ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『熱源』『落日』

2020-09-15 21:36:08 | 
『熱源』 川越宗一 文藝春秋
 樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
 直木賞受賞作にふさわしい骨太な作品。白瀬矗や大隈重信、金田一京助が出てくるなんて、なんか嘘くさいと思ったが違った。文明を押し付けられる側の苦しさや悲しみ、戦争の非情さと虚しさ、人として生きていく誇りなど壮大に描く。
 アイヌの叙事詩とか読んでみたくなった。

『落日』 湊かなえ 角川春樹事務所
 新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。
 途中まで、なかなか進まなかったが、中途から後半へ一気に読んだ。バラバラだったピースがピタリとおさまった快感と薄日がさすようなラスト。結構、よかった。
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