井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

クローバーの方が通りの良かったシロツメクサ

2011年06月28日 | 日記
戦前のことは分からないが、戦後は広くクローバーと呼ばれ「シロツメクサ」などと呼ぶ人はあまりいなかった。



シロツメクサの群落です。マメ科シャジクソウ属。
「ツメクサ」は「詰め草」で、オランダからガラス器を輸入するときの「パッキング材」として使われたことでその名がついた。
帰化植物として拡がったのは、明治初期に牧草として種子が輸入されてからのことであるという。



シロツメクサの花序です。
「オランダゲンゲ」の別名もあるように、花序の形はレンゲに良く似ていて、蝶形花を集めて球状の花序をつくる。
花の形は少し変わっていて、花弁をこじ開ける知恵と力がない昆虫は蜜にありつけない。ミツバチやハナバチの仲間だけがその能力をもち、ポリネーター(花粉媒介者)として専属契約する。花粉媒介の効率を高めるためである。



順次開花するシロツメクサの花序。蝶形の小花は下から順次開花し、次から次へ開花することで全体として花期を長く保ち、花粉媒介の効率を高める。
受粉済みの小花は下向きに垂れ、ハチ達にそれを知らせる。
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ギンリョウソウに近い仲間たち

2011年06月27日 | 日記
イチヤクソウ科の中には、常緑のイチヤクソウの仲間と、葉緑素を持たないギンリョウソウの仲間とに大別される。



ギンリョウソウモドキです。イチヤクソウ科シャクジョウソウ属。
ギンリョウソウとギンリョウソウモドキとは、花の時期の姿が酷似しており、特に押し葉標本では区別がつきにくいという。
花期が遅いこと(ギンリョウソウの6~7月に対して、ギンリョウソウモドキの8~9月)から、「アキノギンリョウソウ」とも呼ばれる。果実は果で、熟すと上部で割れ種子を吐き出す。



シャクジョウソウの芽だしです。イチヤクソウ科シャクジョウソウ属
ギンリョウソウは「ベニタケ属」の菌根菌に依存しているのに対して、シャクジョウソウは「キシメジ属」の菌根菌に依存しているという。
菌根菌との共生という言い方がされるが、光合成をしないシャクジョウソウ側から提供できるものはなく、寄生といってもいい関係にある。



シャクジョウソウです。ギンリョウソウの場合は1本の茎に1花をつけるだけだが、シャクジョウソウでは1茎に数個の花(総状花序)をつける。
その姿(花序)を、僧や修験者が持つて歩く「錫杖(しゃくじょう)」に見立てての命名であるという。
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白く怪しく咲くギンンリョウソウ

2011年06月26日 | 日記
全体に白色でやや透明、銀色の竜に見立てて「銀竜草」と名づけられた



ギンンリョウソウです。イチヤクソウ科ギンンリョウソウ属。
茎も葉も花もみんな白色で、葉緑素をもたず菌類と共生する腐生植物と呼ばれる。
「腐生」というのは、落ち葉など生物の死骸などを分解して栄養源とするものだが、ギンンリョウソウ自身にはそういう分解能力はなく、菌根を形成する菌類から栄養を得ているわけで、「菌食植物」と呼ばれるような寄生的な生き方をする。その姿の怪しさから「幽霊茸(ゆうれいたけ)」の別名もある。



ギンンリョウソウ花のアップです。
一株から直立する茎を数本だし、その先端に苞葉に包まれた花を1個つける。
花弁の形ははっきりしないが、青紫色の雌しべ(柱頭)とこれを取り巻く雄しべの黄色い葯が目立つ。



ギンンリョウソウ果実です。
子房はトックリ形に膨らみ、全体の白い色はかなり後まで残る。(地方によっては「トックリ」の別名で呼ばれる。
花は横向きに咲くが、果実は上向きになる。
果実は液果で、熟すと褐色になる。果実1個あたり5000個ほどの小さな種子(ダスト・シードと呼ばれる)を含み、風散布される。
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赤い花をつけるキイチゴの仲間

2011年06月25日 | 日記
キイチゴの仲間には白花をつけるものが多いが、赤い花をつけるグループもある。この仲間、奇数羽状複葉で小葉は普通3枚(ときに5枚)で、葉裏には白~灰白色の毛が密生する。



ナワシロイチゴです。バラ科キイチゴ属。
初夏・苗代を作る頃に果実が熟すところから「苗代イチゴ」と呼ばれる。
茎は木質化するが立ち上がらず、他の草の上に覆いかぶさるようにして、雑草的に拡がる。
羽状複葉の頂小葉は菱形状倒卵形で先は尖らないので、クロイチゴやエビガライチゴと見分けられる。
紅紫色の花弁は直立し、中に多数の雄しべ・雌しべを抱く。



クロイチゴです。同じくバラ科キイチゴ属。
花の色は赤で、羽状複葉の頂小葉は先が尖る。茎・花序・葉軸・萼などにエビガライチゴのような紅色腺毛がつかない事で区別する。
果実は赤から黒色に熟す。通常のイチゴ果(ゴマ粒のような痩果が膨らんだ花托にはりつく)と違って、複数の雌しべから作られた液果の集まりで、これを「キイチゴ果」と呼ぶ。



エビガライチゴです。同じくバラ科キイチゴ属。
茎・花序・葉軸・萼などに紅色腺毛が密生し、その色をエビの殻に見立てての命名である。葉裏には綿毛を密生させ、白っぽく見えるところから「ウラジロイチゴ」とも呼び、こちらを標準和名にする考え方もある。キイチゴ類は一応木本に分類されるが、草本との中間的存在で茎の寿命は概ね2年。1年目の茎には花をつけず葉だけ、2年目になって花をつけ結実し、そして枯れる。
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最もイチゴらしいイチゴ

2011年06月24日 | 日記
果物店やスーパーなどで売られている果物のイチゴは、基本的にオランダイチゴで、18世紀の中頃オランダで作り出されてものとされている。



エゾノクサイチゴです。バラ科オランダイチゴ属。
オランダイチゴ属で札幌周辺で見掛けるのはエゾノクサイチゴとノウゴウイチゴの2種である。日本には3種自生するとされるが、エゾノクサイチゴは花弁が普通5枚で、ノウゴウイチゴ(花弁が7~8枚)よりはオランダイチゴ(普通花弁は5枚)に近い。
名前に「エゾ」のつかない「クサイチゴ」はどんなものか気になるが、こちらは「キイチゴ属」でオランダイチゴ属ではない。



エゾノクサイチゴの若果実です。
イチゴ類の果実は子房由来(子房が膨らんで出来たもの)ではないので真の果実ではなく、偽果と呼ばれる。
果実に見えているものの大部分は花托(花床)が膨らんだもので、真の果実は表面につくツブツブの部分(痩果)である。こういうのをイチゴ果と呼ぶ。
「エゾ」のつかない「クサイチゴ」はキイチゴ属だから、果実もイチゴ果ではなくキイチゴ果、花托は膨らまず、多数の液果が集まった「キイチゴ果」で、観察事典などにも「あまりおいしくない」と書かれている。
キイチゴ属で「草イチゴ」というのも変だが、背丈が低く草本に見えるということでクサイチゴとなった。



ノウゴウイチゴです。岐阜県能郷山で発見されたことによる命名だという。
花弁が7~8枚あることでエゾノクサイチゴとは見分けられる。
イチゴ類の多くは走出枝(ランナー)を出して先端の芽から子株をつくる。ノウゴウイチゴの果実は普通のオランダイチゴより酸味が強いという。
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