ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『できない相談』『心の傷を癒すということ』

2020-12-19 21:26:49 | 
『できない相談』 森絵都 筑摩書房
 なんでそんなことにこだわるの?と言われても、人にはさまざま、どうしても譲れないことがある。誰もがひとつは持っている、そんな日常の小さなこだわり・抵抗を描いた38の短篇。
 さらっと読める。意外な角度から切りこんでくる話。他人にはどうでもいいことでも、本人は重大なことだったりするものなのだ。反対もある。「明らかに両手が塞がっているとき」「押し売り無用」「羊たちの憂鬱」が好み。

『新増補版 心の傷を癒すということ』 安克昌 作品社
 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ被災者の「心の叫び」と、自らも被災しながら取り組みつづけた精神科医によって、阪神大震災の被災地から届けられた“心のカルテ”。本書は、サントリー学芸賞受賞作に改訂を加え、さらに新たに阪神大震災および災害精神医学に関するエッセイや論考を大幅に増補し、そして著者と関係の深かった方々の文章を収録した決定版。
 長期的に見た心のケア、子どもへの心のケア、救援者(消防士や看護師など)への心のケア、被災者の心の動きなど、専門的なことをわかりやすく解説している。
 NHKのドラマと関係あるのは、「新増補 神戸・淡路大震災から二十五年を経て」弟さんの文章には、安先生のお兄さま(東日本大震災時の福島原発事故を原子力の専門家として提言し、奇しくも安先生と同じガンで亡くなる)の話もあり、すばらしいご兄弟だと思うと同時に二人の兄を亡くされた弟さんもお辛かったと思う。安先生の喪主がお兄さまで、「えっ、奥さまじゃないの?」と思ったら、亡くなる二日前に奥さまは出産しておられたのだった。早すぎる死に、奥さんやお子さまのことを思うと胸がしめつけられる。
 たまたま知り合いが安先生と同じ職場だったことがある方で、その方から安先生役の柄本佑さんがすごく似ていること、安先生ほどいい方はいないことを聞いていた。もし、生きていらしたら、このコロナ禍にどんな提言をしていらしただろうかと思い、残念でならない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

俳句ポスト365 兼題「鮫」で人

2020-12-18 07:22:42 | 俳句
 俳句ポスト365 兼題「鮫」で人選いただきました。夏井組長、ありがとうございます。実は句友(妹と東京時代のお友達)と一緒に初めての人選。三人一緒でうれしいです。私が、並ばかりで足を引っ張っていたのが事実ですが。
 鮫は、わりと楽しく作ることができました。(というか、あまり季語を考えていない・・・(-_-;))ただ、職場で腹が立ったことがあり感情的に作った句は没でした。あとで冷静になって考えたら、なんという句を出したのだろうと恥ずかしかったです。もう一句は、オノマトペを使ったものですが、作為的だったかと反省。他にお気に入りの一句も没。どこが悪いのか考えるのも勉強ですね。

身罷るの響き美し鮫眠る  丸山隆子

 本を読んでいて「身罷る」の文字にひきつけられました。「死ぬ」と違って、なんと美しい言葉なのだろうと。「死ぬ」は事実だけだけれども、「身罷る」は愛情や尊敬を感じたのです。その気持ちを素直に読んだのがよかったのかなと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吉例顔見世興行 第三部

2020-12-16 23:57:28 | 歌舞伎
 京都南座へ顔見世を見に行ってきました。





 席は右サイドの特別席。靴を脱いで掘りごたつ式の席に入ります。床暖房で足の裏はほっこり。前に机があるので、水筒を置いたり、手をのせたり。二人のところをソーシャルディスタンスで一人で利用しているのため なかなか快適でした。
 席は、ソーシャルディスタンスで前後左右が開いています。また、花道の脇も座ることができません。定員の半分以下なので、トイレは空き空き。それは、よいのですが、大向こうは禁止、人数が少ないので拍手も小さめ。ちょっとさみしい。
 お囃子の方も黒いマスク状の布を装着。チケットも自分で半券をちぎってとコロナ対策はバッチリのようでした。

吉例顔見世興行 令和2年12月5日~12月19日 京都南座
第三部


<末広がり>
 女大名(米吉)から末広がり(扇)を買ってこいと言われた太郎冠者(尾上右近)が、末広がりが扇とは知らず、古傘を売りつけられて帰る。ついでにお酒を飲んで酔った太郎冠者に怒る女大名でしたが、最後は舞を舞って機嫌を直す。
 米吉さんと尾上右近さんは、美男美女のカップル。綺麗でした。

<廓文章>
 大阪でも指折りの大店の若旦那伊左衛門が吉田屋を訪ねる。伊左衛門は、夕霧に入れあげ借金を抱えて、家を勘当された身だが、夕霧が病に臥せっていると聞いたのだ。うらぶれた伊左衛門は、座敷に通され、夕霧を待つ。待ちわびた夕霧が現れても、すねる伊左衛門。そこへ、勘当が許され、夕霧の身請けの金が届けられた知らせが届き、二人は夫婦として、目出度い新春を迎えるのだった。
 壱太郎さんは、恋煩いでやつれた夕霧を演じます。幸四郎さんは、色男だがコミカルな動きで笑わせます。特に幸四郎さんのおかしみのある演技(好きな夕霧を待ちわびているところや夕霧に会えても素直に喜びを表されないところ)がよかったです。

 今年も顔見世を見ることができて幸せです。例年通りということが どんなに尊いことか。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『茶聖』

2020-12-15 23:20:51 | 
『茶聖』 伊東潤 幻冬舎
 「茶の湯」という安土桃山時代を代表する一大文化を完成させ、天下人・豊臣秀吉の側近くに仕えた千利休。茶の湯が、能、連歌、書画、奏楽といった競合する文化を圧倒し、戦国動乱期の武将たちを魅了した理由はどこにあったのか。利休は何を目指し、何を企んでいたのか。秀吉とはいかなる関係で、いかなる確執が生まれていったのか。
 お茶を学んでいるわりには、利休を主人公とした本を読んでいない私。だから、他の作者の本と比較はできない。
 ただ、528ページもある割には、するすると読むことができた。受験で日本史を選択したはずなのに日本史の記憶があまりなく、戦国時代が苦手な私だが、信長や秀吉がお茶に目をつけた理由や利休がフィクサーとして目指したものがわかった気がする。秀吉と利休のヒリヒリするような関係や利休と家族の思いやりなど、読んでいておもしろかった。
 2017年に見た「茶の湯」展、「茶碗の中の宇宙」展の図録を持っているので、本に出てくるお茶碗や茶入れを探しながら読んだ。お茶碗では「白鷺」「禿」「無一物」「大黒」茶入れでは「初花肩衝」「尻膨」を見たことがある。これって、すごくないか?安土桃山時代の壊れやすいお茶碗やお茶入れが大事に現代に伝わっている。しかも美しい。お茶碗を作った長次郎もすごいし、美を見出した利休もすごい。改めて思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『イギリス絵本留学滞在記』

2020-12-05 23:31:32 | 
『イギリス絵本留学滞在記』 正置友子 風間書房
 50代半ばにしてイギリス留学へと旅立つ。美しいウォルター・クレインの絵本と出会い、絵本の研究に没頭。その結果、イギリスでも知られていなかったヴィクトリア時代の絵本に関する詳細な博士論文に結実した。本書は、その6年間のイギリスでの生活と学び・研究の日々を綴る。「いくつになっても、学びと旅立ち」への勧めの書でもある。
 54歳でイギリス留学し、6年間学ぶ。50代では、経験・思考・集中力・気力・体力もあり、迷うことなく一つのテーマに集中できるという。きっと留学に向けて、英語を必死に勉強し、備えていたのだろう。「ご主人の理解があったから留学できたのですね」と言われるが、これが反対ならば「奥様のご理解があったから留学できたのですね」と言われるだろうかという一文にドキッとする。夫や子をできない理由にしていないだろうか?「自分の『生』を大事にし、社会に責任をもつ賢く強い人になる」というエールを胸に刻もう。
 『大森林の少年』を訳した灰島かりさんの名前もでてきて、驚く。
 2017年に滋賀県立近代美術館で見た「ウォルター・クレインの本の仕事」展の図録を引っ張り出して見る。正置先生の文があることに気付く。友達に薦められて行った展覧会だったが、本を読んだ今、いい展覧会に行ったものだとしみじみと思う。あの時より絵本の知識がちょっぴり増えた今、あの展覧会に行っていたら、もっと感じ方が違っていただろうな。残念。
 彫版師エヴァンスの重要性がよくわかった。子どものために最高の絵本を!とした当時の熱量が感じられた。「絵本は未来に生きる子どもたちへのおとなからのプレゼント」という言葉も胸に刻もう。残念ながら、本屋で見る新刊の絵本は「小説は書けないが、絵本ならできると思ってない?」と思うようなものが多く、力を感じるようなものが少ないと思うのだが・・・。
 今年はコロナ禍で読み聞かせのボランティアができない。「せめて低学年でも絵本を読んであげたいね」と言っているが、実際は私が子どもたちと絵本の世界に浸りたいのだと思う。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする