感想

バラとおわら風の盆と釣りなどの雑記

現代ミステリー事情

2008年01月17日 | 雑記
毎年年末になると、ミステリーベスト10というのが発表され書店にはベスト5位までは、並んでいます。私は、ベストセラーなど売れている本は全く読まないのですが、数年前までは、このミステリーに関してはほとんどチェックしていました。ところが近年は期待して読んでみてもつまらないものがほとんどで、一昨年買った本はベスト1の作品だけ、昨年末はベスト5上位の中で唯一おもしろそうなものを読みました。一昨年の作品はあちこちで話題に上りましたが、私は途中からトリックとストーリーが判りどうしてこれが1位なのかと疑問に思ったものです。同作家の作品は良く新人の頃読みましたが、プロットも良く、トリック、ストーリーテラーとしても十分力を持った方なので、その本のつまらなさぶりが、反って意外でした。さて昨年は1位は確か警察小説でこれはこれで、おもしろそうでしたが、なんとなく題名にひかれて、「赤朽葉家の伝説」を読んでみました。ちょうどこの作家が昨日直木賞を受賞されたのですが、男性のペンネームでしたのでしたが、少し綺麗過ぎる名前なので、女性なのだと勝手に思いながら読みましたが、読後調べると果たしてその通り女性の方なので驚きました。直木賞を受賞した作品は、この赤朽葉家の伝説ではありませんでしたが、これを読んでも作家の技量が優れていることが判る作品です。本作は日本推理作家協会賞を昨年受賞しています。さて、本作品についての率直な感想は、ストーリーとしておどろおどろしい山陰の山中の村を舞台に女三代にわたる伝奇小説に入るもので最初のページから一気に最後まで読ませる魅力ある作品になっています。作者が意識してそう書いているのか、作者の若さが気になる点が多々あることを除くと、秀逸な本に仕上がっています。ただこれがミステリーであるかというと、本格推理小説における謎の提示と明快な解決という点に関しては、最後の方は少し出てきたくらいですので、その点では期待はずれとなっています。もちろんそんなことを考えずに、通常のミステリーあるいは読み物としての魅力は十分ですので、買って読んで良かったと思えた作品には違いありません。近年の本格推理の分野のミステリー、特に日本の作品はトリックが出尽くした感があり、私が知る限りでは読者との知恵比べという本格ミステリーの楽しみは無くなってしまいました。海外においては、モース警部の最後とともに新鮮なトリックとプロットによる読者をあっと言わせる作品が少なくなってきていますが、やはり世界は広く、日本人作家による上質な本格推理が期待できない以上、まだまだ海外に目を向けるといい作品にめぐりあえることができそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする