愚ダメ記、真誤付き、思い津記

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ムギマキ

2022-11-04 | 日記
「ムギマキ」という小鳥を見るために、1時間半ほど離れた山まで出かけた。黒い羽と胸の橙黄色が奇麗な鳥である。この季節からして、その名前は「麦撒きの季節に現れる鳥」ということで付けられたのでは、と推測する。もしかすると、かつては秋が深まってムギマキの姿を見ると「そろそろ麦撒きの時期が来たなぁ」と農作業の目安にしていたのかも知れない。
 現在、そのムギマキが来る時期に周囲の田畑を見ても、麦を撒こうという状況にはない。平地の田んぼでは、まだ稲刈りが済んでない所さえある。稲刈りを終えた田でも、耕して畝を造り麦撒きの準備と思しき姿は見当たらない。ムギマキを探した山の近くの田畑も、冬の麦作に向けて準備している気配は感じられなかった。
 かつての麦作を知らない世代にとってムギマキと言う鳥の名は、その鳥の姿や行動とは全く結び付かない「単なる符号」に過ぎなくなってしまったということだろう。
 昔は当たり前に行われていた二毛作という農業は、本当に少なくなった。冬の間も稲刈りの後の田んぼのままという所も多い。それはそれで、冬にやって来るガンの仲間の餌場として役立っているのだが、「ムギマキ」という鳥の名前に込められていた「鳥と人の結びつき」や「日本人の季節感」がまた一つ失われて行くようで寂しい。野山で野鳥の姿が減りつつある昨今、せめてムギマキの名を負った小鳥までが姿を消してしまわないように、と願うのみだ。
コメント
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