井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

同じハンノキ属ながら違った面をもつミヤマハンノキ

2011年01月31日 | 日記
ハンノキ属には、「ハンノキ」のグループと「ヤシャブシ」のグループとがある。ミヤマハンノキはハンノキの名がついているが、「ヤシャブシ」のグループで、ケヤマハンノキとは違った性質を示す。



ミヤマハンノキの冬芽です。カバノキ科ハンノキ属。
雄花序の冬芽が裸出しているのはケヤマハンノキと一緒だが、ケヤマハンノキと違って雌花序の冬芽は裸出していない。葉芽と一緒になって混芽となっている。



ミヤマハンノキの開花です。
雄花序が下垂し、雌花序が直立するのはケヤマハンノキと一緒ですが、雌花序の葉の付き方が違います。葉と一緒に開いてきたのが分かります。



ミヤマハンノキの果実です。
果実はケヤマハンノキと似ています。葉の形はケヤマハンノキとはっきり違います。ケヤマハンノキは欠刻状の重鋸歯を持つ円形ですが、ミヤマハンノキの葉は先のとがった楕円形です。
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ハンノキよりも乾燥した場所を好むケヤマハンノキ

2011年01月30日 | 日記
ハンノキ属の学名アルヌスは「水辺に栄える」という意味だという。北海道の湿原にいち早く進出する樹木の一つがハンノキである。



ケヤマハンノキの冬芽です。カバノキ科ハンノキ属。
ハンノキの仲間は概ね湿地を好むが、ケヤマハンノキはハンノキよりは乾燥した土地に生育する。
写真右側の太い棒状の冬芽は雄花序で、中央部の小さい冬芽は雌化序である。
雄花序の冬芽が裸出するのはカバノキ科に多いが、雌花序の冬芽が裸出するのは珍しい。



ケヤマハンノキの開花です。
開花した雄花序は下垂して花粉を撒き散らす。本州の花粉症はスギ花粉が主役だが、北海道の早春の部はハンノキの仲間の花粉によるという。上部に雌花序が見え、前年の果穂が残って見えることもある。。
ハンノキの仲間は根粒菌と共生して空中窒素を固定できるので、やせた土地でも十分生育できる。



ケヤマハンノキの果穂と翼果です。
果穂はマツ科の球果に似るが、翼果の翼は小さく、飛散距離は伸びそうにない。
アイヌはこの樹を「ケネ」(血の木)と呼び、赤の染料に利用する。計根別(ケネベツ)や剣淵の地名はケヤマハンノキの「ケネ」に由来するという。
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「真カバ」と呼び「雑カバ」と区別するウダイカンバ

2011年01月29日 | 日記
カバノキの仲間の中で最も材質がよく、「真カバ」と呼ばれる。その他のカバノキは「雑カバ」と呼んで区別する。



ウダイカンバの冬芽です。カバノキ科カバノキ属。
上部の3本の棒状のものは雄花序の冬芽で裸出している。この辺はシラカンバやダケカンバと一緒で、冬芽だけでの種の同定は難しいですが、シラカンバの雄花序は2本のことが多く、ウダイカンバでは4本となることが多いので、その辺で推定出来たりします。



ウダイカンバの果穂です。
シラカンバとの違い。シラカンバの果穂が1本ずつであるのに対して、ウダイカンバの果穂は2~4本まとまってつきます。ダケカンバとの違い、ダケカンバの果穂が上向きであるのに対して、ウダイカンバの果穂は下垂するところです。
葉はシラカンバやダケカンバの約2倍の大きさがあり、葉身の基部ははっきり心形になっているので、葉だけでも見分けることができます。



ウダイカンバの樹皮です。
シラカンバの白に対して灰白色、ダケカンバのような赤みは殆どなく、割合見分けはつけやすい。ただし、それぞれに個体差があるから、見分けが難しいケースもあります。また、横に長い皮目も特徴の一つになっている。
ウダイカンバで作る松明(タイマツ)は水に強くて雨の中でも使える。鵜飼に使われるので「鵜松明」(ウタイマツ)と呼ばれ、そこから「ウダイカンバ」と名づけられたという。
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「しなやか」で「したたか」な生き方をするダケカンバ

2011年01月28日 | 日記
ダケカンバもシラカンバ同様の典型的な陽樹だが、シラカンバのように山火事跡など広い撹乱地だけでなく、小さなギャップにも入り込める。それだけ、ダケカンバの方が「しなやか」で「したたか」な生き方が出来るということだ。



ダケカンバの若果実(果穂)です。
シラカンバの果穂は受粉後下向きに下垂するが、ダケカンバの果穂は上向きに直立したままである。
シラカンバの果穂は熟すとばらけて、翼果と果鱗を風に乗せて飛ばすが、ダケカンバの果穂はばらけにくく、遅くまで枝先につけている。



カバノキ属の果穂です。
左から右へ、シラカンバ、ウダイカンバ、ダケカンバの順です。
ダケカンバの果穂が一番短い。果穂が下垂せず上向きのままなのはダケカンバだけです。



ダケカンバの翼果と果鱗です。
ダケカンバの翼果はシラカンバやウダイカンバと比べて翼がずっと小さく、種子部分は大きい。
高山帯での散布で条件がより厳しい分、散布距離よりも種子を大きくして栄養分を多くするほうに重点をを置いたものと考えられている。
果穂がばらけにくく上向きのままであることも、風の強いときだけ翼果を飛ばす戦略かもしれない。
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より厳しい森林限界地で踏ん張るダケカンバ

2011年01月27日 | 日記
シラカンバも高原の樹といわれるが、ダケカンバの高山性はそれより強く、森林限界といわれる環境でダケカンバは頑張っている。



ダケカンバの冬芽です。カバノキ科カボノキ属
シラカンバの冬芽によく似ていて、冬芽だけで樹種の特定は難しい。雄花序の冬芽が裸出、雌花序は葉芽とともに芽鱗に包まれている点は、シラカンバと一緒である。



ダケカンバの樹皮です。
赤褐色または灰白褐色といわれ、いずれにしても若干赤みがかるのが特徴。但し、個体差も結構あるから樹皮だけで判定できないケースも多い。
森林限界辺りのダケカンバは、風雪の影響で捻じ曲がっているものが多く、「踊りカンバ」などと呼ばれることもある。いずれにしても低山で素直に成長した樹とは印象が大きく異なる。



ダケカンバの葉です。
大きさも側脈の数も、シラカンバとウダイカンバの中間にあたる。
耐寒性に優れているが、高地での遅霜にやられないよう、開葉はシラカンバよりずっと遅い。
光合成できる期間が短くなる分、強い光を最大限に利用し、効率よく光合成する能力をもつ。
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