井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

アリノトウグサ、なかなか出会えぬ花

2010年07月31日 | 日記
アリノトウグサ。絶滅危惧種ⅠB類(EN)の指定を受けている貴重な花だそうで、大ベテランでも中々出会えないといいます。
そんな珍しいアリノトウグサに、小樽・天狗山で出会いました。



アリノトウグサです。
地を這う茎からは根を下ろし、花をつけた茎は直立します。
赤褐色の花を、アリ塚を登る蟻に見立てて「蟻の塔草」名づけられたといいます。
湿地でも乾燥地でも、日当たりのいいところであれば生育できます。



アリノトウグサの葉です。
低い鈍鋸歯のある葉を対生させます。
秋には紅葉するといい、草本では珍しい方です。



花のアップです。
「萼筒は4裂し、花弁は4枚あって反り返る」と図鑑にのっていますが、これは花弁が反り返る前でしょう。
原産地はオーストラリアで、あちらにはその仲間が多いといいます、
このアリノトウグサは、その中で一番種子が小さく、ツバメの渡りのときに、泥とともに足や嘴などについて運ばれたものと考えられているのだそうです。
同じようにして、日本の種がオーストラリアに運ばれるケースもあるといいます。
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キツリフネ、1年草の生存戦略

2010年07月30日 | 日記
昨年ここで見た筈の野草が見えない。1年草の場合は、種子で子孫を残すだけなので、種子散布がうまくいっていないと、同じ場所で姿を見ることができない。
その点、キツリフネは、すぐ近くに種子を散布して、確実に子孫を残しているようである。



キツリフネです。
黄色くて舟を吊り下げたような形、まさに「キツリフネ」です。
確実に子孫を残しているというのは、この黄色く咲いた花よりも、開かない花(閉鎖花)によるものの方が多いからだといいます。
咲かせる花(開放花)は、勿論、遺伝子交配でより多様な子孫を残すためのものですが、確実性を重視して、クローンでもいいから種子を残そうというのが、閉鎖花です。



ツリフネソウです。
全体として形はよく似ていますが、先ずは色が違います。それともう一つ、距(萼が変形したもの)の先が、キツリフネでは少し曲がっているだけなのが、ツリフネソウではくるっと巻いています。
ツリフネソウのほうは、閉鎖花をつけません。その代わり、自家受粉で確実に種子生産をしています。
1年草のキツリフネやツリフネソウは、多様な子孫を残すための他家受粉も期待はしますが、先ずは確実な種子生産を優先させているようです。



キツリフネの果実です。
ちょっとした刺激ではじけ、種子を飛ばします。「おこりんぼう」と呼ばれるのもそのためです。
学名を覚える気など少しもありませんが、キツリフネだけは特別です。
インパチェンス・ノリタンゲレ
インパチェンスは「我慢できない」という意味で、鳳仙花などツリフネソウ科の果実がちょっとした刺激ではじけるところから名づけられたもので、園芸のほうではよく使われています。
ノリタンゲレは「私に触らないで」の意味で、「おこりんぼう」の雰囲気がでています。
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イージーなネーミングの被害者、クサレダマ

2010年07月29日 | 日記
「クサレダマ」と聞けば、誰しも「腐れ玉」だと思うでしょう。
マメ科の木にレダマ(連玉)というのがあって、江戸時代には南蛮渡来の木として珍重されていたという。
その「レダマ」の黄色い花に似ていて、木ではなく草だということで、「草レダマ」になったというのだが、このネーミングは少しイージーに過ぎるでしょう。



クサレダマです。
高原めいた湿地を好みます。
サクラソウ科オカトラノオ属ということですが、オカトラノオとは大分印象が違います。
中国名は黄連花(コウレンカ)だそうで、「腐れ玉」よりはずっとこの花に相応しいでしょう。
円錐花序で花はまばらについています。



クサレダマの茎と葉の様子です。
葉は3,4枚が輪生しますが、対生する部分もあって必ずしも一定しません。



花のアップです。
5本の雄しべが5枚の花弁と重なって位置するサクラソウ科の特徴は、このクサレダマにも表われています。
5本の雄しべは、花糸の下部が連なって立つ様子も見えています。
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下から上へ咲きあがるヤナギラン

2010年07月28日 | 日記
手稲山の女子大回転コース、パノラマ・コースのヤナギランの群落が、いま、満開状態になっています。
ヤナギランの大群落、アラスカ・アンカレッジ空港周辺が有名でスケールが違うといいます。ヤナギランは山火事や野焼きの跡地に大群落をつくるので、あちらではfire-weedと呼ばれるといいます。
ちなみに、「ラン」の名がついていますが、ランの仲間ではなくアカバナ科、白い種髪のついた種子をつくります。



ヤナギランの群落です。
スキー・ゲレンデとして刈り込まれることで、野焼きと同じ効果をもたらしているのでしょうか。
ヤナギランは高原の花で、本州の中部山岳地帯では、千数百メートル辺りの高原でしか見られないといいます。



ヤナギランの花序、総状花序といいます。
花は下から上へ咲きあがります。そういうのを無限花序ともいいます。
上の方はまだ蕾で下向きになっています。中ほどが開花状態になっていて、横向きになり、、下のほうのすでに果実となったものは上向きに変わっていきます。



花序のアップです。
花は下から上に咲きあがりますから、上のほうは咲きだしたばかり。咲き始めは雄しべだけで雄性期です。その下の花は、雄性期を終えて、雌しべが突き出してきて雌性期になります。
こういうのを雄性先熟といい、雄しべと雌しべの熟する時期をずらすことで、自家受粉を避けているのです。
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遠くからも目立つマタタビ

2010年07月27日 | 日記
「旅人がこの実を食べれば、たちどころに疲れがとれて、「又旅」が続けられる」ということで「マタタビ」と名づけられたそうです。しかし、サルナシ(コクワ)と比べてまずく、薬酒にして利用するのが普通だといいます。



マタタビの葉です。
遠くからでも目立つというのは、こんな風に葉が白くなるからです。
葉の組織内に空気層が出来て白くなるというのですが、葉を白くすることでそこに花があることを、昆虫たちに知らせるのだといいます。
この写真では、白くなった葉の影に若い果実が見えています。
葉が白くなってから、赤紫色に変色していくのが、同じ仲間のミヤママタタビです。



マタタビの雌花です。
同じマタタビ科のサルナシとよく似ていています。雌花というより両性花というべき花です。
違っているのは、雄しべの葯がサルナシでは黒紫色であるのに対して、マタタビでは黄色。子房の色が、サルナシが緑であるのに対してマタタビでは白になっています。



木天蓼(モクテンリョウ)です。
マタタビの果実は、サルナシより細長く円柱形になります。
この木天蓼は、マタタビの果実にマタタビミタマバエが産卵して作った虫こぶです。
木天蓼というのは、漢方薬の呼び方で、冷え性や神経痛に効くとされています。

健全な果実には、マタタビ酸が含まれていて、猫が喜ぶといいます。喜ぶというより、一種の酩酊状態になるのだそうです。
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