ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『Gメン'75』#032

2019-05-17 00:00:05 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第32話『死んだはずの女』

(1975.12.27.OA/脚本=池田雄一/監督=小西通雄)

Gメンの関屋警部補(原田大二郎)が、夜食にラーメンでも食おうと思って屋台に寄ったら、そこで働く女性(川口 晶)が5年前に死んだはずの女=朋子に瓜二つだったから驚いた!

5年前、張り込みに使った喫茶店でウエイトレスをしてた朋子と仲良くなった関屋は、事件解決後に礼を言うため店を訪れたら、彼女は行方不明になっていた。

不審に思った関屋が調べてみると、朋子と婚約してた筈の男=長尾(六本木 真)が別の女性と政略結婚したことが判明。邪魔になった朋子を長尾が殺したに違いないと確信した関屋は、証拠不十分なまま逮捕に踏み切り、粘りの取り調べで犯行を自供させたんだけど、朋子の遺体がどうしても見つからなかった。

いま目の前にいるのはどう見ても朋子であり、関屋の顔を見て明らかに動揺するんだけど、なぜか「他人のそら似」だと言い張って自分が朋子であることを認めようとしない。

もし朋子が死んでなかったとすれば、服役中の長尾は「殺人罪」ではなく「殺人未遂罪」となって減刑されるのは必至。彼女は長尾に復讐したくて他人になりすましてるのか?

真実を追及せずにいられない刑事の性で、彼女の身辺を調べた関屋は、一緒に屋台を営むパートナー・俊次(西田 健)の過去に何かあると睨みます。何しろ西田健さんが演じてる以上、ただの善良な市民であるワケがありませんw

俊次に疑惑の眼が向けられてると知って、いよいよ朋子が血相を変えて関屋に抗議します。

「なぜ? なぜ私たちをいじめるの? どうして解ってくれないの! お願いです、ほっといて下さい! 見逃して下さい!」

身元を偽ってるとしても朋子は殺人未遂の被害者であり、関屋だって出来れば見て見ぬフリをしたいのが本音です。

「5年前、朋子は信じてた男に裏切られ、不幸のどん底に突き落とされた。その女が、もう一度這い上がってやっと掴みかけたちっぽけな幸せ……そいつを今度は、俺がこの手で引き裂こうとしてるんだ」

それだけじゃありません。殺人容疑で逮捕した長尾が実は殺人未遂だったことを明るみにすれば、関屋自身の捜査ミスも問われることになる。

「俺はいったい誰のために? 殺人犯の刑を減らしてやるためにか?」

そう、真実を明らかにしたところで、喜ぶのはにっくき長尾だけ。それでも関屋は執拗に真実を追及していきます。なぜなら、彼は刑事だから。

結果、朋子と屋台を営む俊次もまた、5年前に殺人を犯していたことが判明します。婚約者に裏切られた朋子と同じように、俊次も自分を裏切った女性を逆上して死なせてしまった。その遺体を埋め、自殺しようと思って山の中をさまよった俊次は、長尾に崖から突き落とされて瀕死状態の朋子と運命的に出逢ってしまった。信じてた恋人に裏切られた者どうし、二人は過去を捨てて生きていく決心をしたワケです。

なのに今、関屋たちGメンによって俊次の過去が暴かれようとしてる。

「シュンちゃん、山へいこうか」

「……山?」

「私だってあの時ほんとは死んでたんだ。楽しかったなぁ、この5年の間…………私、もう不幸せになるのイヤ!」

そして忽然と行方をくらませた朋子と俊次が、5年前に出逢ったあの場所で心中するつもりだと悟った関屋は、必死で山中を探し回るんだけど、ついに二人の姿は発見出来ずじまい。

「真実が暴かれた時、それは一人の女のちっぽけな幸せを破壊し、その女を殺そうとした悪党の、罪を軽くした……」

ラストシーンは、満面の笑顔で刑務所から出ていく長尾と、虚ろな眼で夜の繁華街をさまよう幽霊みたいな関屋の姿w ザッツ '70年代!

だけど、山へ向かった二人の行方が分からずじまいって事は、裏を返せば今度こそ全くの別人としてどこかで仲良く暮らしてる、と解釈する余地が残ってるワケで、救いが無いこともない。

そもそも、二人の過去を知る人間がいっぱいいる東京でラーメン屋をやってたのがアホ過ぎるやろ!とか、同じ境遇で同じように死にかけた二人があんな山中で出逢う確率が天文学的すぎるやろ!など、ツッコミ所は満載なんだけど、それを承知の上でも涙を流せたのが'70年代ドラマなんですよね。

なぜなら、作品の世界観そのものが元よりファンタジーだから。嘘を承知の上で成り立ってる世界だから、作劇上の嘘も自然と受け入れられたんだと思います。

だからフィルム撮影でないとダメなんですよね。ビデオ撮りの生々しい画面だと作劇上の嘘が浮いてしまう。ビデオ撮影がマストで、しかも警察組織の現実がすっかり世間に知れ渡った現在の日本では、もうこんなファンタジーは成立しません。

『Gメン'75』や『太陽にほえろ!』をいまリメイクしても絶対うまくいかないって、私が断言する根拠もそこにあります。時代背景が違う、似合う役者がいないなど云々以前の問題です。

それはともかく、このエピソードが秀逸だと思うのは、主役の刑事が単なる悲劇の傍観者に留まらず、自らも過去の捜査ミスを晒すリスクを背負ってること。可哀想な犯人の罪を刑事が泣く泣く暴いていく話は星の数あれど、同時に自らの罪も暴いちゃう話はあまり観た記憶がありません。

刑事の苦悩を描くなら、本来そうあるべきですよね。自分は何のリスクも背負わないで、他人の罪を暴くのがツラいみたいな顔をされても、あんたそれで給料貰ってるんやろ?って思うだけで共感できません。

だから『Gメン'75』の刑事たちは基本的に淡々と職務を遂行する「傍観者」になりがちなんだけど、今回の関屋警部補は違ってました。どんなに傷を負っても真実を追及せずにいられない、刑事という職業のツラさがヒシヒシと伝わって来ます。

薄幸のヒロインに川口晶さんというキャスティングも抜群でした。明るい笑顔にも儚さを漂わせる晶さんの持ち味が存分に活かされてます。相手役の西田健さんもまたハマってました。これは名作です。
 

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2 コメント

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Unknown (キアヌ)
2019-05-19 08:19:36
こ、これは見たいです!

土曜の晩の記憶で見てたような見てなかったような

ラテ欄で香港編と記載されてない限り見ていなかったようなw

暗いイメージしかないのですがこの作品も特捜最前線も今見たらハマるかもです!
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Unknown (harrison2018)
2019-05-19 10:10:13
キアヌさんが観られたら号泣必至かも知れません。文字では伝えようがないのですが、菊池俊輔さんの音楽がまた波瀾万丈ドラマにぴったりマッチして泣かせるんですよね。これは是非観て頂きたいです。
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