ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『バラカ』

2016-05-16 20:58:58 | 
『バラカ』 桐野夏生 集英社
 震災のため原発4基がすべて爆発した!震災を背景に、子供欲しさにドバイの赤ん坊市場を訪れる日本人女性、酒と暴力に溺れる日系ブラジル人、絶大な人気を誇る破戒的牧師、フクシマの観光地化を目論む若者集団、悪魔的な権力を思うままにふるう謎の葬儀屋、そして放射能警戒区域での犬猫保護ボランティアに志願した老人が見つけた、「ばらか」としか言葉を発さない一人の少女……。それぞれの人生が交錯する。
 震災、原発、人身売買、キャリアウーマンの出産への焦りとてんこもり。しかし、こんがらがらずに、グイグイ読ませる桐野さんの筆力はさすが。ただ、後半は急ぎすぎた感じなのが残念。
 バラカがおむつをかえてもらえず、パンパンのおむつをしているところや冷めた朝食を一人で食べる姿に、胸がつまる。その後も、原発反対派と推進派、それぞれの象徴として利用されるバラカ。子供を利用する大人のいやらしさにゾっとする。どちらがバラカの味方なのか、味方と見えて実は敵?と読んでいるほうも疑心暗鬼になる。バラカに悪いことがおこらないようにと祈りながら読んだ。
 川島という人物が、とにかく気味が悪かった。女性の嫌な部分や気持ちの悪い人物を描くのも桐野さんは、うまいなあ。
 月明かりに照れされた瓦礫の上を海の方から大勢の人間が歩いてきて、バラカも一緒に歩いていく場面の静かな美しさが心に残った。
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