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原発事故の再検証

2021-03-07 | 日記

3月11日が近づき、東日本大震災とその後を取上げた番組が多くなっている。その一つで、原発事故に関する検証でその後分かって来た事実、あるいは整理されてはっきりして来た事実がいくつか紹介された。事故の最中や事故後の報道の中でその一端が見えていた物もあるが、全く知らなかったものもあった。

 一つは「水位計の誤作動の可能性を見落として、原子炉内の水位低下に気付くのが遅れた」こと、2つ目「圧力を逃がすためのベント操作によって、水素ガスが建屋内に送り込まれてしまった(その可能性を見落とした)」こと、3つ目は「外部からの炉内への注水が途中で別経路に漏れていて、原子炉内に届かなかった」こと。さらに、「非常用復水器操作の経験がなく(訓練が行われなかった)、それが動いていると誤認していた」ことも分かって来たという。

 炉内の水位を計る水位計の特性や緊急時の誤作動の可能性は、水位計の仕組みを実験で説明されてみると分かりやすく単純なことだった。その水位計の仕組みを考えず、機器の数値を読み取ることだけを練習していたのでは、誤作動の可能性に気付くことが当然できなかったはず。実際に機器を読み取って操作していたスタッフよりも、緊急時に当たっての各機器が正常に作動するかどうかを検討しなかった、あるいは検討結果を現場に周知していなかった側の責任になるだろう。

 ベントによる水素ガスの建屋内への逆流(建屋内での水素充満が水素爆発の原因となった)や、炉心に注水するはずの経路の途中から別経路に漏れだしていたことは、パイプ接続全体の設計図があれば事前にチェックできたはずではと思えてならない。電源が落ち、真っ暗で余震が続く中で、次々と変わっていく事態に対応しながら、同時に全設計図を正確にチェックするのはかなり困難だったと考えるが、現場から離れた場所にいた関係者が冷静に設計図をチェックし的確な助言を行えなかったのか、と残念な思いが湧く。

 米国スリーマイル島での原発事故の後のアメリカでは義務付けられたという非常用復水器操作の訓練も、福島の原発では建設時の動作確認のみで数十年間一度も行われいないとか。その結果、一度目にすれば一目瞭然の「IC作動時の蒸気排出量と設備損傷などによる蒸気漏れの違い」を判別できなかったということらしい。このようないくつかの誤認や判断ミスは、結局は「日本の原発で事故は起きない」という「安全神話」的妄想によって、電源喪失やメルトダウンという「過酷事故(と呼ぶらしい)」を全く想定しなかったことに起因していることが分かる。世界標準では作成が義務付けられた過酷事故に対処するマニュアルも、日本では義務付けられていなかったという。

 日本では「過酷事故」発生時の対応や対処マニュアルも作られないこととなる。おそらくは、「過酷事故を想定することは、その可能性があることを認めることになる」ということで、「それを想定しないことが、安全性のアピールとなる」という「政治的判断?」なのだろう。「高さ10mの津波が起きる可能性」について(幸運にも)事前に研究者から警告があったにもかかわらず、と本気で対応しなかった。せめて非常電源だけでも高い場所に移していればと悔やまれるが、「起こり得るとしても、多分直ぐには起きないだろう(?)」との安全神話依存体質があったのだろう。

 確かに、一つの研究データに従って高さ10mの津波が起きる可能性を認めれば、社会は一時騒然となったかも知れない。しかし、その可能性を認めたうえで、最低限取り得る方策を考えて置けば、少なくと東北沿岸の津波は最高10mを超える可能性を周知出来ていれば、少しでも津波被害を減らすことができたのではないかと思えてならない。「東海大地震」の可能性が宣言された時、確かに世の中がは多少騒然となったが、数百万の人々が何年にもわたってそれに備える訓練を重ねて来たという実例もあったのだ。より具体的に津波への警戒心が存在した東北地方で、それが出来ない根拠はない。

 「想定外だった」というのは「それを想定していなかった」ということであり、当然ながら「想定する必要なし」という十分な証拠・証明が無い限り、それは「怠慢」とか「油断」という意味になる。「社会不安を煽る」とか「総合的見地」という曖昧な判断で科学的事実を隠すことが、やがてその「政治的利益」を超える禍を生み出す元凶となりうることを、あらためて肝に銘じるべきではないか。科学的事実を発表した上で、それにより生じる「社会的不安」を「困難克服への工夫と努力」に変えて行くことが、真の意味での「政治判断」であり「総合的見地」の発露ではないのだろうか。

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