井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

世界中で街路樹に使われているプラタナス

2010年11月30日 | 日記
「友と語らん、鈴懸けの径・・」というあの灰田勝彦の歌った歌や、鈴木章二とリズムエースの「鈴懸の径」をご存知の人には、未だに現役という方は少ないでしょう。



モミジバスズカケノキの樹皮です。スズカケノキ科スズカケノキ属。
モミジバスズカケノキといってもピンと来ない人の方が多く、プラタナスと言った方が通りがいいでしょう。
葉や花のことは知らなくても、大きな樹でマダラに剥げ落ちた樹皮の樹というので、プラタナスと分かる人が多いといいます。
「日本の樹木」(辻井達一)でも、「世界で最も多く街路樹として使われている。」と書かれています。
ちなみに札幌市では、2009年現在、街路樹の第5位です。



モミジバスズカケノキの花です。
赤く見えているのは雌花の柱頭です。この球形の雌花がそのまま球形の果実になっていきます。
長い毛の密生した「そう果」が放射状に集まって、球形の集合果を作っています。
日本で見られるスズカケノキの仲間は3種で、「スズカケノキ」と「アメリカスズカケノキ」と、その2種の雑種である「モミジバスズカケノキ」です。集合果の数は、「アメリカ」が1個、「スズカケ」は3個以上、そして「モミジバ」は普通2個です。



モミジバスズカケノキの葉です。
「スズカケ」は切れ込みが大きく、「アメリカ」は切れ込みが少なく、「モミジバ」はその中間です。カナダの国旗にもなっているサトウカエデの葉に似ているので、「モミジバ」になりました。
葉柄の中間部に膨らんだ部分があります。実際には、膨らみの上の部分が本当の葉柄で、膨らみの下は茎です。
膨らんだ部分は葉柄が冬芽を包んでいて、これを「葉柄内芽」(ようへいないが)といいます。
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巻きひげの先が吸盤になっているツタ

2010年11月29日 | 日記
「ツタ」と聞いて思い浮かべる事はなんでしょうか。夏の甲子園球場の壁という人もいるでしょうし、「松をいろどるカエデやツタは」という童謡の一節という人もあるかも知れません。



ツタの紅葉です。ブドウ科ツタ属。
「紅葉」という童謡にもあるようにツタは大変見事に紅葉しますが、気象など条件によって色づきにも当然差が出ます。この写真があまり冴えないのもそういうことでしょう。
ツタは紅葉し落葉もするので、夏のものという意味で「ナツヅタ」とも呼ばれます。これに対して常緑のキヅタはウコギ科の樹で、冬にも緑を保つので「フユヅタ」とも呼ばれます。



ツタの巻きひげ、吸盤です。
巻きひげで他の樹木などに絡み付いていくのは、ヤマブドウなどブドウ科の仲間と同じですが、違うのはツタの巻きひげの先が吸盤になっていて、コンクリートでも何でもへばりついて登っていく所です。



ツタの落葉の状況です。
ツタの落葉では、先ず葉身が落ちます。写真に多くの葉柄が残っているのは、葉身が先に落ちた跡です。
葉身が落ちて2~3日後に葉柄がおちる、こういう落葉の形式を単身複葉というのだそうです。エビヅルやノブドウ、ヤブガラシなどもそれです。
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カシワは離層を作らないのか

2010年11月28日 | 日記
「借金はカシワの葉が落ちる頃返します。」そういう言い方で返済期限の先延ばしに成功したというアイヌの話は有名で、バスガイドの話にも出てきます。



カシワです。ブナ科コナラ属。
カシワは枯葉を枝につけたまま越冬し、ユズリハのように春になってから新旧の葉を入れ替えます。
落葉樹は冬を迎える前に、葉柄の基部に離層を作って葉を落とすのですが、カシワはその離層を作らないので葉を落とさないのだと説明されます。
写真のカシワの樹のように、多くのカシワが葉をつけたまま越冬する姿をみれば、「成る程」とも思うのですが、本当でしょうか。



カシワの枝先です。
枯れ落ち葉の中にもカシワが混じっていますから、全く落とさないという訳でもありません。
この写真のように、多くの葉を落としてしまった枝もありますから、カシワは、葉が落ちないのではなく、落ちにくいのだと言えるでしょう。



落葉樹が冬を迎える前に、自ら離層をつくって葉を落とすことの根拠として、落ち葉の葉柄端部の形が揃っていること示すことがあります。
その意味では、カシワも同じように離層を作っているのが、落ち葉を見ていけば分かります。離層を作る一番の目的は葉を枝から切り落とすことではありますが、その前に、葉と本体との水や養分の移動を遮断することが必要です。これを第一ステップとすれば、実際に葉を落とす部分は第二ステップということになります。普通の樹木では、二つのステップがほぼ同時進行で行われますが、カシワの場合は、第二ステップの進行が中々進まないのでしょう。
その点カシワが一番目立ちますが、ブナ科の仲間には多少その気があります。
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緑色のまま落葉する樹

2010年11月27日 | 日記
落葉広葉樹の落ちたばかりの葉には、普通赤や黄色など紅葉の色が見えます。褐色の枯葉色も混じりますが、中には、緑色のまま落葉するものもあります。



ハリエンジュの落ち葉です。マメ果ハリエンジュ属。(別名:ニセアカシア)
マメ科共通の特技として、根粒バクテリアと共生して空気中の窒素を固定できるといことがあります。
落葉広葉樹が落葉する前に紅葉したり黄葉するのは、葉緑素の原料である窒素分などを本体の方に回収することで起こります。ハリエンジュは窒素分に不自由することがなく、落葉に際して回収する必要がないので、葉緑素を分解することなく落葉するのだそうです。
羽状複葉ですが、複葉全体で落葉するより、小葉が先に落ちる方が多いようです。



キングサリの落ち葉です。マメ科キングサリ属。
日本の在来種ではなく、園芸種として持ち込まれたものです。
初めてその名を聞いたときには「キング・サリー」(サリー王)と受け止める人が多いといいます。実際は、英名の
Golden Chainの直訳で、しかも「金鎖」の重箱読みでキングサリとなりました。
花の色・形から「黄花藤」の別名もあるそうです。
ニセアカシアと同じマメ科ですから、窒素分に不自由しないのでしょう。



ムラサキハシドイの落ち葉です。モクセイ科ハシドイ属。(別名:ライラック、リラ)
明治時代の初期、アメリカ人宣教師によって持ち込まれたもので、その日本最古のライラックが北大植物園に植えられています。ライラック、今では「札幌市の花」にも指定されています。
根粒バクテリアと共生する植物、マメ科の他にもハンノキ属やヤマモモなどが知られていますが、モクセイ科はどうなんでしょうか。ムラサキハシドイだけでなく、レンギョウやイボタノキなども紅葉することなく落葉するようです。
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葉の出し方、葉の落とし方、樹それぞれの個性

2010年11月26日 | 日記
落葉広葉樹は落葉する前に葉の色をいろいろに変えますが、葉の落とし方にもタイプによる違いがあります。
葉にも寿命があって、古い葉から順に落とす訳ですが、葉によって寿命の差もあるでしょうし、落葉の時期については寿命以外の要因もあるでしょう。



ヤマモミジの紅葉です。
樹冠の外側(枝先)の方がより赤く紅葉していて、内側の方は紅葉は遅れているように見えます。
この先落葉する場合も、樹冠の外側から先に葉を落としていきます。このタイプの樹木は「一斉開葉型」といい、春先に一斉に葉を展開するので、葉の寿命は同じとみてよく、日光のよく当たる樹冠部分に紫外線が多くあたり、葉の老化が早く、より早く葉を落とします。



シラカンバの黄葉です。
写真では一寸分かりにくいですが、樹冠の内側から黄葉が始まり、落葉も内側から進みます。
シラカンバなどこのタイプは「順次開葉型」といい、春先から夏にかけて順に葉を展開していき、早く開いた古い葉から順に落葉していきます。



ドロノキの落葉です。
順次開葉型のドロノキが古い葉を次々に落として、一番新しい葉が枝先に残っています。
順次開葉型は光環境に合わせて葉を展開するタイプで、撹乱地(氾濫跡や山火事跡など)に新しい林を作っていくので、パイオニア・ツリー(先駆樹種)とも呼ばれます。
これに対して一斉開葉型は日当たりのあまり良くない林の中でも生育できるグループで、極相林を構成する樹種ということで極相樹種とも呼ばれます。勿論その中間種もあり、そちらの方が多いといえます。
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