし、いくら同じ署の刑事でも、重要な証拠品を無断で、それも億の値がつく宝石の束をすんなり持ち出せる筈がありません。さて、喜多さんはどうするのか?



「ど、どうしたんですか? 喜多さん」

「へへ、貰っていくんですよ。恋人にプレゼントね」

喜多さんが選んだのは、正面から堂々と鑑識室に入り、満面の笑顔で当たり前みたいに宝石を持ち出すというw、考え得るかぎり最も手っ取り早い方法。当然、鑑識課員たちに追われるけどパトカーで逃げ切りますw



『あぶない刑事』なら珍しくもない場面だけど『太陽にほえろ!』では前代未聞。もうついて行けない!って憤るファンもいたかも知れないけど、私は拍手喝采でしたw この柔軟さがあればこそ15年近くも番組が続いたんだと思います。

だけど当然、卑劣な片桐竜次と内田勝正は宝石が欲しかっただけ。それさえ受け取ればみんな用済みです。

「間抜けなデカだぜ」

「人のことおちょくりやがって……ただで済むと思うな」

「それが済むんだよ」



「上等だ、その代わり1発で仕留めろよ。撃ち損じたら2人とも終わりだ。そこらのデカとは出来が違うんだ!」

言葉通り、スキを見てパイソンを奪い返した喜多さんは2人を追い詰め、まず片桐竜次を射殺しますw



あまりにアッサリ殺しちゃったもんで驚きました。殺さなきゃ人質が助からないとか、他に選択肢が無い状況でなければ射殺を許さないのが『太陽〜』という番組で、藤堂ボスだけが唯一の例外でしたから。

しかしこれは『太陽にほえろ!』が変わっちゃったと言うよりも、今回はハードボイルド編だから最後もクールにキメちゃうぜ!って事でしょう、きっと。言わば番外編です。今まで各番組でさんざん悪さして来た片桐竜次が死んでも誰も文句言わないしw



しかし2人とも殺したら自白が取れないから、内田勝正は片足を撃ち抜くだけで済ませた喜多さん。

「だから言ったろ? 1発で仕留めろって」



こめかみを撃つと見せかけて、拳銃で頭を殴って気絶させる喜多さん。いつぞやのお返しです。カッコいい!

こういうハードボイルドが似合うのって、やっぱり寺尾さんか『あぶデカ』のお二人、あとは藤竜也さんぐらい? 今の若い俳優には1人も見当たりません。

それはさておき……

残念ながら、あれほど歩美に愛されてた平田なのに、バチが当たったのか銃撃戦の流れ弾に倒れちゃいました。どうやら、とっさに歩美を守ろうとして撃たれたみたいです。

「宝石、金に換えたら……一緒に暮らそうと思ってたんだよ、お前と……」

「分かってる……言わなくても分かってるわよ、そんなこと!」

それが2人の、最後に交わす会話になっちゃいました。たぶん平田は嘘をついてるし、歩美もそれを分かった上で話を合わせてる。



恋人を失った歩美を覆面パトカーに導きながら、喜多さんが言います。

「アイツには別にオンナがいたんだぞ?」

「いいの。撃ち合いの時、私を庇ってくれたわ。すべて許そうと思ったの、その時」



「いいオトコ探せよ。いるぜ、たくさん」

「じゃあ、その時は依頼に行くわね。探、偵、さん」

「ああ」



’80年代らしい荒唐無稽なストーリーだし、決して『太陽にほえろ!』らしくはないんだけど、良かった! やっぱり、演じる人次第なんですよね。しつこいようだけどマイコンなら何もかもが台無しですw

これも繰り返しになるけど寺尾聰さんだからサマになるし、甲斐智枝美さんだからこそ感情移入できる。文字と静止画だけじゃ伝え切れないのが残念です。

この次の第3話『老犬ムク』もチョー名作だし、太陽にほえろ!PART2、あなどれません!


 

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『太陽にほえろ!』#713

2022-03-03 23:32:19 | 刑事ドラマ'80年代

 
’80年代アイドル特集の第6弾は「お湯をかける少女」こと、工藤夕貴さん!

女優としてデビューしながらアイドルとして売り出す手法は角川三人娘(薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子)からの流れで、武田久美子さんもその1人だったと思うけど、中でもひときわ高い演技力で一目置かれ、富田靖子さんと双璧を成す存在となったのが工藤夕貴さん。

今回あらためて観直しても、工藤さんの演技力はもはや「別格」で、その相乗効果なのかレギュラー陣の芝居も通常より数段レベルアップしてるように感じます。

そんな当時(1986年秋)の七曲署捜査一係のメンバーは、助っ人係長の橘警部(渡 哲也)を筆頭に、ドック(神田正輝)、マミー(長谷直美)、デューク(金田賢一)、ブルース(又野誠治)、マイコン(石原良純w)、トシさん(地井武男)、そして橘警部と同時に着任したばかりの新米刑事=DJ(西山浩司)!



本作は『太陽にほえろ!』最後の2時間スペシャルであり、また『太陽~』の長い歴史において超常現象をネタにした唯一のエピソード。後期『太陽〜』=つまらないと決めてかかってる連中は嘲笑してたみたいだけど、私は傑作だと思うし、今でも大好きな作品です。

当時アイドルだった宮田恭男、井丸ゆかり、田中浩二、そして大和田署長=草薙幸二郎、本庁の大沢管理官=神山繁etc…と、期首スペシャルだけあって脇を固めるゲスト陣も豪華です。

(なお、レビュー自体は過去に掲載した記事に画像を追加したリバイバル版です)



☆第713話『太陽にほえろ!スペシャル/エスパー少女・愛』

(1986.10.10.OA/脚本=古内一成&小川 英/監督=木下 亮)

ある夜、パトロール中のドック&ブルースが、建築中のビル屋上に佇む1人の少女を発見します。

自殺だと直感した2人が駆けつけると、なぜか少女はその場に倒れ、高熱にうなされてる。とりあえずドックらに病院へ搬送される途中、彼女はうわ言を呟きます。

「眩しい……光……」

「ネオン……21世紀の、ネオン……」



時を同じくして、小学生の男児が車にはねられ、運転してた若いカップル(宮田恭男&井丸ゆかり)に連れ去られたとの通報が七曲署に入ります。

少女を病院に送り届けたドック&ブルースも捜索に参加し、負傷した男児を座席に残したまま乗り捨てられた、轢き逃げの車を発見します。

その現場でブルースは「21世紀」という大きな文字が光る、ネオンサインがあることに気づくのでした。

「テレパシー!?」



ブルースは、自殺未遂の少女=西谷 愛(工藤夕貴)が、事故に遭った男児の見た光景(眩しい光=車のヘッドライトと、21世紀のネオン)をテレパシーで受信したんじゃないか?と考えます。

そう、西谷愛は超能力少女だった! ……なんてことを真顔で言い出すブルースを、マイコンやDJは「ダサい」と言って笑います。



ところが! 愛が熱でうなされた時、他に何が見えたか尋ねてみると、赤いエビみたいな物が揺れていたと言う。そして捕まった轢き逃げカップルの女の耳には、赤いサソリのイヤリングが揺れていた!



そのイヤリングをエビだと主張するブルースは、またもやマイコンに「ダサい」と笑われますが、いよいよ愛=エスパー少女であることを確信します。

その真偽はともかく、愛がなぜ自殺しようとしたのか、その原因がハッキリしません。優等生でスポーツ万能、性格も明るくてクラスの人気者なのに……

両親が2年前に離婚しており、現在は母親(田村奈巳)と二人暮らしなんだけど、父親とは現在も交流があり、離婚が原因とは思えないと母親は言う。



そんな折り、銀行強盗事件が発生します。逃走した三人組の犯人はそれぞれパーティーグッズの覆面をしており、まるで正体が掴めません。

愛=エスパー説に半信半疑だったドックは、実験を試みます。それは、犯人たちが捨てて行った3種類のマスクを、愛に見せて透視してもらうというもの。



愛は気乗りしないものの、ドック&ブルースの熱心さにほだされ、透視を試みます。結果、水の中を泳ぐ2匹の大きな金魚、丘の上に生えた5本のツクシ、そして歌舞伎の舞いみたいな和装の人物が、イメージとして浮かんだと言う。



それを手掛かりに捜査することを橘警部は許可しますが、どこから情報が漏れたのか「七曲署が捜査に超能力少女を起用!」という新聞記事が出てしまい、ちょっとした騒ぎになっちゃいます。

「この記事は、全くの事実無根であります」

記者会見でそう断言した橘警部を見て、ブルースは失望します。

「なんで……なんで事実を言わないんだ? やっぱり警部も超能力を信じてないのか」

こうなったら、意地でも愛の超能力で事件を解決してやる! 決意を新たにしたブルースに、朗報が舞い込みます。地下鉄の半蔵門駅と、つくし野駅、そして船堀駅にあるモザイク壁画が、愛の透視したイメージとそっくりであることを、さんざん超能力をバカにしてたDJが突き止めてくれたのでした。



一気にテンションの上がったブルースはがぜん張り切りますが、それらの壁画が強盗犯グループとどう繋がるのか、いくら考えても答えが出ません。

一方、防犯カメラに映った犯人のタトゥーを手掛かりに捜査を進めてたトシさん&マミーが、ついにその正体を突き止め、逮捕します。

結局、犯人グループと3つの駅との繋がりは、何もありませんでした。ブルースはまたもや凹みます。



その頃、愛はマスコミの心無い取材でプライバシーを侵害され、更に嫌がらせやイタズラ電話にも悩まされ、ストレスがピークに達しようとしてました。

橘警部がなぜ、記者会見で愛の超能力を全面否定したのか? その真意をようやく理解したブルースは、捜査よりも愛のメンタル面をフォローすべしと思い直し、再び自殺未遂の原因を探ります。

結果、3つの駅の壁画は、離婚前の親子3人が過ごした、楽しい想い出に繋がってることが判明。やっぱり、彼女は寂しかったのか?

「違うわ。そんなんで死にたくなったんじゃない! 違うのに! 違うのに!」

どうやらブルースのフォローは見当外れ&逆効果だったようで、愛はますます自分の殻に閉じ籠っていきます。

そしてまた、新たな事件が勃発! 老夫婦をある場所に監禁した、そこで翌朝9時に時限爆弾が爆発する、との脅迫電話が七曲署に入ったのです。

「あんたとこの超能力少女に居場所を突き止めてもらうんだな」



若い男っぽい犯人は、どうやら愛がマスコミに注目されるようになってから、嫌がらせやイタズラ電話を仕掛けてた輩と同一人物らしい。

なぜ犯人は、そこまで西谷愛にこだわるのか? そして愛の眠ったままの超能力は、果たして老夫婦を救うことが出来るのか? そもそも、彼女は本当にエスパーなのか?

緊急捜査の結果、実際に老夫婦が行方不明で、ダイナマイトの盗難届けも出ており、脅迫電話はただのイタズラじゃないことが決定的になります。そして拉致に使われた車の目撃証言から、磯部(田中浩二)という青年に容疑が絞られます。

彼はスプーン曲げの特技を持っており、かつての超能力ブームでマスコミに取り上げられ、ちょっとした有名人になった経験が忘れられず、今、時の人となった西谷愛への強い嫉妬心から、どうやら犯行に及んだらしい。

そこまで判明しても、老夫婦が監禁されてる場所だけは全く見当がつかず、時限爆弾が爆発する翌朝9時までに救出するには、犯人の言う通り愛の超能力に頼るしか無いのかも知れません。



ところが! またしても愛が自殺未遂をやらかします。マンションの屋上から飛び降りようとしたんだけど、今度は心臓に痛みを覚えて倒れちゃう。

駆けつけたドックは、やがて嘘みたいに痛みが治まった愛の様子を見て、ようやく超能力の正体に気づきます。

「薬を飲んだんだ……」

薬を飲んだのは愛じゃなくて、拉致された老夫婦の奥さん。心臓病を患っており、恐らく発作が出てすぐに薬を飲んで、痛みが治まった。

たぶん愛の超能力は、ある特殊な状況の時だけ発揮される。その特殊な状況とは、彼女が自殺しようとした時。車に跳ねられた少年のテレパシーを受信した時もそうでした。

愛は恐らく、死のうとした時にSOSを無意識に発信し、それが他の誰かのSOSと呼応し、その人の見た光景や痛みを共有する。今回は拉致された老人のSOSを図らずもキャッチしたワケです。

「違うわ……違う! 違う! みんな違う! 私はそんな超能力少女なんかじゃない! 優等生でもない! スポーツ万能選手でもない! みんな違うのよ!」

愛はようやく、ずっと奥底に秘めてきた本音を、ドックとブルースに吐露します。



「だから死にたくなるのか。キミはそんなのになりたくない。だけどいつの間にか、そういうレッテルだらけになっちゃって……それがイヤなんだ。そうだろ?」

ただの平凡な高校生のくせに、無理をして優等生でいようとする自分自身がイヤでイヤで仕方がない、と言って泣きじゃくる愛に、ドックが優しく語りかけます。

「要するに、頑張り屋なんじゃないか。それは決して悪いことじゃない。恥ずかしいことでも何でもないよ」

両親が離婚して、周りから同情されるのがツラくて、愛は勉強やスポーツを人一倍頑張って来た。その結果、優等生でスポーツ万能な子と見られるようになったけど、それは決して本当の自分じゃないと彼女は思ってる。

そのギャップに苦しんでた時に、今度は「超能力少女」なんていうレッテルまで貼られ、世間の注目を浴びてしまい、いよいよアイデンティティーが崩壊しちゃった。何もかもブルースのせいですw

「普通の女の子がそうであっちゃ、どうしていけないの? エスパーや優等生は特殊な人間だから、つまらない普通の女の子であっちゃならないって、そんな決まりがどこにあるの? 誰が決めたの? そう思ってるのは、キミだけだ」

ドックは捜査のことも忘れて、ただ彼女に生きてて欲しい一心で、懸命に語りかけます。

「思いきって、自分さらけ出して生きてみろよ。その立派なレッテルと、キミ自身とのギャップってのは、キミが思ってるほど大きくない筈だ」

ドックの説得を理解したのか、ようやく愛は落ち着きます。駆けつけた母親に彼女を託し、再び捜査に戻ろうとするドック&ブルースに、愛が重要な手掛かりを伝えます。

「刑事さん! 菊の花が、見えたんです」

愛が心臓に痛みを覚えた時、つまり拉致された老人のSOSをキャッチした時に、菊の花を上から見下ろしたような光景が頭に浮かんだ。恐らく、そういう場所に夫婦が監禁されてる。爆破予告の9時まで、もうあと数時間しかありません。

「警部! 俺たち、これに賭けてみようと思います!」

「よし、やってみろ!」



橘警部の許可を得て、ヘリコプターをチャーターしたドック&ブルースは、上空から菊の花(のように見えるもの)を必死に探します。そして……

「ドック、あれ!」

小学校の校庭に、黄色く塗ったタイヤをピラミッド状に積み上げた、巨大な遊具がある。そのすぐ横のウィークリーマンション上層階から小学校を見下ろせば、菊の花みたいに見える!



間一髪、ドック&ブルースによって老夫婦は救出され、犯人も逮捕されます。愛の超能力が、見ず知らずの夫婦の生命を見事に救ったのでした。

後日、それを報告しに来たブルースに、愛は心からの笑顔を見せます。ドックに「自分をさらけ出してみろ」と言われて、急に気がラクになったと彼女は言います。

「結局、頑張ってた自分がホントの自分だってことが、やっと分かったの」

「うん。自分で自分を嫌ったって、意味が無いってこっちゃ」



ドックみたいな説得力は皆無だけどw、元気に生きていって欲しいというブルースの気持ちは、彼女に伝わったみたいです。

「澤村さんって怖そうに見えるけど、ホントは凄く優しい人なんですね!」

そう言って元気に学校へと駈けていく愛の後ろ姿に、ブルースはしみじみと呟きます。

「幸せになって欲しいよなあ……」

今回の結果を受けて、西谷愛を七曲署専属のアドバイザーとして迎えよう!なんて言って盛り上がる同僚たちを、ブルースは「彼女はもう、エスパーじゃないんだよ」と一蹴します。

「えっ、どういうこと?」

「つまり彼女は、もう絶対に自殺なんかしないって事だな」

「そうです、警部」

「良かったな、ブルース」

「いやぁ、今回は楽しかったです!」



じゃあ普段は楽しくないのかよ?っていう疑問も残しながらw、一件落着。やっぱり『太陽にほえろ!』は、希望のドラマなんですよね。こういう爽快な後味を残してくれる刑事ドラマが、現在はなかなか見られません。

今回、銃撃戦やカーチェイスなど派手な見せ場は一切なし。にも関わらず、2時間の長尺を全く退屈させずにラストまで引っ張るクオリティー。

特に、超能力という言わば非現実的なテーマを「理想と現実とのギャップ」という思春期に誰もが味わう普遍的テーマと融合させることで、とても身近なものに感じさせた脚本が本当に素晴らしいと思います。

この『エスパー少女・愛』は本来、DJ刑事の主演エピソードとして用意されてたんだそうです。ところが西山浩司さんが体調を崩して入院する羽目になり、急遽ブルースが代役を務めたんだとか。

確かに、超能力を盲信しちゃう刑事としてはDJの方がキャラ的に自然だし、西山さんならまた違った面白さで笑わせてくれたと思うけど、ブルースだからこそ良かった部分も多々あるんですよね。

あの武骨な顔で愛=エスパー説を力説し、後輩のDJやマイコンwに笑われちゃう描写はブルースだからこそ可笑しいし、女子高生との不器用な交流もブルースだからこそ心温まるものがありました。

DJが相手だと、ちょっと恋愛感情みたいなのも絡みそうで、それはそれで楽しいかも知れないけど、結果的にはブルース主役で良かったように私は思います。コミカルな役どころを自然にこなして見せた又野誠治さんの演技、それを巧みに受けた神田正輝さんの助演もまた素晴らしい!

そしてエスパー少女=西谷愛を演じた工藤夕貴さん、当時15歳(!)。ヒラタオフィス所属、つまり多部未華子さんの大先輩にあたる女優さんです。

デビューは小堺一機さんのバラエティー番組で、最初に注目されたのは「お湯をかける少女」のキャッチフレーズが話題になった、即席ラーメンのCM。そして石井聡互監督『逆噴射家族』や相米慎二監督『台風クラブ』等の映画で高い評価を受け、演技派の若手女優として広く認知された上での『太陽にほえろ!』ゲスト出演でした。

確かに本エピソードは、工藤さんの演技力に支えられてる部分も多々あり、通常レベルの若手ゲストだと陳腐な印象に終わった可能性もあります。特に、泣きじゃくりながら初めて本音を吐露するシーンの演技は圧巻でした。

ちょうどこの時期から工藤さんはハリウッドへの挑戦を始め、まさに今回の役柄さながらにコツコツ努力を続け、ついに'89年、ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』で永瀬正敏さんと一緒にアメリカ映画デビューを果たされます。

以降、『ヒマラヤ杉に降る雪』や『ピクチャーブライド』『ラッシュアワー3』等、ハリウッドを拠点に現在も活躍中。工藤さんにとって『太陽にほえろ!』は、日本における数少ないゲスト出演作にして、唯一の刑事ドラマだった筈。そういう意味でも、まさにスペシャルな作品です。


 

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