井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

北海道の樹木ウォッチング・シウリザクラ5

2022年07月30日 | 日記

シウリザクラの果実。名前の由来。バラ科サクラ属(ウワミズザクラ亜属)。
シウリザクラの果実は球形の核果で緑から黒く熟す。核には2本の線が入り、苦くて食べられない。


シウリザクラの名はアイヌ語由来だと言われる。「日本の野生植物・木本Ⅰ(平凡社)」にもそうはっきり書いてあり、辻井達一(元・北大植物園園長)の「日本の樹木」では、「シウリ・ニ」「シウ・ニ」は「苦い木」の意味でシウリザクラのことをそう呼んだから「シウリザクラ」の名がついたのだろうとしている。
シウリザクラの学名も「Prunus  ssiori」となっているから、「シウリ・ニ(苦い木)」から学名も標準和名も名付けられたというのは、その通りと考えられる。
ただ、本当にアイヌが「シウリ・ニ」と呼んでいたかという点については疑問符がつく。「アイヌ植物誌(草風館)」や「アイヌと植物(アイヌ民族博物館)」にはシウリザクラに関する記述はない。
アイヌに限らず、古代人が植物に名前をつけて呼ぶのは、「食べられる」「薬になる」「繊維がとれる」など有用な植物に対してのみで、利用しない植物にまで名前をつけることはしない。
シウリザクラの学名命名者はフリードリヒ・シュミットというロシアの食物学者らしいが、彼が新種登録するときに、シウリザクラのことをアイヌにいろいろ質問しただろうと考えられる。
「これは何か」という問いに対して、名前はないので果実の特徴から「苦い実の木」と答えたのではないか。アイヌの言う「シウリ・ニ(苦い木)」から学名も標準和名もつけられたのであるから、アイヌ語由来だというのは正しいが、「シウリ・ニ(苦い木)」はシウリザクラのアイヌ語名であるとは言えない。
アイヌにとっては、名もない木であり、苦い木ということなのだと思う。

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北海道の樹木ウォッチング・シウリザクラ4

2022年07月30日 | 日記

シウリザクラの蕾。バラ科サクラ属(ウワミズザクラ亜属)。
シウリザクラは新枝の先に総状花序を伸ばす。写真からも分かるように、葉が完全に展開した後に開花する。
シウリザクラの花序。
ウワミズザクラ亜属の特徴は長い総状花序に多数の花をつけるところ。
長い総状果状は試験管を掃除する「ビン・ブラシ」に似る。花序全体はウワミズザクラに良く似る。
シウリザクラの花。
シウリザクラの小花は5数性(花弁が5個)、花の径は8mmほどでウワミズザクラ(径:6mm)より若干大きい。ただし、ウワミズザクラと見分けるには花のサイズではなく、葉身基部の形や蜜腺の位置を見る方がよい。
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北海道の樹木ウォッチング・シウリザクラ3

2022年07月29日 | 日記

シウリザクラの葉身基部。バラ科サクラ属(ウワミズザクラ亜属)。
シウリザクラの葉身基部は心(ハート)形になり、葉柄上部には蜜腺2個がつく。(ウワミズザクラの葉身基部は鈍形~円形で、蜜腺は葉身基部につく)。
シウリザクラの葉柄は3~4cmと長い(ウワミズザクラは1cm以下)。
シウリザクラのオトシブミ。
「落とし文」は公然とは口に出来ないことなどを書き、誰かに読んで貰う事を期待してわざと落としておく巻きもの。
昆虫のオトシブミは甲虫の仲間、植物の葉を噛み切って巻きあげ、その中に卵を産みつける。孵化した幼虫はその葉を中から食べて成長する。「衣食住」完備の「揺籃(ようらん)」と言われる。
葉を噛みきり、脚を巧みに使って葉を巻いていくが、要所要所で粘着剤のようなものを使うらしい。
「虫こぶ」の場合は昆虫と植物との関係で「1対1」のものが少なくない。オトシブミの場合でも食べる葉に好みはあるが、虫こぶのような「こだわり」は少ないと見える。
サクラの仲間につくオトシブミは普通「アカクビナガオトシブミ」だという。
昆虫のオトシブミ科には「葉巻きチョッキリ」の仲間も含まれ、葉の巻き方はオトシブミより雑になる。
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北海道の樹木ウォッチング・シウリザクラ2

2022年07月28日 | 日記

シウリザクラの芽吹き。バラ科サクラ属(ウワミズザクラ亜属)。
シウリザクラの芽吹きは赤褐色で大変目立つ。冬芽には葉芽と混芽とがあり、混芽の芽吹きでは、葉の展開と同時に花序を中央部に用意している。
シウリザクラの春紅葉。
春の芽吹きで、紅葉のように赤や黄色に色づくものがあって「春紅葉(はるもみじ)」と呼ばれる。
シウリザクラやカツラは「赤」、イタヤカエデなどは「黄色」で、春の山を彩る。
シウリザクラの葉。
シウリザクラの葉は長楕円形で先は尖り、縁には細かくて鋭い鋸歯がつく。鋸歯の先端は芒(のぎ)状、または刺状になる。葉身は15~6cmになるものもあり、ウワミズザクラより大きくなる。
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北海道の樹木ウォッチング・シウリザクラ1

2022年07月27日 | 日記

シウリザクラの樹形。バラ科ウワミズザクラ属。
沢沿いや谷間など水に恵まれた肥沃地に生育する落葉高木、樹高は10~15m程になる。
本州中部以北に分布し、北海道に多い。
シウリザクラの樹皮。
シウリザクラの樹皮はやや紫色を帯びた淡褐色で、全体的には平滑系。
平滑系の多くは古くなるにつれ縦や横に筋が入るものだが、シウリザクラの樹皮は不規則な小片になって剥がれる。この個体ではそれが薄い円盤状になっている。
シウリザクラの冬芽。
シウリザクラの冬芽は狭卵形で先はとがり、大型の部類。紫褐色の芽鱗に包まれ、1年生枝も紫褐色で白っぽい皮目が目立つ。特徴的な冬芽で、冬期でも見分けやすい。
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