ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#364

2020-07-20 00:00:07 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第364話『スニーカー刑事登場!』

(1979.7.20.OA/脚本=小川 英&四十物光男/監督=竹林 進)

城南署の新米刑事=五代 潤(山下真司)は、殉職したボン(宮内 淳)の仇を討つために休暇を取り、七曲署管内で大暴れ。当然ながらクビになるところを我らがボス(石原裕次郎)に拾われ、ボンの後釜として藤堂チームに加わることになります。

沖縄出身で両親をアメリカ兵に殺されており、自暴自棄な生活を送ってるところを生前のボンに救われ、そのとき買ってもらったスニーカーを大事に穿いてることから渾名は「スニーカー」に決定。

そんなワケでスニーカー刑事の登場編は、ボン殉職編の後日談にして解決編。しつこいほどにボンの殉職シーンがリフレインされ、藤堂チームの刑事たちも根岸季衣さん扮するヒロインも我々視聴者も、死んだボンのことで頭いっぱい胸いっぱい。おなじみのテーマ曲が新アレンジに変わった衝撃にも気を取られ、面白いほどに主役=スニーカーの影が薄くなっちゃいましたw

ボンの登場編も実質はテキサス先輩(勝野 洋)が主役だったりしたけど、そのぶん翌週にちゃんとボンが単独で活躍するエピソードが用意されてました。

ところが! スニーカー登場編の翌週回で描かれたのは、ボンの殉職により死ぬのが怖くなっちゃったゴリさん(竜雷太)の苦悩、その翌週回で描かれたのはボンの殉職により独り暮らしになっちゃったロッキー(木之元 亮)の孤独と、いなくなった人のことばかりフィーチャーされて新人刑事がもはや背景化。

ようやく叶ったメンバーチェンジの新鮮さがまったく活かされないばかりか、暗くジメジメしたエピソードばかり続いてポップにアレンジされたテーマ曲がかえって浮いてしまい、登場編で40%を記録した視聴率がみるみる下がって半減しちゃうという、前年あたりまで何をやってもうまく行ってた『太陽にほえろ!』の神通力が、遂にここで尽き果てる結果を招いてしまうのでした。

大、失、敗、としか言いようありません。ボンの延命により1年間もデビューを待たされた山下真司さんがあまりに気の毒すぎます。

時代が変わったから? いやいや、間もなく『噂の刑事トミーとマツ』や『西部警察』がスタートし、『俺たちは天使だ!』や『探偵物語』が大ヒットして『あぶない刑事』やトレンディドラマへと繋がっていく、つまり明朗軽薄な時代がいよいよ幕を開けようって時に、この番組は真逆の方向に舵を切っちゃったワケです。

これだけの大ヒット作を生んだスタッフが、そんな時代の空気を読めてなかったとは到底思えません。じゃあなぜ、こんな事になっちゃったのか?

それはもう「おごり」以外の何物でもないと私は思います。番組初期から観てるファンの年齢層に合わせたとか、超シリアス路線『特捜最前線』への対抗意識とか、他にも色んな理由はあるだろうけど、一番はやっぱり長年の安定人気に「あぐらをかいてしまった」ことに尽きるんじゃないでしょうか?

そして「俺たちはもっと高い次元を目指すんだ」っていう野心。その志し自体は素晴らしいのかも知れないけど、ファンが果たしてそれを望んでるかどうか、考えようとはしなかったんでしょうか?

いくら年齢が上がろうが、人の嗜好はそれほど変わらない。だって大半の『太陽~』マニアは50歳を過ぎても未だ『太陽~』マニアのままなんだからw

いくつになっても観たいのはやっぱり、イキのいい若手刑事が躍動する姿であって、辛気くさい心理ドラマなんかとは断じて違う。いや、中にはそういうのが好きな人もいるだろうけど、木之元亮や山下真司にそんな芝居が出来ますか?って話ですw いやホントに、裕次郎さんや竜雷太さんにもそんな芝居は求めません。そういうのは山さん1人に任せとけばいいんです。

社会派ドラマを創って世間に認められたいなら、また別な番組を創ればいいんであって『太陽にほえろ!』にそんなもん持ち込んで欲しくなかったです、少なくとも私は。で、同じように感じた人がいっぱいいるから上記の結果を招いたワケで、裏番組『金八先生』に討たれたワケでも何でもない。神通力が日テレからTBSに気移りしただけの話です。

この登場編だけはアクション満載で華やかなんだけど、翌週から始まる泥沼期を知ってるだけに、今となっては複雑な心境で観ざるを得ません。

スニーカーと同居する妹=五代早苗として登場された山下幹子さん(同姓だけど真司さんとの血縁はありません)がまた、言っちゃ悪いけどビックリするほど棒読み台詞なんですよねw

当時のTVドラマにはそういう俳優さんもいっぱい出てたから、まあ「新人さんだしそのうち上手くなるでしょ」って長い眼で見られたけど、一定基準に満たない人をテレビで見かけなくなった現在の眼で観ると、なんでこんな下手な人をわざわざ?って、正直思わずにいられません。

少し遅れてセミレギュラー入りされる吉野巡査役の横谷雄二さんも負けないくらい棒読みでw、もしかして当時決して上手くはなかった山下真司さんを引き立てる目的で?なんて穿った見方までしちゃいそうです。

それでいて内容はやたら複雑で深い方向に行くワケだから矛盾も甚だしい。そういうチグハグさも確実にファン離れを助長した事でしょう。

本来なら、古くからのファンに合わせるんじゃなくて、新しい(つまり若い)ファンを開拓することに全力を尽くすべきだった。私らみたいにディープなファンはもう、中毒になっちゃってるから放っといても観るワケで。

結果を観た上で好き勝手言うな!って言われるかも知れないけど、こういった不満は本放映当時リアルタイムで感じてました。勿論ここまで具体的には言えなかっただろうけど、今よりもっと本気で怒ってましたよ。

その最大の犠牲者は間違いなくスニーカー=山下真司さんで、そりゃDVDの映像特典に出演されなかったのも当然かも知れません。

だからこそ、スニーカー刑事は応援したいです。実力以上に優遇されたロッキーやマイコンみたいに笑いのネタにはしないしw、出来ません。
 

コメント
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