浜名史学

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「後見(うしろみ)」の政治

2024-07-07 10:27:31 | 政治

 丸山真男の講演録、「政事(まつりごと)の構造 政治意識の執拗低音」が、『現代思想』(1994年1月号)に掲載されている(のちに臨時増刊号『丸山真男 生誕100年』にも掲載された)。

 そこで丸山は、「正統性の所在と政策決定の所在とが、截然と分離されているというのが、まず第一に日本の「政事」の執拗低音をなしております」と語っている。

 その事例として、丸山は摂関政治、院政をとりあげている。権力の正統性は依然として天皇にあるが、実際の政事は、摂関政治では摂政、関白、院政では太上天皇が行っていた。明治維新によって成立した近代天皇制国家においても、権力の正統性を天皇が保持しながらも、政事を行っていたのは大久保利通、伊藤博文らの「明治の元勲」らであった。

 中国の場合は、皇帝が正統性だけではなく、実際に政事も行っていた。

 そして鎌倉時代以降は、幕府が政事を行うことになった。幕府のトップ・征夷大将軍として、正統性を天皇から付与されている。

 丸山は、「政事の正統性を持っている最高統治者の背後にいつも、「後見(うしろみ)」がいて、リモコンをしています。皇室の内部ではやがて「院政」が登場しますが、この院政もやはり「後見」と呼ばれました。」

 しかし、摂関政治、院政において、実権をにぎるのは、それぞれの家政機関(摂関家では「家司(けいし)」、院政では「院司(いんし)」)であった。鎌倉幕府においては、当初「執権」、さらには執権家の家政機関である「内管領」が実権を握るようになった。

 丸山は、「権力の下降化がここでも他方では「身内」化として現れる」と指摘する。

 つまり日本の政事は、正統性を持つ権力者ではなく、「後見」という機関、さらに家政機関がおこなうようになるのである。

 現在の日本政治をみると、一応日本政治を担う正統性を制度的にもっているのは、自民党・公明党の岸田政権ではある。しかし実際に実権を握っているのは、その「後見」としてのアメリカ軍(アメリカ政府ではない)と経団連などの財界である。自民党・公明党政権の政治をみつめていれば、こういう勢力の意のままにされていることがわかる。その結果が「日本が「4年連続1位→38位」に転落した国際的指標 韓国は20位、アジアで日本より下位は3カ国のみ」なのである。

 さて東京都は、都知事が正統性をもち、実権も都知事がもつ。その実権を振るう都知事の周辺には、自民党や特定の企業(電通、三井不動産など)がいる。都市開発を担う都市整備局は、三井不動産などと話し合いながら青写真をつくっているという。

 民主的な制度をつくってはみたが、日本では、実際は「後見(うしろみ)」政治が行われている。

 

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