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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#301

2018-10-25 10:50:16 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第301話『銀河鉄道』

(1978.5.5.OA/脚本=小川 英&塩田千種/監督=木下 亮)

前回レビューの#300『男たちの詩』と、殿下(小野寺 昭)の新ラブストーリー第1章にあたる#299『ある出逢い』、そして名古屋ロケを敢行した#302『殺意の証明』は、いずれも放送300回記念イベントとして企画されたもの。

その間に挟まれた本作『銀河鉄道』は一見地味な存在なんだけど、実はファンの間で屈指の名作として語り継がれるエピソード。制作陣も自信があるからこそ、この時期に放映したんだろうと思います。放映日は1978年の5月5日=こどもの日でした。

ある日の夕暮れ、山さん(露口 茂)は川沿いの道で一人の少年とすれ違います。無灯火で自転車を走らせる少年に「危ないからライトを点けた方がいいぞ」と注意した山さんに、少年は「これからお母さんに会いに行くんだ」と言います。

その言葉のまま、離れた場所にいる母親に会いに行く途中なんだと解釈した山さんは「そうか、お母さんにね」と言って彼の後ろ姿を見送ります。が、翌朝、その少年=健一が水死体となって河原で発見されるのでした。

事故と他殺の両面から捜査を開始する藤堂チームですが、健一の母親が7年前に亡くなってることが判り、山さんは彼の死が自殺であることを察します。

遺書らしきものは無く、優等生の健一が自殺する動機も見当たらないんだけど、山さんは「孤独」が原因ではないかと推察。

そしてあの日、健一が自分とすれ違う直前まで一緒にいたらしいクラスメイト=威(水野 哲)が何かを知ってると直感した山さんは、彼と頻繁に会い、健一が宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を愛読していたことを聞き出します。

その本を読んで、山さんは健一が「夢の列車」に乗って母親のところへ行った、すなわち自殺したことを確信するのでした。

「恐らく、あの子が最後に会った人間は、この俺だ。だのに、俺は何にも気がつかなかった……」

あらためて健一の部屋を調べた山さんは「5月1日午後7時、銀河ステーション発」と記された銀河鉄道のイラストを発見します。その日付は、健一が死んだ日時とピッタリ符号する!

そして山さんは、威がそれと同じイラストを持っていたことを思い出します。

「威くんも死ぬ気かも知れん……!」

そう、健一と威は、一緒に自殺することを約束していた。威の部屋にあった銀河鉄道のイラストには、5月4日午後7時、つまり今日の日付が記されている!

以上、ここまでが番組の前半。後半は、ビルの屋上に上がった威の自殺を食い止めるべく、必死に説得する山さんの姿がじっくりと描かれます。

なにも殺人事件の謎を解くばかりが刑事ドラマじゃない。それ一辺倒で本当に視聴者を楽しませてると、胸を張って言えるのか? 昨今のテレビ制作者たちに是非、このエピソードを観て考え直して欲しいです。

相手はまだ幼い少年。スキを突いて捕まえ、強引に連れ戻すことは簡単だけど、それじゃ何の解決にもならない。彼が抱える孤独を理解し、その闇から救い出すために山さんは、ひたすら威と対話します。

それで分かったのは、威が大好きで飼い始めた「ヤマト」という名のウサギを母親が毛嫌いしてること、そして「40歳過ぎてからの子供は厄介だよ」と父親が陰で愚痴ってるのを聞いてしまったこと。大人にとっては些細なことでも、子供にとっては自分の存在を否定されたも同然ってワケです。

「彼は真剣です。あなた方が考えてるより彼は遥かに大人なんです。あなた方の嘘も、何もかもちゃんと感じ取っているんです。今まで眼をつむって来たことについて、真剣に考えてみて下さい」

取り乱すばかりの両親に課題を預けて、山さんは威と男どうし真剣に向き合います。

健一と一緒に自殺する約束をしながら、決行の日をずらした理由を山さんに問われて、死んだ時に父親が泣くかどうか確かめて欲しいと健一に頼まれたから、と威は答えます。

「で、健ちゃんのお父さんどうだった?」

「健ちゃんは絶対泣くはずないって言ってたけど、泣いてた」

「……泣いたのは、健ちゃんのお父さんだけじゃない。おじさんも泣いた。おじさんは、キミが死んでも同じように泣くだろう。なぜだか分かるか? 悔しいからだ。12歳のキミたちが、命を落とすのも、それを止められなかった自分も、悔しくて、情けなくて、どうにもやりきれないからだよ」

「…………」

決行予定の7時が近づき、痺れを切らして飛び降りようとする威に、山さんは必死に語りかけます。

「待ちなさい! まだ5分あるよ。銀河ステーションは始発駅だろ? 早く行ったって待つだけだよ」

「……おじさん、話合わすの上手いね。ただの夢なのに」

「ただの夢……そこだよ威くん。キミだって本当は、そんな鉄道なんてどこにも無いってことを知ってる筈だ。死んだら周りの人たちに悲しみを残すだけだってことを知ってる筈だ。そうだろ?」

「どうでもいいんだ、僕は死ぬんだ!」

そこに威のウサギを抱いた母親と父親が来て「私もヤマトを好きになるから!」と必死に説得しますが、威は「嘘だ! 僕を言いくるめようとしてるだけだ!」と言って信用しません。

「その通りだ! キミを死なせたくない為に、お母さんは嫌いなヤマトを抱いて見せた。嘘と言えば確かに嘘かも知れない。だがな、威くん。それならキミに何にも嘘は無いのか?」

「僕は嘘なんかつかないぞ!」

「じゃあキミはどうして、3時間以上も早く此処へ来たんだ?」

「どうせ死ぬんだから、何時に来てもいいだろ!」

「それが嘘だ。キミは本当は死にたくないんだ!」

「違う! 死んで見せてやる!」

「つまらん意地を張るんじゃないっ!!」

山さんは、眼に涙を浮かべながら威に訴えかけます。

「死んだ健一くんだってそうだったんだぞ。おじさん、あの晩、健一くんに会ったんだ。道で出会った健一くんの顔は、ひどく悲しそうだった。迷いがあった。見ず知らずのおじさんに健一くんが話しかけたのは、死ぬのを止めて欲しかったんだよ!」

「…………」

「生きるんだ。死ぬんじゃない! 生きるんだ! 強く!」

「…………」

「威くん、ここへおいで……おじさんところへ来るんだ。さあ」

両手を広げる山さんの胸に飛び込み、威は泣きじゃくります。

翌日、藤堂チームの面々は仕事を放り出して威を野球に誘います(アッコと威を入れてちょうど9人!)が、彼はケロッと笑ってクラスメイト達と遊びに出かけるのでした。

当時、自殺者の低年齢化が社会問題になっており、少しでも防止に役立ちたい想いで『太陽~』スタッフはこのエピソードを制作されたそうです。

「自殺防止がかえって自殺を誘発するものになってはいけないと、ずいぶん悩みました」っていう岡田チーフプロデューサーのコメントに、番組の真摯な姿勢が象徴されてるように思います。

簡単に人が殺され、刑事の謎解きがゲーム感覚で描かれてる(ように私の眼には見える)昨今の刑事ドラマに、そんな誠実さや強い責任感は感じ取れません。

また、上から目線で「死んじゃダメだ」と子供たちに言うんじゃなくて、我々はもっと真剣に子供たちと向き合い、話し合わなきゃいけないんじゃないか?っていう、大人の反省が込められてるからこそ、本作はストレートに胸に響いて来るんですよね。

冒頭で子供の自殺を見過ごしてしまった山さんの無念、それを二度と繰り返したくない必死な想いに胸を打たれます。露口さんの演技がやっぱり素晴らしい!

と同時に、威や健一と同じぐらいの年頃にも自殺を考えたことがある私としては、大人から見れば些細なことでも死にたくなっちゃう彼らの気持ちが痛いほどよく解ります。

冒頭、夕焼けの中で握手をする威と健一の切ない表情を見ただけで涙が出ちゃう。子役のお二人も本当に素晴らしい演技でした。

思えば、放映当時の私はちょうど威や健一と同じ12歳。さっきは彼らの気持ちがよく解るって書きましたけど、リアルタイムで本作を観た時は「また地味な話やなぁ」「それより銃撃戦を見せてよ」程度にしか受け止めてなかったかも知れません。バカですねw
 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (Unknown)
2018-10-25 14:06:44
いつもありがとうございます。
ちょいエッチな女優さん紹介を見にきた私が恥ずかしい。
素敵なご紹介で涙が出ました。
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>Unknownさん (ハリソン君)
2018-10-25 15:49:52
どちらかと言えばエロがメインのブログかも知れませんがw、ごくたまにマトモな記事も書いてますので、今後ともよろしくお願い致します。
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