ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『ストーカーとの七00日戦争』『傲慢と善良』

2019-12-21 15:02:20 | 
『ストーカーとの七00日戦争』 内澤旬子 文藝春秋
 ネットで知り合った男性との交際から8カ月―ありふれた別れ話から、恋人はストーカーに豹変した。誰にでも起こり得る、SNS時代のストーカー犯罪の実体験がここに。
 実体験なのでリアル。どんなことが怖いか、どんなことに困るのかが具体的に書かれている。手続きやら聴取やら引っ越しやらと被害者なのに恐怖に怯えながら煩雑なことをしなければならない。そして、さまざまな適応外という壁。何かずれている弁護士にイライラしたり。ストーカーの勝手な言い草に怒りを覚えたり。
 作者がストーカーに対し、厳罰と治療を望むと聞いて「治療?」と違和感を持った。しかし、なんの治療もなく出所したら又同じことになりかねない。治る可能性があるのだから、被害者が安心して暮らすために治療してほしいというのを読んで、ようやくわかった。けれども、治療を望むことで処罰感情が少ないとして加害者が減刑になるかもしれないというのは納得がいかないなあ。
 
『傲慢と善良』 辻村深月 朝日新聞出版
 ストーカー被害にあっている婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
 結婚相談所の小野里さんの話が秀逸。婚活がうまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人、ビジョンのある人。
 現代の結婚がうまくいかない理由は、傲慢さと善良さ。自分の価値観に重きを置きすぎる傲慢。善良すぎて、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多く、自分がない。
 ピンとこない、の正体は、その人が自分につけている値段。私の価値はこんなに低くない。もっと高い相手でなければ、私の値段と釣り合わない。皆さん、自分につける値段は相当高い。など。
 真実<まみ>の名前が、<しんじつ>とも読め、架と共に真実の真の姿を求めて、のめりこんでいった。真実の辛さや閉塞感が悲しい。架の女友達の話を聞くまでは、女子力のない私は真実のことが読めなかった。
 第一部の前段が、第二部の始めに繰り返される。同じ文章により詳しく文を添えて。その技が見事。
 ラストは意外な方向に舵を切るが、読後感がよかった。
コメント
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