ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『岩波少年文庫のあゆみ』『神よ憐れみたまえ』

2021-10-24 23:39:50 | 
『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』 若菜晃子編著 岩波少年文庫
 岩波少年文庫は1950年のクリスマスの創刊以来、途切れることなく刊行され続けてきた。過去の資料を駆使し、各時代に書かれた著名人のエッセイも織り交ぜながら、70年のあゆみを振り返る。代表作と作家の解説、挿絵画家の逸話、翻訳者の仕事にも光をあて、少年文庫の全容を紹介する初の保存版。総目録付き。
 「岩波少年文庫が家の書棚にいっぱいあったら、いいな」と思っていた。ある篤志家が学校図書館に岩波少年文庫を寄贈したと聞いた時「いいなあ、羨ましい」と思った。その岩波少年文庫を網羅した一冊。読めば、また読み返したくなる。子どもたちに最高のものを手渡そうとする編集者たちの熱い想いに読んでいる私の心も激アツになる。
 宮崎駿の「子どもたちにむかって絶望を説くな」「この子たちが生まれてきたのを無駄と言いたくない」の言葉がいい。決して幸せとはいえない子供時代を過ごした猪熊葉子さんの「本の世界で出会う子どもたちや彼らの経験する出来事は私に肯定的な人生の可能性をおしえてくれた」という言葉も。
 「おわりに」に若菜晃子が述べる言葉も心に残る。「かつてあったいいことは、どこかで生き続ける。人間はかつてあったいいことを支えに少しでもいい未来を信じていきているのではないだろうか」「今まさに子ども時代を送っている人たちがいたら、自分の好きなこと大事なものを手放すにいることが自分を生かすことになると伝えたい」

『神よ憐れみたまえ』 小池真理子 新潮社
 昭和38年11月、三井三池炭鉱の爆発と国鉄の事故が同じ日に発生し、「魔の土曜日」と言われた夜、12歳の黒沢百々子は何者かに両親を惨殺された。母ゆずりの美貌で、音楽家をめざしていたが、事件が行く手に重く立ちはだかる。
 百々子の12歳から62歳までの激動の人生を描く。570ページと言う分量にたじろぐが、心配は無用。グイグイと読ませる。
 ただ、左千夫が生理的に受け付けない・・・。が、後半の函館への墓参りには、強風や寒さと共に左千夫の孤独を妖しくも感じた。
 救いは、家政婦たづとその家族。百々子を愛で包む素朴なあたたかさがいい。百々子の両親から無条件に愛された思い出。「岩波少年文庫のあゆみ」にあったように、かつてあったいいことがあったからこそ、百々子は生き続けることができたのかもしれない。
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