国際アグリバイオ事業団によると、2011年度の世界の遺伝子組換え作物の作付面積は、29カ国で1億6000万ヘクタールとなっています。
2009年の作付面積が25カ国で1億3400万ヘクタールとなっていますので、2年で約2割も増加したことになります。
主な生産国は、米国(約43%)、ブラジル(約19%)、アルゼンチン(約15%)、インド(約6.6%)、カナダ(約6.5%)で、この5カ国で約9割を占めています。
2011年現在、世界の大豆作付面積のうち約75%、とうもろこし作付面積の約35%が遺伝子組換えとなっています。
また、米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)によると、米国の2011年に作付された大豆の94%、とうもろこしの88%が遺伝子組換え作物となっています。ほとんど遺伝子組換え作物に切り替わっていると言っても過言ではない状況です。
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http://www.nass.usda.gov/Newsroom/2011/06_30_2011.asp
日本は遺伝子組換え作物の生産は行っていませんが、大量の穀物を米国やアルゼンチン、ブラジル、カナダ等から輸入しており、遺伝子組換え作物の輸入量は相当量に達していると予想されます。
日本に輸入されている遺伝子組換え作物は、それぞれ次のような用途に使われています。
(それぞれの用途は、使用量の多い順)
とうもろこし:飼料用、スターチ用(異性化液糖、水飴、製紙、ダンボールなど)、グリッツ用(胚乳、フレーク、菓子など)
大豆:製油用(大豆油、脂肪大豆)、食品用(豆腐・油揚、納豆、みそ・しょう油)、飼料
なたね:製油用
わた:製油用
なお、厚生労働省医薬食品局食品安全部が公開している「遺伝子組換え食品Q&A 」(平成23年6月1日改訂第9版)によると、現在、日本で流通している遺伝子組換え食品には、「遺伝子組換え農作物とそれから作られた食品」と「遺伝子組換え微生物を利用して作られた食品添加物」があります。
(詳細な資料は、厚生労働省の「
遺伝子組換え食品」のサイトから入手できます。)
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http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/index.html
これらの資料によると、これまで厚生労働省によって安全性審査を経て輸入されているものとしては、トウモロコシ、なたね、ジャガイモなどの農作物7作物と、キモシン、α - アミラーゼなどの食品添加物6品目があります。
厚生労働省医薬食品局食品安全部(平成24年2月15日現在)
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安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧
http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/list.pdf
安全性審査の申請者/開発者等として名を連ねているのは、食品では、日本モンサント株式会社、デュポン株式会社、バイエルクロップサイエンス株式会社、シンジェンタシード株式会社、ダウ・ケミカル日本株式会社、ストーンビルペディグリードシード゛社、ハワイパパイヤ産業協会です。作物の種類は、じゃがいも、大豆、てんさい、とうもろこし、なたね、わた、 アルファルファ、パパイヤとなっています。
また、添加物の申請者/開発者等には、ノボザイムズジャパン株式会社、ジェネンコア協和株式会社、株式会社ロビン、株式会社野澤組、ジェネンコア・インターナショナル・ジャパン・リミテッド日本支店、ロシュ・ビタミン・ジャパン株式会社、江崎グリコ株式会社などがあります。
個々の企業の詳細については本ブログでは触れませんが、ここ数年で参入企業が増えてきています。
また、遺伝子組換え食品の性質には、害虫抵抗性や除草剤耐性のものに加えて、最近では、ウィルス抵抗性(じゃがいも)や高オレイン酸形質(大豆)、高リシン形質(とうもろこし)、耐熱性α-アミラーゼ産生(とうもろこし)、乾燥耐性(とうもろこし)、雄性不稔性(なたね)、 稔性回復性(なたね)のものが増えてきています。
高オレイン酸形質や高リシン形質、雄性不稔性、 稔性回復性などの聞き慣れないことばが出てきますが、これらについては消費者庁の「
食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)」で説明されています。
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http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin244.pdf
遺伝子組換え添加物の対象品種には、α-アミラーゼ、キモシン、プルラナーゼ 、リパーゼ、リボフラビン、グルコアミラーゼ、α - グルコシルトランスフェラーゼなどがあり、生産性向上の性質を有しています。
それでは、これらの遺伝子組換え食品についての安全性はどのようにして評価されているのでしょうか。
前述の「遺伝子組換え食品Q&A 」によると、遺伝子組換え食品の安全性については、基本的に申請者等が安全性評価を行って提出した資料に基づいて食品安全委員会が評価を行い、厚生労働大臣が個別に判断しています。厚労省は、このような審査方法は、医薬品や農薬、食品添加物等でも同様に行っていることであるとしています。
しかし、除草剤耐性や害虫抵抗性といった性質が付与されている遺伝子組換え作物は、そもそもその安全性評価の基準に問題があると言わざるを得ません。
このことについては、過去ブログ「遺伝子組み換え食品は安全か?(2007.03.11)」でも書きましたが、遺伝子組み換え作物・食品の安全性を評価する指標として「
実質的同等性」という概念が用いられています。
これは、遺伝子組み換え作物・食品が、これまで食べてきた同様の作物・食品と比べた場合に、形や生態の特徴、構成成分、使用方法などがほぼ同程度とみなせれば、その安全性は従来のものと同程度とみなせるという考え方です。
最初に「実質的同等性」の概念を持ち込んだのは、米国のFDA(米国食品医薬品局)ですが、その発端は国内のバイオテクノロジー企業の圧力によるものだと言われています。
この基準を、OECD(経済協力開発機構)、WHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)、CODEX委員会(FAO/WHOの下部組織)で合意して、現在世界中で採用されているのです。
日本では、「遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準」(平成16年1月29日食品安全委員会決定)で、同様の考え方を示し、安全性の知見が得られていない場合にのみ、必要と考えられる毒性試験に基づいて食品の安全性を確認することとしています。
このような評価基準では、長期にわたって摂取した場合の安全性やアレルギーの可能性については不透明です。
前述の「遺伝子組換え食品Q&A 」はこれまで9回にわたって改訂されていますが、新しいものでは、過去の安全性を疑問視する研究や事件等についても触れています。
しかし、説明を読む限り、安全性を確信させるほどの理論的な内容になっているとは言い難い気がします。安全性を否定する研究者が排除された過去もあります。
私は、遺伝子組換作物や食品に対する専門家の安全性への対応が、重大な事故を招いた原子力発電とダブって、安全性を強調されるほど不安が増幅します。
【遺伝子組み換え食品関連の過去ブログ】
・
遺伝子組み換え食品最大輸入国日本(2007.02.26)
・
身近にある遺伝子組み換え食品(2007.03.05)
・
遺伝子組み換え食品は安全か?(2007.03.11)
・
遺伝子組み換え食品の安全性と対策(2007.03.17)
・
遺伝子組み換え食品がはびこる時代(2008.4.14)
・
TPPと遺伝子組み換え種子メジャーの野望 (2011.7.11)
【遺伝子組み換え食品関連書籍】
【主な参考文献等】
・「遺伝子組換え食品Q&A 」(平成23年6月1日改訂第9版)
(厚生労働省医薬食品局食品安全部)