ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『ユートピア』『霧』

2016-05-28 21:49:56 | 
『ユートピア』 湊かなえ 集英社
 地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、夫の転勤がきっかけで社宅住まいをしている妻・光稀、移住してきた陶芸家・すみれ。美しい海辺の町で、立場の違う3人の女性たちが出会う。奈々子の娘で足の不自由な小学生・久美香の存在をきっかけに、母親たちがボランティア基金「クララの翼」を設立。しかし些細な価値観のズレから連帯が軋みはじめる。
 一気に読む。しかし、これが『ガラパゴス』をさしおいて山本周五郎賞を受賞したと聞くとちょっと違うのではと思ってしまう。ドロドロ系の女性心理描写は、さすが。でも、最後が曖昧で消化不良な気持ちになる。女性たちは、『ウラル』の女性たちと比べると軽くて浅い。現代の女性は、上手に安全な逃げ場所を確保しているからか。

『霧(ウラル)』 桜木紫乃 小学館
 国境の街・北海道根室。戦前からこの町を動かしてきた河之辺水産社長には、三人の娘がいた。長女智鶴は政界入りを目指す運輸会社の御曹司に嫁ぎ、次女珠生はヤクザの姐となり、三女早苗は金貸しの次男を養子にして実家を継ぐことになっている。智鶴の夫・大旗善司は、昭和四十一年の国政選挙に出馬する。選挙戦を支えたのは、次女・珠生の夫で相羽組組長の相羽重之が国境の海でかき集めた汚れた金だった。
 浅井三姉妹、宋家三姉妹、極道の妻たち、宮尾登美子さんの作品を思い起こさせるような作品。北海道の何もないような寒々とした風景と主人公の心象がだぶるようで、私は好き。何といっても、女たちの覚悟が潔い。ただ、父親の河之辺を丁寧に描けば、もっといい作品になるのにと考えると残念。しかし、続編があると思うので、ぜひ読みたい。 
コメント
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