井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

北海道の花・エゾノギシギシ2

2020年04月30日 | 日記


エゾノギシギシの両性花。タデ科ギシギシ属。
茎の上部、葉腋に円錐状の花序をつける。花は輪生状に下向きに咲く。  
花弁はなく、萼片が2列につく。外萼片3個、内萼片3個。(内花被、外花被という言い方もされる)。雌花と両性花があり、こちらは両性花。雄性先熟で、開花直後は黄色い葯の雄しべが伸び出し、やがて雄しべは枯れ落ち、花柱3個の雌しべが伸び出す。



エゾノギシギシの雌花。
雄しべが退化した雌花。両性花と雌花で他家受粉もするが自家受粉もするという。花後、内萼片が大きく翼状になって果実を包む。



エゾノギシギシの果実。
内萼片が大きく翼(スプーン状)になり、縁には刺状の歯が目立つようになる。エゾノギシギシを見分けるポイント。
内萼片には粒状突起(瘤体ともいわれる)がつくが、その存在理由は不明。種子に見えるが種子ではなく、果実は内萼片に包まれ、3稜形で先端に3個の花柱が枯れ残る。
エゾノギシギシの種子に発芽に対する光要求性があり、埋土種子としての寿命も長く、繁殖力の強さにつながっている。
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北海道の花・エゾノギシギシ1

2020年04月29日 | 日記


エゾノギシギシの群落。タデ科ギシギシ属。
ギシギシは古代から日本人が関わりあってきた在来種であるのに対して、エゾノギシギシは明治中期にヨーロッパから入ってきた帰化種。最初に北海道で確認されたことから「蝦夷のギシギシ」と名付けられた。現在は日本全土に分布するが、北国に多く暖地には少ないという。
「ギシギシ」の名を持つ種、「エゾノ」の他に「アレチ」「ナガハ」などがあり北海道にも分布するが、何れも帰化種。原産地でも変異が大きく、いくつか亜種に分けられていて種の同定が難しいケースもあるという。



エゾノギシギシの越冬葉。
根生葉は花期には枯れ、秋には新葉をだしてロゼット葉で越冬する。
主脈など赤みを帯びることが多く、裏面の脈上には白毛が密生しているように見える。(乳頭状突起という言い方もされる)



エゾノギシギシの葉。
エゾノギシギシの葉は長い柄があり幅広の長楕円形で「広葉ギシギシ」の別名もある。葉先はあまり尖らず、縁は細かく縮れる。上部の葉は柄が短く、小さくなる。
基準種の「ギシギシ」は漢字で「羊蹄」と書く。羊蹄は「ようてい」「ギシギシ」の他に、単に「し」と読むこともある。百名山の一つ羊蹄山、正式には「後方羊蹄山」と書く。「後方」は「しりべ」と読み、「羊蹄」は「し」と読んで、併せて「しりべ・し・山」と読んだという。現在は「羊蹄山(ようていさん)」の名が定着している。羊蹄(ようてい)は生薬名で、根を乾燥させて使う。便秘に効き、「羊蹄根(ようていこん)」とも「羊蹄の根(しのね)」ともいう。
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北海道の花・ギシギシ

2020年04月28日 | 日記


ギシギシ。タデ科ギシギシ属。
ギシギシは在来種でよく見かけるエゾノギシギシはヨーロッパ原産の帰化種。
ギシギシの分布は日本全土となっているが個体数は少なく、札幌周辺ではエゾノギシギシばかりでギシギシは見られない。(原松次・北大教授が1992年にまとめた「札幌の植物」にも載っていない)。
葉はエゾノギシギシより細く(エゾノギシギシには「広葉ギシギシ」の別名がある)、花穂はエゾノギシギシのように赤みを帯びない。

ギシギシは「羊蹄」と書き、漢名である。食用・薬用になり古くから知られ、古い呼び方は「シ」であったという。古代には植物名は少なく、1語で呼ばれたもの、「シ」以外にも「イ」、「エ」「カ」「チ」などがあったという。この中で1語の呼び方が今でも残っているのが「イ」で、畳表になる「イグサ」のことで標準和名で残っている。
「シ」の呼び名が何故「ギシギシ」になったかには諸説あるが、1説に「茎をこすり合わせるとギシギシ鳴るから」というのがある。



ギシギシの果実。
ギシギシ属の果実は瘦果、花被片(萼片)が果期まで翼状に残り、その形が仲間の見分けるのに役立つとされる。ギシギシの翼には鋸歯があるがエゾノギシギシのような刺状の突起はない。
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北海道の花・ミチヤナギ

2020年04月27日 | 日記


ミチヤナギの群落。タデ科ミチヤナギ属。
道端や空き地~畑地に生える1年草。
茎は下部で分枝して地を這い、踏みつけに強みを発揮する。



ミチヤナギの葉と花。
葉は青白く,長楕円形~披針形で葉柄は短い。葉が柳に似るというので「道柳」の名がつく。
鞘状の托葉は2裂。雑草扱いながら、薬用にもなり、食用にもなる。
花は腋生で1~5個が束生する。花被(萼)は5個に中裂し、裂片は楕円形で緑色、上部は白くなる。
雄しべは8個で花柱は3裂。



ミチヤナギの果実。
果実は瘦果で卵形、3稜がある。
果実は黒色でほぼ同長の宿存萼に包まれる。ミチヤナギの学名(種小名)は「アウィクラーレ」で「小鳥が好む」という意味だという。果実を小鳥が好んで食べるらしい。
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北海道の花・ムカゴトラノオ

2020年04月26日 | 日記


ムカゴトラノオ。タデ科イブキトラノオ属。
高山の礫地~草地に生える多年草、この株は大雪山・赤岳産。
トラノオは「虎の尾」、花穂の形が似ているからというのだが、オカトラノオなどと違って左程似ていないという声も。



ムカゴトラノオの蕾と茎葉。
葉の多くは根生葉で線状被針形、茎葉は上のものほど小さい。
茎頂につく総状花序、蕾状態ではずんぐりと短く、上から下までほぼ同形。



ムカゴトラノオの開花。
花序軸は長く伸び出し、上部の蕾は開花。萼は花冠状で5全裂。果実は瘦果であるが、結実することは殆どないという。その代り、下部の蕾はムカゴとなって落下して新株をつくる。
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