源氏物語と共に

源氏物語関連

大君  (総角)

2008-10-21 12:57:42 | 登場人物
若い頃に口語訳を読んだ時、大君があまり好きではありませんでした。
どうしてここまで薫を拒否するのか。


何となく暗い人だなと感じていたのですが、
この度、講座の予習に総角(あげまき)を読んですっかり考えが変わりました。
今回はその感情に大変共感しました。


たぶんこれは私自身が年齢を重ねた事もあるかもしれませんし、
又、2年半の源氏講座で色々な事を学ばせてもらった事もあると思います。


まず皇女としての立場。
これは柏木の未亡人落葉宮も同様でした。
夕霧の妻になるとはと、母=御息所も悲嘆しました。
皇女は立場的に独身で過ごしても、普通のようです。


また、八の宮の遺言に、結婚を考えてはいけないとありました。
結局、はからずしも妹=中の君を匂宮と結婚させる事になってしまうのですが、
その後その事を後悔して何も食べられなくなって大君は亡くなります。


薫に間近まで近づかれる事になっても、
あくまで大君は薫を拒否し、
薫も相手を思ってぐずぐずと何もないまま朝まで過ごします。
また空蝉のように中の君の隣からさっと逃げて、
入ってきた薫を驚かす場面もありました。
薫も中の君に手は出しませんでした。←光源氏とずいぶん違います


一方、匂宮は中の君と契ります。
薫の思う通り、中の君の美しさにすっかり心をうばわれます。
しかし、立場上ひんぱんに宇治に通う事は難しく、
しかも母=明石中宮(ここでは大宮と呼ばれています)が
夕霧の娘六の君との縁談に乗り気です。
邪魔をして宇治に行かせないようにします。
たぶん次の皇太子として政治的にしっかりした縁戚の妻を持たされるのですね~


匂宮の訪れがなく、六の君との縁談話も聞き、
宇治ではたわむれの契りかと姫達は憂います。
八の宮の亡き後、2人のおぼつかない立場も考えられて、
世間の笑いものになるのはみっともないと大君が後悔するのも無理は無いと感じました。
しかも中の君にはそういう憂いを表面では見せませんでした。


自分は薫とは絶対に結婚しないという大君は
少し強情のようにも見えますが
彼女は美しい盛りの中の君と違って、
自分の容貌が盛りを過ぎて美しくない事も知っているし、
結婚して薫がその自分を嫌になって捨てられたらみっともない、
これ以上憂いたくないという心から薫を拒否するのも
わかるように思います。


それでも薫の良さに惹かれ、
最後に薫に会えずに死ぬのは残念だったと
かけつけた薫に愛の言葉を伝えて亡くなります。


大人のプラトニックな愛。
この2人のやりとりと別れがとても哀れでした。


大君が亡くなった後、
(薫)「おくれじと空ゆく月をしたふかな
         つひにすむべきこの世ならねば」(総角)


この和歌が何故か心に残りました。
先生の注釈にこれが薫の宇治でのテーマとありましたので、
今後も楽しみにしたいと思います。


全体に宇治になってからの和歌がとてもその場面の心情にぴったりで
感動します。いつから紫式部は和歌が上手になったのでしょう。


秋や冬、木枯らしや雪にうずもれた寂しい宇治=憂しの風景に
和歌の心が尚更響くように思いました。


中の君に対する先生の注釈のお考えにもまた驚き、
また、薫ではなく匂宮が宇治十帖の主役とも言われたので、
今後も楽しみにしたいと思います。


さて、巻名の総角(あげまき)について調べてみました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8F%E8%A7%92



催馬楽
「あげまきや とうとう ひろ(尋)ばかりや とうとう さかりて寝たれどもとうとう まろびあひけり とうとう か寄りあひけり とうとう」

(現代語意訳)
「あげまき髪の女とさ とうとう(※) 一尋(※)ばかりさ とうとう 離れて寝たけどさ とうとう 転がり合ってしまってさ とうとう しっかり絡んで寝たとさ とうとう」
(夢講座)よりhttp://www5a.biglobe.ne.jp/~GENJI/index.html#oboegaki47






八の宮の一周忌のために、
名香の上につけた紐飾りでしょうか。