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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#447ー1

2022-01-13 01:00:07 | 刑事ドラマ'80年代

もし真夜中、玄関のドアを開けて、そこにズブ濡れの志賀勝が立ってたら、あなたはどうしますか!?

しかもその日から志賀勝が我が家に住みつき、2人っきりで食事する羽目になったとしたら!? うぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!



☆第447話『侵入者』(1981.3.6.OA/脚本=小川英&尾西兼一/監督=澤田幸弘)

ロッキー(木之元 亮)と毎晩チョメチョメして子供を宿した新妻の令子さん(長谷直美)が、とある真夜中、大きなお腹を抱えながらアパートの玄関のドアを開けたら、そこにズブ濡れの志賀勝が立っていた! きゃあああぁぁぁーーーっ!!!



その志賀勝は、3年前に恐喝と傷害の罪でロッキーに逮捕された、矢沢という元暴力団員(志賀 勝)。刑期を終えて出所したものの身寄りが無く、どうやらロッキー以外に頼れる相手がいなかった様子。

ロッキーは3年前、カッコつけて「出所したらいつでも来いよ」なんて言っちゃった事を死ぬほど後悔しますw

「ああ、そ、そうだったな。俺に出来る事があれば何でも力貸すよ!」

「ありがとうございます。じゃあ職が決まるまで此処に泊めて下さい」

「えっ?」「えっ?」

ロッキーと令子さんが夫婦仲良くフリーズします。志賀勝が、泊まる? 新婚ホヤホヤ夫婦のアパート、それもこんな狭い部屋に? 職が決まるまで? 志賀勝が?



「俺、ほかに頼るところが無いんですよ。お願いします」

矢沢に土下座されて、ロッキーは困り果てます。なにせ自分は忙しい毎日で帰りも遅い。つまり愛する令子さんを志賀勝と狭い部屋で2人っきりにさせちゃう事になる。

「いや、その……俺はいいけどさ……」

「えっ? いや、私だって構わないわよ。せっかく頼って来てくれたんだし……」

アホのロッキーは、そんな令子の社交辞令を真に受けちゃいます。

「よし、決まった!」

「ええっ?」

かくして、新婚夫婦と志賀勝との奇妙な、そして極めてデンジャラスな同居生活が始まっちゃうのでした。

しかもアホのロッキーは気づいてません。アパートの表にビニール傘が無造作に捨てられてることに。そう、矢沢は表まで傘をさして来たのに、それを捨ててわざとズブ濡れになったのでした。怖い怖い怖い怖い!



翌日、ロッキーが矢沢と一緒に求職活動してると聞いて、藤堂チームの同僚たちは驚きます。

「矢沢と言えば、人の弱味を握ってはユスったりタカったりの前科三犯。取調べでも嘘をつきっ放しでロッキーが手こずったヤツだよ」

「そんなヤツを家に泊めるなんてアイツ、人が好すぎますね」

「ドック、そりゃ無いですよ。我々の仕事は犯罪者を刑務所へ送り込んだらそれっでいいってもんじゃないでしょう?」

「ご立派! お説ごもっともだよ、建前はね」

「俺は本音の話をしてるんですよ?」

「あ、ほんね?」

(↑私じゃなくて神田さんのセンスです、念のためw)

そんな同僚たちの心配をよそに、お人好しロッキーは顔を毛むくじゃらにしながら矢沢の職探しに奔走します。

だけど、いかんせん矢沢は前科者である上に、顔が……

しかも、せっかく決まりかけても矢沢本人が渋ったりして一向に出口が見えて来ない。彼は本当に働く気があるのか?



そんな折り、七曲署管内の二大暴力団=竜神会と響組が臨戦態勢に入ってるとの情報が入り、藤堂チームに緊張が走ります。どうやら響組が竜神会を潰しにかかっており、大阪支部から大幹部が乗り込んで来るらしく、竜神会がそいつの命を狙う可能性がある。

もし、それが実行されれば全面戦争になりかねず、藤堂チーム総出で監視にあたるんだけど、ロッキーはたびたび矢沢に呼び出されて捜査に集中出来ません。

「悪いけど1人で回ってくれよ、な?」

そう言ってロッキーが捜査に戻っても、矢沢は一係室にまで押しかけ、いきなり至近距離で顔を見てしまったナーコ(友 直子)を卒倒させますw



「刑事は保護士でもボランティアでもないんだから、協力にも限度ってものがあるんだよ!」

腹に据えかねてそう怒鳴ったのは、ロッキーじゃなくてドック(神田正輝)でした。ところが当のロッキーは、顔を毛むくじゃらにしながら矢沢を庇います。

「ドック、矢沢はオレを頼って来たんです! 余計な世話を焼かないで欲しいんですが」

「余計? 協力すんのはいいけど自分の仕事はどうすんだよっ!?」



見かねたボス(石原裕次郎)が2人を刑事部屋に呼び戻します。

「ロッキー、よく考えてみろ。矢沢がお前に恨みを持ってるようなことは無いか?」



確かに、そう考えれば辻褄が合うんだけど、ロッキーは毛にまみれながらキッパリと言います。

「ありません。ボス、矢沢はそんな悪い男じゃありません。ただ拗ねてるだけなんです」



「気に入った職が見つかって、人に信頼されるようになれば、きっと立ち直ると思うんです。オレはそう信じてます!」

「分かった、それなら力になってやれ。最後までな」

「はい!」

ロッキーよ、そこまで志賀勝を信じて本当に大丈夫なのか? お人好しにも程があるのでは? ドックならずとも心配になっちゃいます。

けど、とことん人を信じ抜くスピリットは、2年間寝食を共にした愛するパイセン=ボン(宮内 淳)から受け継いだもの。そう考えると応援しないワケにいきません。

ところが!

令子さんがスーパーで買いもの中、いきなり矢沢と鉢合わせし、間近で顔を見てしまって卒倒! もしかして矢沢は、令子さんを尾けて来た? 何のために!?



しかもその夜、張り込みで忙しい毛の旦那はなかなか帰って来ず、令子さんは狭い部屋で志賀勝と2人っきり。あの顔を間近で見ながら食事する羽目になっちゃいます。当然、食欲は急降下w

「奥さん、もっとよく食べないと。お腹の赤ちゃんによくないっスよ?」



同じセリフでも、言う人の顔によって脅しに聞こえたりしちゃう。矢沢はその上ドスの効いた巻き舌で、何を言っても脅しに聞こえちゃう!

「旦那さん、遅いですねえ。ひょっとしたら今夜、帰れないかも知れませんねえ」



怖い怖い怖い怖い怖い! いくら男勝りで知られ、あの北極熊みたいな旦那を尻に敷いてる令子さんでも、深夜に志賀勝と2人っきりは怖すぎる! 胎教にも悪すぎる!



たまらず、令子さんは矢沢がトイレに立ったスキにロッキーに電話します。

「あなたお願い、早く帰って来て!」



恐怖劇場はまだまだ続きます。電話を切って令子さんが振り返ると、果物ナイフを手にした志賀勝が目の前に! うぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!



「このリンゴ、食っていいスか?」

笑えない! 怖すぎて笑えない!!

「あっ!」

さらに志賀勝は畳み掛けます。うっかり(?)つまずいた矢沢が前屈みに転んで、持ってたナイフがたまたま(?)配線コードを切断! ブレーカーが落ちていよいよ部屋が真っ暗に!!

「きゃあああぁぁぁーーーっ!!!」

思わず逃げようとした令子さんもつんのめって転倒! 矢沢がブレーカーを上げて明るくなった部屋には、頭から血を流して倒れてる令子さんの姿が!

「お、奥さん? ……奥さん……」



いったい何が目的なんだ志賀勝!? 身重の妻を放ったらかしにして何やってんだロッキー!? そして令子さんの運命や如何に!? (つづく)




 


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『太陽にほえろ!』#445

2022-01-10 16:55:34 | 刑事ドラマ'80年代

前の週に放映された#444『ドック刑事のシアワセな日』にメインゲストとして招かれたのは、間もなく『西部警察』にレギュラー入りする「イッペイ」こと峰竜太さん。

そして今回のメインゲストがちょっと前に『西部警察』を卒業されたばかりの「ジン」こと、五代高之さん!

石原プロモーション所属の神田正輝さんが加入されたことがキッカケかどうか分からないけど、東宝制作の『太陽にほえろ!』と石原プロとの関係がより密になり、ドック(神田さん)が西部署に、そして『西部〜』の大門団長(渡 哲也)が七曲署に出張して大活躍するという、放映局(日テレとテレ朝)の垣根を越えたクロスオーバー企画がかなり具体的に検討されてたんだとか。

しかし両作品の大黒柱である石原裕次郎さんが程なくして倒れられ、それどころじゃなくなっちゃったのが残念でなりません。

もし実現してたら、ボス=藤堂係長と木暮課長は「そっくりさん」あるいは「双子のブラザー」として扱うつもりだったのか、そして後に係長代理として七曲署に着任する橘警部(渡さん)は大門団長、あるいは彼の「双子のブラザー」として登場する事になったのか、興味が尽きませんw

おっと、石原良純さんの「ジュン」と「マイコン」もそうでした。どっちも殉職してないから競演可能、あのド暑苦しい顔が2つ並んじゃう放送事故も有り得たかも!?



☆第455話『人質を返せ!』

(1981.2.20.OA/脚本=峯尾基三/監督=鈴木一平)

七曲署で留置場の看守を長年務め、ゴリさん(竜 雷太)に可愛がられてた平野巡査(五代高之)が城北署捜査一係の刑事に昇格することが決まり、ゴリさんも自分の事のように大喜び。

そんな折り、麻薬Gメンの五十嵐刑事が射殺死体となって発見され、藤堂チームは彼が追ってた覚醒剤密造のプロ=古賀(笹入舟作)に容疑を絞り、銃撃戦の末に逮捕します。

ところが五十嵐殺しに使われた銃と古賀が持ってた銃は別物と判明。古賀の背後にいる覚醒剤組織が事件に関わってることは明白で、藤堂チームは古賀の取調べを続けつつ真犯人探しに奔走します。

そんなある夜、もうすぐ看守係を卒業する平野巡査が、こともあろうに古賀を密かに脱走させようとして、栄光のゴリパンチを授かる羽目になります。

せっかく昇進が決まったばかりだというのに、一体なぜ!? ゴリさんに追及され、平野はアパートで一緒に暮らす妹の圭子(平野真理)が誘拐されたこと、そして彼女の命と引き換えに古賀を逃がすよう脅迫されてることを告白するのでした。



平野のアパートに送られて来た脅迫ビデオ(圭子が男どもに押さえつけられて『あぁぁーっ、いやよ助けてお兄ちゃん! んんん〜、お兄ちゃん……はぁはぁ、お兄ちゃん』ってw、どう観ても近親相姦の裏ビデオ!)の映像を皆で食い入るように観た藤堂チームの刑事たちが、一瞬だけ映った窓外の風景を手掛かりにしてアジトを発見するも、見つかったのは圭子のハンドバッグと血痕だけ。



それでも必死の捜査でマークした容疑者をあえて泳がせるも、焦った平野の暴走により取り逃がしちゃう大失態。

「オレが身代わりになってもいい、石塚さん! 圭子を取り戻して下さい! お願いします!!」

そう言われても、もし悪党どもの要求を呑んで古賀を釈放してしまえば、今後も同じ手口が繰り返され警察が無力化してしまう!

さすがにゴリさんも焦燥し、殺しに関しては無実の古賀を締め上げ、半殺しにしかけてあの狂犬スコッチ(沖 雅也)に「正気ですか!?」と言われちゃう始末w



打つ手が無くなったゴリさんはいよいよクビを覚悟し、西部署から学んだムチャクチャ作戦をボス(石原裕次郎)に提案します。

「危険な賭けだな」

「自分にやらせて下さい。責任は取ります!」

 

しわしわのホルスターに収められたCOLTトルーパーと警察手帳と手錠を差し出すゴリさんだけど、ボスは受け取りません。

「いいだろう。ただし、これは一係としてやる」



その作戦とは、古賀を本庁へ護送する道中でド派手な交通事故を起こし、わざと古賀を逃走させちゃう一世一代の大芝居。西部署じゃ日常茶飯事だけどw、生真面目プロデューサー岡田さんの監視が厳しい七曲署ではほとんど前例がありません。



もちろん、事故を起こして古賀にフルボッコにされる役目は、現時点じゃ一番新顔のドック(神田正輝)が務めます。



「もう二度とこんな役やだぁ!」



そうして古賀を泳がせ、鉄壁のチームワークで追跡した藤堂チームは、ついに敵アジトを突き止め、怒涛の銃撃戦へと雪崩れ込みます。ホントにまるで『西部警察』だ!w



ボスと山さん(露口 茂)以外のレギュラー全員が参加する銃撃戦っていうのも『太陽〜』じゃ滅多に観られないレアシーン。後期のメンバー(デュークとかマイコンw)じゃサマにならないけど、ゴリさん、スコッチ、ドックが揃ったGUNアクションはそれだけで見応え充分!

同じ鈴木一平監督による#442『引金に指をかけない』と比べるとアッサリしたもんだけど、やっぱ拳銃がサマになる役者が揃った銃撃戦は迫力あります。こういうのをもっともっと見たかった!



もちろん覚醒剤組織の一味は一網打尽、人質の圭子は無事に救出されました。リアルに考えりゃ無事に済んでるワケが無いんだけど、なぜか夜8時台の刑事ドラマに登場する悪党どもは皆、性欲というものが無いみたいですw(去勢された鬱憤で悪い事しちゃうのかも知れません)



そしてラストシーン。事件は解決したけど、古賀を脱獄させようとした責任を取って平野巡査は辞職したらしい……と聞いて刑事たちはシンミリしちゃうんだけど、実際に古賀を逃したのは自分たちだという事実をすっかり忘れてるみたいですw



「ところで、平野の再就職先なんだがね」

「ボ、ボス! お願いします! お願いします!」

毎度お馴染み、その回の主役刑事とボスのツーショットで静止するラストカット。ワンパターンなのは良いんだけど、特に「オチ」が無いまま終わっちゃうのを不満に感じるのは私が大阪生まれだからでしょうか?w

ジーパンやテキサスの頃は毎回ちゃんとオチてたと思うんだけど、ボン&ロッキーの頃から「オチなし」の回が増えて来たような気が……

「いや、そういうドラマじゃないから」って事かも知れないけど、どうせコミカルに締めるならオチは必須だと私は思う。こんなクレームを入れる視聴者は、まぁいなかったでしょうねw



拉致監禁されちゃう圭子に扮した平野真理さんは、当時22歳くらい。『科学戦隊ダイナマン』(’83〜’84) の王女キメラ役で知られる女優さんで、その時には「香野麻里」に改名されてました。

今回調べて初めて知ったけど、五代高之さんと結婚されてるんですよね! もしかしてこの回での共演がきっかけ?

この後『太陽〜』には#460、#474、#513 にもご登場、刑事ドラマは他に『鉄道公安官』『Gメン'75』『特捜最前線』『非情のライセンス』『大激闘/マッドポリス'80』『爆走!ドーベルマン刑事』『私鉄沿線97分署』『刑事物語'85』等々、多数ゲスト出演されてます。


 

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『太陽にほえろ!』#442

2021-12-11 00:38:51 | 刑事ドラマ'80年代

これはマジで傑作です。数ある『太陽にほえろ!』GUNアクション編の中でも、私はこれがBEST1じゃないかと思ってます。

このエピソードのどこがそんなに優れてるのか、具体的に検証しながらレビューしたいと思います。



☆第442話『引金に指はかけない』

(1981.1.30.OA/脚本=小川英&土屋斗紀雄/監督=鈴木一平)

スニーカー(山下真司)が非番の日、妹から頼まれて預金に行った銀行で、強盗事件に出くわしちゃいます。賊は覆面を被った3人の男で、そのうち2人は拳銃、1人はライフルを所持しており、対して非番のスニーカーは丸腰なもんで手が出せません。

ところが、よく見ると拳銃を持ったヤツは(暴発を避けるため)引金に指をかけてない。チャンス!とばかりに飛びかかったスニーカーだけど、あえなくライフル男に頭を殴られて卒倒!

しかもそのライフル男、現金を奪って目的は果たしたというのに、貸付課長の山口(山中康司)をわざわざ射殺して逃走しちゃう。

スニーカーが目撃した以上の事柄を踏まえ、藤堂チームは山口課長に恨みを持つ人間を洗い出すことから始めるんだけど、そこからは何も浮かばず捜査は難航し……

先に結論を書きます。ライフル男の正体は、山口課長とはいっさい関わりの無い片桐竜次だった! じゃあ、なぜ片桐竜次は、何の恨みも無い山口課長をわざわざ殺したのか?

その答えは、全く無関係な相手を殺すことで捜査を撹乱させる為。なんちゅー非道かつ冷酷で狡猾な輩なんだ片桐竜次! 強盗仲間は無意味な殺生をしないよう引金に指をかけてなかったのに!



しかも片桐竜次は、奪った金を独り占めする為、強盗仲間を2人とも殺しちゃうんだけど、1人は車でわざわざニ度轢きし、もう1人はナイフで何十箇所も刺して息の根を止めるという残忍さ。

それだけでも充分異常なのに、片桐竜次はさらに、仲間から奪った拳銃で現場近くにいた野良犬まで射殺してしまう!

本エピソードの素晴らしい点、その1。この血も涙もない片桐竜次の徹底した殺人マシーンぶり! つまりどんな相手でも躊躇なく殺しちゃうヤツが敵だから、俄然アクションに緊張感が生まれる。

しかも、片桐竜次がなぜそんなマシーンになって、わざわざ犬まで殺しちゃうのか、ちゃんとした理由が設定されてる点もまた素晴らしい! 裏付けがあることでリアリティーが生まれ、それが更に緊張感を増してくれるワケです。さて、その理由とは一体何なのか?



ここで中盤の見せ場。検問に引っ掛かった片桐竜次が警官を射殺して車で逃走、いち早く駆けつけたスニーカーとドック(神田正輝)の覆面パトカーが追跡します。



そしてハンドル操作を誤った片桐竜次の車が横転! しぶとくライフルを持って逃走する竜次を追ってドックとスニーカーが激走!



ここで片桐竜次が再びやらかします。なんと、通りがかりの老人にライフルの銃弾を浴びせ、刑事たちがそっちに気を取られたスキに逃げるという鬼畜ぶり!



だけどスニーカーも負けてません。100メートルくらい先を走る片桐竜次に狙いを定め、愛銃COLTパイソン357マグナムを発砲! 見事、竜次の左腕に傷を負わせます。



利き腕の右なら尚よかったけど、4インチのリボルバーでこの距離なら当たっただけでも奇跡でしょう。ただしボス(石原裕次郎)はかつて、飛行中で激揺れのヘリコプターから、300メートルぐらい先の山小屋に立て籠もる清水健太郎の眉間を1発で、しかもパイソンより命中精度が低そうなローマン4インチで撃ち抜いたけどw



残念ながら片桐竜次を見失ったスニーカーだけど、ヤツに傷を負わせた事が後に、捕獲へと繋がる大きな役目を果たす事になります。

それはなぜか? 藤堂チームの捜査により、片桐竜次は「RHマイナスAB型」という、かなりレアな血液型の持ち主だった事が判明。そしてその血液型こそが、竜次を鬼畜たらしめた大きな要因だった!

つまり、あまりにレアな血液型ゆえ、もし出血多量の重傷を負った時、すぐに輸血が出来ないかも知れない。だから竜次は野良犬まで射殺したワケです。もし咬まれて出血したら生命に関わるかも知れないから。そして……

「不利なハンデを背負わされた自分には、人間も犬も殺す権利がある」

それが平気で人を殺せる理由だろうと刑事たちは推理するのでした。

「冗談じゃない! 誰だって色んなハンデを背負って生きてるんだ!」

怒るスニーカーにボスが言います。

「喚いてるヒマがあったら、ヤツの行動の先を読め」

そう、スニーカーが放った弾丸により傷を負った片桐竜次は今、それがかすり傷だとしても生命の危機を感じてる筈。必ず病院に輸血を頼みに行くに違いない!



他人の生命は平気で奪うクセに、自分が死ぬのは怖くてたまらない超自己チュー人間、その名は片桐竜次! 一晩ガマンはしたものの、朝になってたまらず町医者に駆け込み、ライフルで脅して輸血を強要。もちろん血液センターにRHマイナスAB型の血液が要請され、そこに網を張ってた藤堂チームが町医者へ急行!

本エピソードの素晴らしい点、その2。謎解きは手際よく前半で済ませ、ここからラストまで怒涛の追跡劇をノンストップで見せる、このシンプルさ! もちろん、理由その1(リアリティーと緊張感)のお膳立てがあればこそシンプルでいられるワケです。

さあ、ここから『太陽にほえろ!』史上……いや、日本のアクションドラマ史上屈指とも言える追跡&銃撃シーンが展開されます。



本エピソードの素晴らしい点、その3。片桐竜次という名の狂犬を閑静な住宅街へ逃げ込ませるというシチュエーション設定の秀逸さ!

これが繁華街ならすぐパニックが起きてメチャクチャになるけど、昼下がりの住宅街だと人もまばらだし、誰も平和な町でライフルを持った片桐竜次が眼を血走らせながら向かって来るとは夢にも思わない!

しかも当時は、まだ子供たちが公園や道端で(親がついてなくても)ふつうに遊べた時代。自分が逃げ切る為なら通りがかりの老人でも平気で撃っちゃう狂犬が、もし子供や買い物帰りの主婦を見つけてしまったら……!

つまり刑事たちは、ただ犯人を追うだけじゃなく、出くわしてしまった全ての市民をライフルの凶弾から守らないといけない。その緊張感たるや! これぞ本物のスリルとサスペンス!

そして本エピソードの素晴らしい点、その4。臨場感満点のカメラワーク! 例えばこの、片桐竜次を追って激走するスニーカー、ドック、ロッキー(木之元 亮)を、ゴリさん(竜 雷太)が覆面パトカーで追い抜いて行くシーン。



カメラはわざわざ、走る刑事たちを車内から、運転するゴリさん越しに捉えるんですよね! こういう撮影はすごく手間がかかるんだけど、このカットがあるのと無いのとじゃ我々視聴者が味わうライブ感が全然違って来る。

直後に展開する銃撃戦も、鈴木一平監督はものすごく丁寧に演出されてるんですよね。タイトなスケジュールゆえ常に時間に追われてるTVドラマの撮影で、この丁寧さは異常とも言えるかも? 素晴らし過ぎる!



片桐竜次は通りがかりの親子連れや新聞配達員を狙ってライフルを乱射しつつ、だだっ広い駐車場を抜け、遊園地の跡地へと逃げ込みます。

刑事たちもそのつど市民をガードしながら、鉄壁のチームワークで何とか食らいつき、いよいよ壁際まで竜次を追い詰めます。



この場面も、片桐竜次と刑事たちの位置関係がよく判るよう、あらゆるアングルからカットを重ね、実に丁寧に撮影されてます。それが臨場感を生むんですよね!

他のアクションドラマ、例えば『西部警察』の銃撃戦シーンを観ると、やたら銃をぶっ放す刑事や悪党たちのバストショット(寄りの画)ばかり続いて、誰が誰を狙って撃ってるのか全然判んないから凄い大雑把に感じちゃう。

黒澤明監督の『七人の侍』がアクション映画の教科書みたいに云われるのは、戦いが始まる前の作戦会議シーンで、わざわざ見取り図を使って戦場の地形や敵・味方の配置を我々観客に把握させたりする丁寧さがあったから、だと思うんですよね。

昨今のアクション映画って、スピードと勢いだけは凄いんだけど、画面で何が起こってるのかよく判んないことが多いですよね? 演出が雑なんですよ!

その点『太陽にほえろ!』のアクション演出はすごく丁寧。必ず引きの画を入れて人物の位置関係を我々に把握させてくれる。それが臨場感を生むワケです。



閑話休題、いよいよクライマックス! せっかく片桐竜次を追い詰めたところでタイミング悪く、小学生の子供2人が何も知らずに遊びに来てしまう! それを竜次が目ざとく見つけてしまった! あかん、絶対殺される!!

「オレが行きますっ!!」



スニーカーが飛び出し、ロッキーとドックが援護射撃! 

ここで鈴木監督は、S&W M59を連射するドックを右サイドから、つまりオートマチック拳銃がブローバックして空薬莢を排出する様が一番よく見えるアングルから据え、しかもドック越しに走るスニーカーとゴリさんまでワンショットで見せてくれる! こんなのTVドラマで観たこと無い!

もはや丁寧を飛び超えマニアックとも言える演出で、これは恐らく相当なガンマニアであろう神田正輝さんの提案が活かされたと推察します。

そもそも当時はまだ、テレビのアクション物で使うプロップGUN(小道具のピストル)は電気発火が主流で、ブローバックが見られること自体が珍しかった時代。MGCモデルガンのM59が快調に動いてくれたお陰もあるにせよ、これはホントに画期的な演出だったと思います。素晴らしい!



さて、再び閑話休題。お互いの銃口が触れ合う距離まで片桐竜次に迫ったスニーカーは、決死の覚悟でこう言います。

「撃つなら撃て。お前が撃てばオレも撃つ!」



「オレは死なんかも知れん。すぐに輸血が出来るからな。しかしお前は確実に死ぬぞ」



『ダーティハリー』1作目の犯人=スコルピオンは本物のサイコパスだったから、似たようなシチュエーションでハリー刑事を撃とうとし、マグナム44であえなくぶっ殺されたけど、しょせん片桐竜次は死ぬのが何より怖いフツーの人間でした。あっさりライフルを捨て、毛むくじゃらの刑事に手錠を掛けられます。

やれやれ、何とか死人を出さずに済んだ……安堵したゴリさんが、ふとスニーカーを見て驚きます。



彼が構えるCOLTパイソンの引金には、指がかかっていませんでした。

「スニーカー……」

「……殺したくなかったんです」

ちょっと前の事件で初めて犯人を射殺したトラウマもあろうけど、スニーカーはきっと片桐竜次も「人間」であると信じたんでしょう。



このエピソードだけは何回観ても飽きません。こんな話をもっともっと創って欲しかった! 銃弾1発を極めて重く扱う『太陽にほえろ!』ならではの傑作だと思います。

ただ1つだけ残念なのは、あの緊迫した銃撃戦においてあのゴリさんが、なぜか最後まで拳銃を抜かなかったこと。これは不自然!

警視庁屈指の射撃の名手であるゴリさんが銃を抜いたらすぐに解決しちゃうから? あるいはゴリさん用のプロップGUNを小道具さんが忘れちゃったとか?

なんにせよ、ゴリさんがこの時だけ銃を使えない理由を設定して欲しかったです。途中で左腕を撃たれちゃったけど、だったら利き腕の右にしとけば明快な理由になり得たのに! ホントここだけはよく解んない。なぜ!?

まあ、そんな些末なことがすこぶる残念に思えるくらい、作品のクオリティーが抜群に高かったって事です。スニーカー刑事は不遇なキャラだと云われがちだけど、このエピソードで主役を張れただけでも充分報われたんじゃないでしょうか?
 

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『太陽にほえろ!』#439

2021-12-06 16:40:45 | 刑事ドラマ'80年代

あの『太陽にほえろ!』が未成年のセックス問題を取り上げた!? セックスセックス!? と、たったそれだけのことで話題になった1981年新春一発目のチョメチョメ話。

セックスを匂わせる表現すらタブーにして来た永遠の童貞番組『太陽にほえろ!』が、一体どんなセックスを描いたと言うのか!? セックスセックス!

えっ? ボス(石原裕次郎)が!? あのボスがチョメチョメを? しかも女子高生とチョメチョメ!?



☆第439話『ボスの告発』

(1981.1.9.OA/脚本=小川英&古内一成/監督=山本迪夫)

事の発端は、向井という男子高校生(岸 正明)が、3人の輩たちにフルボッコにされ重傷を負った傷害事件。

藤堂チームが動き出し、被害者の向井と、病室で彼に付き添うガールフレンドの辻本美奈子(白石まるみ)に犯人の特徴を尋ねるんだけど、なぜか2人ともマトモに答えてくれない。明らかに何かを隠してる。

そこで普段は電話番のボスが急に張り切りだして、スナックでバイトする美奈子に身分を隠して接近し、店で弾き語りをする彼女に歌のレッスンを施して油断させ、チョメチョメしたかどうかは不明だけど心を開かせ、事件の真相に迫ります。

どうやら、1年前に美奈子の親友だった女の子がチンピラに「乱暴」され、父親の訴えで立件されたんだけど犯人が「合意の上だった」と主張した為、彼女は何度も繰り返し警察や法廷に呼ばれ、恥ずかしいあんな事やこんな事をさんざん尋問された挙げ句、高架から線路に飛び込んで自殺しちゃった。

「警察なんかに訴えなきゃよかった……」

自殺する前日に、彼女が電話で洩らしたその一言が、美奈子を警察不信にさせたワケだけど、それが今回の事件とどう繋がってるのか?

恐らく、また似たような事件、つまり女子が輩に「乱暴」される事件が美奈子の身辺で起きた。だから自殺した親友の轍を被害者に踏ませないよう、真相を隠してるんじゃないかと刑事たちは推理します。



再び美奈子に接近したボスは、半月前に泉(青木 純)という同級生が大学生に「乱暴」された事実を巧みに聞き出します。

それで美奈子は空手の有段者である向井にボディーガードを頼み、犯人の親に慰謝料を請求した。恐らく向井はその報復あるいは見せしめで、犯人に雇われた輩たちにフルボッコにされた……という流れ。

これでいきさつは分かったものの、一番知りたい犯人の正体は不明のままで、それを聞き出すにはもはや、ボスも本当の身分を明かすしかありません。



「汚い……汚いわ!」

ボスが示した警察手帳を見て、美奈子は態度を一変させます。そりゃそうですよねw 嘘をつくなら最後までつき通さなきゃ! だけどそれが出来ないのがボスであり『太陽にほえろ!』という番組なんです。青春ドラマなんです。

とにかく真相が判った以上、今回の件を単なる傷害事件で済ませるワケにはいきません。半月前に泉を「乱暴」した大学生を捕まえ、それ相応の罰を与えなきゃならない。

だけどそれを実行するには、まず当事者である泉に証言してもらわなきゃいけません。



「お願いだから泉をそっとしといてあげて! 今さらイヤなこと思い出させることないでしょう?」

刑事たちが半月前の事件を調べ始めたことを知り、美奈子は一係室にまで怒鳴り込んで来ました。

「そんなことより犯人の親から金を取るようなことはやめなさい。恐喝になるぞ」

「そんなことあなたに関係ないでしょう!?」

美奈子に何と言われようと、ボスは捜査続行の意志を曲げません。

「なんで!? どうして罪の無い女の子を傷つけるの !?」

そこがこういう事件の一番難しいところ。チョー生真面目番組『太陽にほえろ!』は、果たしてどんな回答を示すのか?

ともかく捜査は進み、向井をフルボッコにした三人組は連行され、取調べにより黒幕は宮島(田中 隆)という大学生であることも判明します。つまり半月前に泉を暴行したのも宮島に違いありません。

ここまで判れば、あとは泉の証言を取るだけ。ゴリさん(竜 雷太)とスコッチ(沖 雅也)の真摯な説得により一時は口を開きかけた泉だけど、それを全力で阻止したのは美奈子でした。

「ダメ! 何も喋っちゃダメよ、警察ってすっごい汚い手使うんだから!」



「ありゃあ徹底抗戦のかまえだなあ……」

美奈子のガード役を任されたドック(神田正輝)がボヤきますが、常にクールなスコッチが今回もクールに決めます。

「むしろ辻本美奈子の方が心配だな。張り詰めた糸は切れやすい」

その台詞、オレが言いたかった!って、横にいるゴリさんは思ってるに違いありませんw

さて、こんな時こそ頼りになるのが山さん(露口 茂)です。まず説得すべきは美奈子の方だと判断した山さんは、なぜ泉を傷つけてでも犯人を逮捕すべきなのか、今回のエピソードの核心=レイプ被害者に対する『太陽にほえろ!』からのメッセージをここで代弁します。



「向井くんを襲った三人組は、我々に対しても実に平然としていた。なぜだか分かるかね? キミらが決して警察に訴えないことを知ってるからだ」

「!!」

「友達を傷つけた犯人は、きっとまた同じことを繰り返すだろう。どこの誰とも知れないその犠牲者を救う道は1つしかない。犯人を逮捕することだ。解るね?」

「……解りません! 解りたくありません! 私、これ以上友達の苦しむ顔、見たくありません!」

なんと! あのいぶし銀=山さんの説得まで突っぱねてしまう女子高生、その名は辻本美奈子! むしろ天晴です!

そんなワケでドックたちの尾行をかわし、慰謝料をふんだくるべく犯人の宮島と接触した美奈子は、当然のごとく輩たちに囲まれ、あわやレイプ被害者の仲間入りを果たすことに……

「お前はさ、何をしたってサツには訴えないからさ。気に入ってんだよ、うひひひひ」



もちろん、宮島の父親(根上 淳)を説得して隠れ家を聞き出したボスにより、空手有段者の向井をフルボッコにした強者たちは瞬殺されます。



「たたっ、助けてくれ! か、金か? 金なら払うから!」

そんな陳腐な決まり文句をほざくレイプ魔=宮島も、ボスの必殺ばかもんパンチで宇宙の彼方へと飛んで行きます。

「間に合って良かった」

「怖かった……でも、襲われたのが私で良かった……私で良かった!」

そう言って胸に飛び込んで来た美奈子を抱きしめたボスは、決して「そんなに襲われたいのかうひひひひ」とか「おいおい、本番はこれからじゃないかうひひひひ」なんて言ったりはしません。



劇中では「レイプ」とか「強姦」といった言葉はいっさい使われず、ゲストの白石まるみさん演じる美奈子自身はレイプ被害者じゃなかったりする点に甘さを感じなくはないけど、これが『太陽にほえろ!』で可能な限界ギリギリの表現でしょうから、あえてタブーに踏み込んででも伝えたかった作者のメッセージを、我々は真摯に受け止めるべきかと思います。

白石まるみさんは#408『スコッチ誘拐』に続いて2度目のゲスト出演。以後も#560、#617、#629と番組終盤まで度々ご登場、このブログでも『誇りの報酬』#03や『あさひが丘の大統領』#25等のレビューに登場されたお馴染みの女優さんです。


 


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『特捜最前線』#215 (再)

2021-11-29 18:50:13 | 刑事ドラマ'80年代

さて、'80年代作品に戻りましょう。風吹ジュンさん繋がりで、テレ朝&東映系刑事ドラマの最高峰『特捜最前線』の、1981年に放映されたこのエピソード。

過去記事のリバイバルになりますが、自分でレビューを読み返しても泣いちゃうくらい、実によく出来たストーリーなので、より多くの読者さんに届けるべく画像を大幅に増量し、再掲載させて頂きます。



☆第215話『シャムスンと呼ばれた女!』

(1981.6.17.OA/原案=内館牧子/脚本=橋本 綾/監督=辻 理)

横浜のドヤ街で10kgの覚醒剤が取引されるというタレ込み電話を受け、日雇い労働者を装って潜入捜査する、桜井刑事(藤岡 弘)と紅林刑事(横光克彦)。

冒頭で披露される、藤岡さんのガテン系コスプレがあまりに似合い過ぎてて笑っちゃいますw ほんと、果てしなく肉体派ですよねw



で、場末のスナックで見かけた売春婦=通称シャムスン(風吹ジュン)がシャブ中である事に気づいた桜井は、彼女に接近し、思いっきり漢のフェロモンを撒き散らしますw

そう、桜井はシャムスンをナンパし、自分の女にして覚醒剤組織の正体を掴もうとしてる。かねてから麻薬絡みの事件には異常なほど執念を燃やす桜井は、組織摘発の為なら手段を選ばないのです。

そんな弘に騙されて、これまで誰とも口を聞かず、一切笑顔を見せなかったシャムスンが、徐々に心を開いて行きます。



ところで、なぜ彼女はシャムスンと呼ばれるのか? 書店で外国語の本を物色した桜井は、アラビア語の辞書にその言葉を見つけて、急にニヤニヤし始めます。

「冗談だろ? えらく冗談好きなヤツがいたもんだね、こいつは。ハッハッハ、参ったなあ」

ガテン系コスプレのまま、あの濃い顔で独り言を呟きながらヘラヘラ笑う桜井刑事。さぞ周りのお客さんは不気味だった事でしょうw



やがて、特命課の捜査でシャムスンの過去が判明し、それを知らせに来た紅林刑事は、すっかり男女の仲になった様子の桜井&シャムスンを見て驚愕します。

一匹狼の桜井は例によって、自分の捜査方針を同僚達に一切知らせてなかった。あまりにダーティーな桜井のやり方に、紅林は怒りをぶつけます。

「シャムスンは普通の人間から見ればクズみたいな女だ。しかし彼女だって人間だ! 感情のある生きた人間なんですよ!?」

「紅林!」

「それとも何ですか。あんた、本気であの女に惚れたとでも言うんですか? 平気でカラダを売るような淫売女に!」



次の瞬間、紅林は強烈なライダーパンチを浴びて、約25メートルほど吹っ飛びます。

「あ、すまん」

慌てて謝る桜井に、瀕死の紅林はシャムスンの過去を(自分が息絶える前に)教えようとします。

「いや、それなら分かってるんだ」

「そうですか。そりゃそうですよね、あの様子じゃ」

「他に無いんだったら、俺は……」

「シャムスンは人を殺したことも言いましたか?」

「!?」

桜井の濃い顔が固まります。シャムスンには、2人の男の死に関わったという過去があった。にわかに信じられない桜井は、シャムスンを問い詰めます。



かつてシャムスンと愛し合った2人の男は、いずれも不幸な境遇を背負い、彼女に心中を持ちかけた。シャムスンはそれを受け入れたんだけど、結果的に自分だけが生き残ってしまったという、まるで『嫌われ松子の一生』みたいな波瀾万丈バイオグラフィー。

「みんな、私がやったんだろうって。だから私、頷いた」

「頷いた? なぜ本当のことを言わなかったんだ?」

「どうでも良かったんだもん……捨て子で、施設で育てられて、15になったとたん世の中に放り出されて、助けてくれる人なんか誰もいなかった。頷くか、心を閉ざすしか、生きていけなかった」

自分と愛し合った男は、みんな不幸になる。シャムスンがそう思い込むのも無理ありません。

「だから、私が殺したんだよね」

「いや、殺したんじゃない。シャムスンは助けてあげたんだ。その2人の男をな」

「助けた?」

「ああ。俺がその男達だったら、きっとそう思うだろう」

最期の時間を、一緒に過ごしてくれるパートナーがいる。絶望の淵にいる人間にとってそれは、確かに唯一の救いだったかも知れません。

「ねえ……あんたも私のこと怒ってないよね? 私たち終わりじゃないよね?」

「……これからが始まりだよ、俺たちは。そうだろ?」

「本当? 本当にそう思っていいの? 本当にこれから始まるって思っていいのね?」



桜井は、本気でシャムスンを愛してしまったのか? それともやっぱり、覚醒剤組織を摘発する為に利用してるだけなのか? 顔があまりに濃すぎて、我々視聴者には彼の真意が読み取れません。

だけどシャムスンは、桜井を信じた。信じたからこそ「しばらく帰りません」という書き置きを残し、彼女は姿を消してしまう。

桜井は焦りますが、特命課がすぐにシャムスンの居場所を探し当てます。彼女は、ドヤ街にある小さな病院にいたのでした。



「シャブと縁を切ろうとしてるんです。これからが始まりだと言ってくれた男のために」

昔から知ってる町医者(織本順吉)に、シャムスンはクスリ抜きを志願し、隔離病室に籠もってた。

「生きたいと言ってるんですよ、シャムスンは。これからが始まり……シャムスンにとって、それ以上重い言葉はない」

これまで2度も人生を捨てかけたシャムスンが、桜井と一緒に過ごす未来の為に、大きく自分を変えようとしてる。桜井は、もう既に彼女の人生を背負ってしまった。

……ところが!



「桜井さん、あんた正気なんですか!?」

なんと桜井はシャムスンを退院させ、あえて泳がせるという手段に出た。つまり覚醒剤組織を摘発する為に、彼女をオトリに使おうとしてる。再び紅林が噛みつきます。

「シャムスンはね、あんたの為にシャブと縁を切ろうとして病院に入ったんですよ? それをまた引きずり出そうって言うんですか!?」

「お前さん達がどう思おうと構わん。俺は俺のやり方でやる!」

シャムスンは、桜井が外国に旅立つという情報を与えられ、病室を飛び出します。

「私、待っててもいい? あんたが帰って来るまで……私、あんたが帰って来る日までにちゃんとした女になってる! だから……」

そんなシャムスンに、桜井は優しい笑顔を見せ、甘い言葉を囁きます。

「待つ必要なんか無いよ。一緒に行こう。な? いつか言っただろ? 本当にシャムスンのある所へ……そこへ一緒に行こうって」

「一緒に?」

「そうだ。一緒だ」

シャムスンがすっかりメロメロになったところで、桜井は覚醒剤の包みを取り出し、こう言います。これを売って外国行きの資金を作るから、買い手を紹介してくれと……



かくして組織との接触に成功する桜井ですが、残念ながら……いや、天罰が下ったと言うべきか、正体がバレてしまいます。

「シャムスン、お前はハメられたんだ」

「ハメられた?」

「利用されたんだ、このデカに!」



組織の連中から真実を聞かされ、シャムスンはしばしボーゼン、そして自嘲の笑みを浮かべ、囚われた桜井を冷たく見下ろします。

鬼! 悪魔! 畜生! 濃い顔! せっかく芽生えた未来への希望を、この濃い顔の男に全て奪われたのです。

「私にこの人ちょうだい……今度こそ本当にあの世に行く。この人と一緒に……」

2人で心中してくれりゃ好都合って事で、連中はシャムスンにナイフを手渡します。

「あんたのせいよ……あんたがいけないのよ」



ためらう事なくシャムスンは、桜井の腹にナイフを突き刺します。一切抵抗せず、黙って潔く刺される桜井。縛られて抵抗出来ないし、猿ぐつわされて声が出せないだけかも知れないけどw

……と、その時! 桜井の持ち物から、組織の連中がある物を発見します。それは、赤い表紙の小冊子2冊。

「パスポートだ。ヤツとシャムスンの」

「!?」

シャムスンは理解します。やっぱり桜井は、本当にシャムスンと一緒に旅立つつもりだった! 刑事の職を捨てる覚悟で……

「知らせてあげる。あんたの仲間に」

シャムスンの言葉を聞いて、初めて桜井が、首を激しく横に振ります。

桜井の仲間、つまり特命課の刑事たちがアジト(ビル)の外まで来てるのに、部屋が特定出来ず踏み込めないでいる。4階にあるこの場所を知らせるには……



桜井は涙を流しながら止めようとしますが、どうする事も出来ません。

「本当に連れてってくれるつもりだったんだね、私の国に……私、それだけでいい。後のこと全部ウソでも……それだけでいいんだよ」

そしてシャムスンは、窓ガラスを突き破って……



外で待機してた紅林と神代課長(二谷英明)が、落下して来る女の姿を目撃します。

「シャムスンだ!」

「4階! 4階の西側だっ!」

かくして、覚醒剤組織は特命課によって制圧され、桜井は無事救出されます。もちろん、ナイフで刺された位でライダーは死にません。



シャムスンの面倒を見てたスナックのママ(横山リエ)は、桜井を人殺し呼ばわりして非難しますが、例の町医者がボソッと呟きます。

「知っていたのかも知れんな、シャムスンは」

そして、桜井にだけ告げていた、ある事実を告白するのでした。

「シャムスンはとっくに死んでた。いや、死んでもおかしくない体だったんだよ」

だけどシャムスンは、桜井を愛することで持ち直した。桜井は、危険を冒してでも事件を早く片付けて、彼女を少しでも長く生きさせようとしたワケです。本当に刑事を辞めて、残りの時間を一緒に過ごすつもりだった。

それが、桜井という男なんですね。藤岡弘さんが演じなければ成立しないキャラクターです。



「帰って行くようだな……生まれた所へまっすぐ帰って行くようだ」

シャムスンの葬儀に参列した神代課長が、焼却炉から空に向かっていく煙を見上げて、傍らにいる紅林に言いました。

「シャムスンだよ」

その煙が向かう先に見えるのは……

「太陽?」

「シャムスンというのは、太陽という意味だ」

「そうですか……太陽なんですか」



シャムスンは、桜井に殺されたんじゃない。きっと彼女は、助けてもらったと思ってる筈です。あの、濃い顔の男に……

このエピソードを経て、荒くれ暴走刑事だった桜井が、徐々にマトモな刑事へと進化して行きます。桜井自身もまた、シャムスンに救われたのかも知れません。


 

コメント (4)
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