ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『TIMELESS』『不在』

2019-04-17 20:27:11 | 
 予約本が一気にきて読まないといけない。強迫観念にかられたように必死で読んでいるが、果たして楽しんで読んでいるのだろうか。義務のように読んでいて、頭に入らないような。

『TIMELESS』 朝吹真理子 新潮社
 恋愛感情も性関係もないまま結婚をした、うみとアミ。高校時代の教室、広島への修学旅行、ともに歩く六本木、そこに重なる400年前の土地の記憶、たゆたう時間―。ぎこちない「交配」を経てうみは妊娠、やがてアミは姿を消す。2035年、父を知らぬまま17歳になった息子のアオは、旅先の奈良で、桜を見ていた…。
 timeless-時代を超越した- その通り、時代が行き来するので、現在なのか過去なのかわからなくなる不思議な感覚。
 作者の文章は、透明感があふれていて、雨が降っている朝のような静かでしっとりした感じ。私の好みの文。私の名前の知らないハイブランド名、教養あふれる単語など、一つ間違えれば鼻につくところをバランスを取って成立している。
 桜の季節に読んだから「桜に酔う」とか「桜にあたる」という言葉がしっくりくる。風に揺れる桜を見ていると「おいでおいで」をしているようで、違う世界にもっていかれそうな気持ちになるもの。
 なんだかよくわからない読後感だった。

『不在』 彩瀬まる 角川書店
 長らく疎遠だった父が、死んだ。「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」。不可解な遺言に、娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決めた。25年ぶりに足を踏み入れた錦野医院には、自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。恋人の冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むに連れ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。次々現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて――。
 明日香も父も仲良くなりたい人を攻撃してしまう。家族だから何をしてもいいとか、家族だから自分の苦しみを分かち合い癒すべきだとか、大間違い。「親しき中にも礼儀あり」なのだ。
 明日香は、昔住んでいた屋敷の整理をしているうちに、自分の過去と向き合う。父に愛されなかったとか、厳しかったとか。そして、「無理に愛さなくていいし、愛されなくていい」「辛いことを生き延びた先で、すごくきれいな景色を見られる」と明日香は考えるようになる。いろいろあるけれども、「いい日をたくさん作ろうね」という言葉はいいなと思った。
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