ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『新宿警察』#04

2020-05-24 21:37:44 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第4話『銀行ギャング 我が夢』

(1975年オンエア/脚本=池田一朗/監督=江崎実生)

この番組はDVDにもWikipediaにも各話の放映日が記載されてないんだけど、スタート日が9/6なので順当なら9/27の放映という事になります。フジテレビ系列、毎週土曜夜10時枠(全26話)のフィルム作品でした。

以前ご紹介した通り、新宿角筈署の捜査課に勤める仙田班の刑事たちの活躍が描かれ、演じるのは北大路欣也、藤竜也、財津一郎、三島史郎、司千四郎、花沢徳衛、そして小池朝雄という非常に渋いメンツ。

内容も渋く、リアリティー重視でヘビーな話が多いんだけど、この第4話は財津一郎さん扮する「山さん」こと山辺刑事が主役ということで比較的にタッチが軽く、だからレビューする気になりました。

山辺刑事に恨みを持つスナックのバーテン=ヒロシ(三ツ木清隆)が、兄貴分のマサヒコ(小林稔侍)&その恋人のセツコ(関根世津子)と3人で結託し、巧妙に罠を仕掛けて山辺の警察手帳を盗みます。

その目的は山辺への仕返しと、ニセ刑事を名乗って信用金庫から大金を奪い、アメリカへ渡ってそれぞれの夢を叶えること。良くも悪くも(いや、良くはないんだけど)当時はそういう無謀な夢を持つ若者が沢山いました。部屋にこもってYouTuberやゲームプレーヤーのプロを目指す現代っ子たちと、果たしてどっちが人間らしいのか?

それはともかく、警察手帳の紛失が表沙汰になれば懲戒→格下げは免れず、子沢山で生活苦にあえぐ山辺は、なんとか秘密裏に手帳を取り戻したいと根来刑事(北大路欣也)に泣きつきます。

で、困った根来は仙田主任(小池朝雄)に泣きつく。これまた困った主任は、山辺と根来に3日間の休暇を与え、その間に手帳を取り戻せなければ紛失届けを提出するよう指示します。もしその前に手帳が悪用されて事件が起きれば、3人とも格下げはおろか左遷も必至。これはなかなか危険な賭けです。

ヒロシたちはまず、ガサ入れを装って暴力団の闇賭博場に踏み込み、現金と拳銃を押収します。ヤクザたちが被害届を出すワケにいかないから、これは事件にならずに済んだけど、その拳銃を使って3人が信用金庫を襲ったら一巻の終わり。

事情を察した結城刑事(藤 竜也)らの協力もあって、主犯がヒロシであることを突き止めた根来は、スナックで同僚だったホステス(宮井えりな)から有力な情報を聞き出します。

「あの子の夢は銀行強盗だって。いつも寮の前の信用金庫を見つめてた。あの子、カッペ(田舎者)だから本当にやっちゃうかも」

地方出身者だから強盗を犯すなんて、そんなムチャな理屈があるかいな?と思いきや、福岡出身の山辺刑事はこう言います。

「わしもカッペだからカッペの気持ちはよく解る。ヤツは必ずその信用金庫を襲う!」w

かくしてタイムリミットが迫る中、そのカッペの法則に全てを賭けた山辺と根来は、信用金庫を徹底的に張り込みます。

そんな偏見と差別に基づいた推理が当たっちゃうとマズイのでは?っていう、我々の心配などどこ吹く風で、ヒロシたちはまんまとその信用金庫に現れるのでしたw

「山辺刑事」を装ったマサヒコが「爆破予告があったから」と店を閉めさせ、いよいよ拳銃を抜こうとしたその時、ホンモノの山辺と根来が登場し、銃を持つマサヒコの手を陰で押さえながら銀行員たちにこう言います。

「爆弾の件はイタズラと判りました。お騒がせして申し訳ありませんでした」

えっ、そうなの?と呆気に取られる銀行員たちを尻目に、山辺と根来はマサヒコと肩を組んで店を出ていきます。

そして表で待機してたヒロシも取り押さえた山辺は、一緒にいたセツコに唾をかけられます。

「せっかくうまくいきそうだったのに! 死んじゃえばいいのよアンタなんかっ!!」

「うちの母ちゃんもよくそう言うよ」

平然と2人に手錠を掛けようとする山辺に、マサヒコから押収した手帳を差し出して、根来が言います。

「山さん、困るな。警察手帳なしで逮捕しちゃ」

その手帳に貼られたマサヒコの顔写真を忌々しそうに剥がす山辺だけど、なぜか捨てないで自分のポケットに入れます。

「山さん?」

「母ちゃんに土産だ。こんな苦み走ったいい男に変身してたってな」

かくして山辺刑事は、警察手帳を盗まれるという一大不祥事を、みごと隠蔽してみせたのでした。

しかしヒロシたちが犯した拳銃強奪や銀行強盗未遂を事件化するには、警察手帳の入手経路を明かさないワケにいかないと思うんだけど、まあ山辺ならうまく誤魔化すことでしょうw

そもそも山辺がヒロシの恨みを買ったのは、かつて覚醒剤所持の濡れ衣で(他のバーテンと勘違いして)彼を何度も殴りつけたから。そのことに対する反省の色も全くない山さんは、人格に問題あり過ぎですw ヒロシ側から見れば悪徳刑事そのもので、まるでアメリカンニューシネマみたいな破滅のストーリー。

それでもなぜか憎めないのは、ひとえに演じる財津一郎さんの愛嬌溢れるキャラクターのお陰。雰囲気で騙されちゃうんですよねw それと昭和50年という時代背景。例の「カッペ」発言といい、今ならネットの自警団たちが黙っちゃいないでしょう。

刑事ドラマ史において『新宿警察』は地味な存在だけど、こうして観てみると王道『太陽にほえろ!』では味わえない、アンチヒーローの魅力が詰まってて面白いです。

作風は『大都会/闘いの日々』と『ジャングル』の中間ぐらいな感じで、明るくはないけど湿っぽくもなく、夜10時台の番組だけあって色っぽい場面も多く、一言で評すればオトナ向けの刑事ドラマ。渋いのがお好みの方にはオススメです。

小林稔侍さん、三ツ木清隆さんとトリオでゲスト出演された関根世津子さんは、当時19歳。TVデビューは円谷プロの特撮ドラマ『緊急指令10-4・10-10』#18 ('72) へのゲスト出演で、今回の『新宿警察』#04と同じ'75年に『太陽にほえろ!』#145(決定的瞬間)にもゲスト出演。

ほか、刑事ドラマは『夜明けの刑事』#21、『燃える捜査網』#01、『新・二人の事件簿/暁に駆ける!』#11、『新幹線公安官』第2シリーズ#19、『秘密のデカちゃん』#12等にゲスト出演されてます。
 


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