真菌とは所謂カビ・キノコの類のことだ。木の根と真菌・キノコの関係について以前から耳にしてはいたが、あまり興味を持っていなかった。ところが、最近の研究や実験結果を基に木とキノコの話を聞くと、木や森について非常に重要なことにこれまでは一部でしか関心が払われてなかったのだと感じる。
森や林では、木の根に入り込む菌根菌と呼ばれる種類の真菌によって、複数の木が地中で真菌を通した繋がりを持ち、互いに栄養の融通のようなことをやっているという。さらに、真菌類が地中の栄養を木に送り込み、その代わりに木の葉で光合成で作られた栄養を真菌が貰うという共生関係もあるらしい。
実験用の大きなプランターに2つの木を植え、片方を完全に覆って光合成が起きないようにした時、地中で菌根菌の繋がりが遮断される条件では覆われた木は当然枯れてしまう。しかし、2つの木が地中で菌根菌による繋がりを持てるような条件にしておくと、光の当たる木からの栄養が菌根菌を通じて送られ、覆われた木は枯れないという実験があるそうだ。
そうなると、森や林を健全に維持していくには土の中の菌根菌の活躍を促し、あるいは邪魔しないような方策が必要だということになる。あるいは、街路樹や公園などの木々を維持・成長させるについても、その木の周りで菌根菌がちゃんと発達できるようにしておく必要があるということ。
周りの土壌や草木の状態とは無関係に、あるいは舗装された歩道に開いた直径1m足らずの土に一本の木を植えても、水と日光さえあれば木は一本で成長していくと何となく思い込みがち。しかし、その周囲の木の根の届く範囲に菌根菌で繋がれる木々が無ければ、結局は成長が悪くなり枯れてしまうのかも。
あるいは、近頃よく聞く「土壌殺菌」「土壌消毒」などで菌根菌を駆除してしまうようなことがあれば、短期間に直接は木に害を及ぼさないような薬剤でも数年単位で見ると木の成長に悪影響を与えているのかも知れない。
20世紀後半、酸性雨による森の土壌の酸性化がヨーロッパの森にダメージを与えたのは良く知られている。都市近郊の公園や森で立ち枯れが目立つというニュースを聞くことがあるが、そのような林や森の土壌調査が急がれるような気がする。その際、土壌中の真菌類の変化に関する調査が、実は非常に重要な項目となるのだろう。