井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

奥三角山で見かけた花たち1(イヌタデ属の仲間)

2012年09月30日 | 日記
奥三角山という名は地図には載っていないが、三角山から大倉山につながる尾根の延長上に標高354mのピークがあり、地元の山好きたちがこれを奥三角山と呼んでいる。



イヌタデ。タデ科イヌタデ属。
「蓼喰う虫も好き好き」という場合のタデは「ヤナギタデ」で、葉に辛味があって刺身のツマに利用されるが、イヌタデには辛味がなく役にたたないというので「犬タデ」と呼ばれる。
イヌタデ属の仲間は、茎に下向きの刺のあるグループと刺のないグループとに分けられ、イヌタデは刺のないグループである。



ミゾソバ。タデ科イヌタデ属。
湿地を好みソバに似た草だというので「溝ソバ」と呼ばれる。イヌタデ属の中で下向きの刺をもつグループである。
「日本の野生植物」(平凡社)には閉鎖花の記述はないが、地下に閉鎖花をつけるミゾソバの報告は多数ある。葉柄に翼のある「オオミゾソバ」が閉鎖花をつけるとか、刺のより鋭い「ヤマミゾソバ」が閉鎖花をつけるという説もあるが、ミゾソバの地下につける閉鎖花については今一つはっきりしない。



タニソバ。タデ科イヌタデ属。
山の湿地に生えるというので「谷ソバ」の名をもつが、ミゾソバと違って茎に下向きの刺をもたない。
刺をもたないグループの中で、イヌタデなどはひも状に伸びる総状花序をもつが、タニタデの花序は頭状である。
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道北で見かけた花たち10

2012年09月29日 | 日記
サロベツ原野には泥炭地に拡がる湿地が多く、海浜性植物と湿原性植物がみられる。



ヤチヤナギ。ヤマモモ科ヤチヤナギ属。
低湿地(谷地)に生えヤナギに似るところから「谷地柳」と呼ばれる。雌雄異株。
葉はやや厚手で両面に淡黄色の油点がある。果実は松かさ状で散布のための仕掛けは特別なく、遠方への散布を期待していないらしい。



モウセンゴケ。モウセンゴケ科モウセンゴケ属。
ミズゴケの堆積した高層湿原などに生える。低温と酸性水のため細菌類の働きが弱く、根から吸収できる栄養分が不足しやすい。
葉の周りから粘液を分泌して虫などを捕らえる。葉緑素をもち光合成するが、虫を捕えることでミネラル不足を補う。日本の食虫植物の代表である。



モウセンゴケの花。
総状花序に数個の花をつける。花序の先は「わらび巻き」状で、巻いた部分を伸ばしながら下から上へ咲きあがる。花弁は5個、雌しべは、基部で三つに分かれ夫々が2裂して全体として6裂したように見える。
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道北で見かけた花たち9

2012年09月28日 | 日記
サロベツは「サル・オ・ペツ(葦の生える湿地を流れる川)」を語源としている。



ナガボノシロワレモコウ。バラ科ワレモコウ属。
「吾亦紅」と書いて「ワレモコウ」と読む。何やら意味ありげだし、いろいろ語源説もあるが何れもいま一つすっきりしない。
「ナガボノ」はコバナノワレモコウの1変種で、ワレモコウよりも長い花穂をもつので「長穂の」と呼ばれる。穂状花序をもつ花の多くは無限花序で下から上へ咲きあがるが、ナガボノシロワレモコウは有限花序で上から下へ咲きさがる。



サワギキョウ。キキョウ科ミゾカクシ属。
名前の通り、沢・湿地に生えるキキョウの仲間。花冠は上下2唇に分かれ、上唇は細く2裂、下唇は3裂する。雄しべは花糸から葯まで合生して筒状となり雌しべを包む。
開花の最初に筒の中で花粉が押しだされ、マルハナバチなどの接触刺激で筒の中から花粉が押し出されハチたちにくっつく(雄性期)。花粉を出し終えたあと、雌しべの柱頭が伸び出す(雌性期)。写真の花は雌性期の花。



エゾリンドウ。リンドウ科リンドウ属。
「リンドウ」は漢名の「竜胆(りゅうたん)」のなまったものだという。竜胆は苦い物の代表である「熊胆(くまのい)」より苦いので竜胆と呼ぶ。
花冠は大きく開かないので観察しにくいが、雄しべ先熟の花である。初期には雌しべを包む雄しべから花粉が押し出され(雄性期)、花粉を出し切ったあと雌しべの柱頭が伸び出す。(雌性期)
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道北で見かけた花たち8

2012年09月27日 | 日記
「利尻礼文サロベツ国立公園」は日本で最北に位置するもので、サロベツ原生花園はその中にある。



ウメバチソウ。ユキノシタ科ウメバチソウ属。
日当たりの良い湿地に生える多年草。家紋の中に「梅鉢」と呼ばれるものがいくつかあって、それに似るところから「梅鉢草」と呼ばれる。
花弁と対生しているのは仮雄しべ(雄しべの機能は退化している)で糸状に多裂している。本当の雄しべは雌しべを抱くような形になっていて、活性化するときには1本ずつ立ちあがっていく。雄しべが花粉を出し終えてから、雌しべの柱頭は伸び出す。雄しべ先熟。



ヤマハハコ。キク科ヤマハハコ属。
雌雄異株。雌株の花冠は糸状、雄株では両性花の形をとる。写真は雄株。
総苞が白く、花全体が白く見える。
春の七草に数えられる「ハハコグサ(オギョウ)」はハハコグサ属でその両性花は稔るが、別属のヤマハハコの場合、両性花は不稔で雄花の働きをする。



オオマルバノホロシの果実。ナス科ナス属。
「ホロシ」は同じナス属の「ヒヨドリジョウゴ」の古名だが、ヒヨドリジョウゴは北海道の図鑑には載っていない。
果実は大変美しく「湿原の赤い宝石」と呼ぶ人もいる。これを有毒とする図鑑もあるが、平凡社「日本の野生植物」では毒性について触れられていない。毒性について触れられていないからといって全くの無毒という保証はない。
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道北で見かけた花たち7

2012年09月26日 | 日記
ノシャップ岬から南下する道道の脇に「コウホネ沼」あり、原生花園になっている。



クサレダマ。サクラソウ科オカトラノオ属。
オカトラノオ属のオカトラノオ、ヤナギトラノオ、クサレダマは、同属ながら同じ仲間の印象は薄い。
雄しべと花冠裂片とが対生するというサクラソウ科の共通点はもっているし、当然のことながら種子に網目模様がつくというオカトラノオ属の特徴も併せ持つ。



ホソバノヨツバムグラ。アカネ科ヤエムグラ属。
葉は4枚(ときに5枚)が輪生し、花冠は3裂する。オオバノヤエムグラに似たところもあるが、「オオバ」の葉は5~6枚が輪生し、花冠は4裂である。茎断面が四角で下向きの刺をもって他の植物などに寄りかかって伸びる点は一緒である。



オニハマダイコン。アブラナ科オニハマダイコン属。
北米原産の帰化植物で、1990年台に北海道への帰化が確認された。石狩浜でも近年急増しているが、オホーツクの海辺にも既に進出している。
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