21世紀は水問題が極めて深刻になってくるといわれています。
世界的な水不足は、日本の食料問題や経済問題に直結するだけに、私たちの生活に大きな影響を与えることになります。
WHO(世界保健機関)によると、現在世界中で安全な水を飲めない人の数は11億人以上で、世界人口の約6分の1を占めています。また、トイレなどの適切な衛生施設を利用できない人は、26億人(世界人口の約4割)にものぼります。
水問題は日本とは無関係のように思われますが、近年、日本国内でも水不足が深刻になってきていますし、世界各地の水不足も日本に影響を与えています。そして、これらの水事情は、今後ますます深刻になっていくと予測されています。
【日本国内の水事情】
日本の年間降水量は約1,700ミリで、世界平均(約970ミリ)の約1.8倍もあります。しかしながら、各地で慢性的な渇水の問題が深刻になってきています。
徳島県の那珂川水系は年間降水量3,000ミリの多雨地域であるにもかかわらず、夏場の慢性的な渇水で、工業用水を大量に使う製紙会社など10社は、取水制限を余儀なくされています。この慢性的な渇水は、企業10社の機会損失(2005年78億円、2007年33億円)を招いており、日本製紙は今秋(2008年)、小松工場の閉鎖を決めています。
また、香川県の早明浦ダム(サメウラダム)では、2007年に数回にわたる取水制限を行い、2008年に入ってもダムの貯水率に注意しながら、いつでも取水制限を行えるように準備しています。
その他、岡山県の高梁川水系や広島・山口県境の小瀬川水系など、昨年は各地で渇水による取水制限が行われています。
最近の傾向としては、地球温暖化等の影響で気象パターンが変化し、同一地域で、多雨の年と少雨の年の差が大きいことがあげられます。
国土交通省水資源部の「水の循環と水資源」によると、全国51地点における平成14年の降水量の平均は1,408mmとなっていますが、その経年変化を見ると、昭和40年ごろから少雨の年が多くなっています。特に最近20~30年間は、少雨と多雨の開きが大きくなっています。
これは、渇水の起こる確率が高くなるとともに、多雨の年でも必要な時に十分な水が使えず、逆に災害のリスクが増えることを意味します。
【世界の水事情】
世界的に見ても、人口の急増や経済の発展により、各地で水不足や水質汚染が深刻になっています。
過去ブログ「中国の深刻な水質汚染と水不足」でも書いたように、中国では水質汚染と水不足が大きな問題となっており、これらを解消するための南水北調プロジェクトや三峡ダム建設が新たな問題を引き起こすことが懸念されています。
また、地球温暖化等の影響で気象パターンが変化し、洪水や旱魃が頻繁に起きています。今月(2008年2月)も、南米のエクアドルでは大洪水で5万人以上が被害を受け、同じく南米のチリでは逆に干ばつで深刻な水不足となっています。
複数の国を流れる国際河川流域では、すでに水資源をめぐる争いが始まっています。チグリス・ユーフラテス川流域のトルコ・シリア・イラクや、ヨルダン川流域のイスラエル・シリアなど、世界各地で水をめぐる地域紛争が起こっています。
「世界水会議」(注1)主催の第2回世界水フォーラム(2000年3月、オランダ)で採択された「世界水ビジョン」では、2025年までに40億人(注2)の人間が高い水ストレスがある国に住むことになると予想しています。「世界水ビジョン」では、水ストレスとは、『降雨のうち河川及び地下水系に入る水量に占める人間が取水する水量の割合』とされており、40%を超えると高い水ストレスの状態にあるとされています。
2025年の世界の人口は80億人超との予測がありますので、概ね世界中の2人に1人は高い水ストレスを受けることになります。グローバル経済のなかにあっては、当然のことながら日本も直接または間接的に大きな影響を被ることとなると思われます。
注1)世界水会議(WWC:World Water Council)は、1996年に、世界銀行や国連開発計画(UNDP)等の国際機関や水に関する国際学会等が参加して設立されたNGO
世界水フォーラムは、1997年から3年に1回行われ、次回は2009年(第5回)です。世界水フォーラムの動向は、経済産業省のサイト「(参考)世界水フォーラムの動向について」で確認できます。
注2)予測には複数のパターンがあり、当該数字は現在の政策が維持され、現在の傾向が将来に向けてそのまま延長されると仮定した場合のもの。
【世界的な水不足は日本の食料問題・経済問題と直結】
世界的な水不足は、日本国民の生活にも大きな影響をもたらします。
特に影響を受けるのは、食料問題です。
過去ブログ「日本も本当は水不足の国?」で書いたように、日本は大量の農産物を輸入することで、間接的に農産物や製品の生産に使用された水(バーチャルウォーター・仮想水)を輸入しています。この水の量は、日本国内における年間灌漑用水使用量590億m3(立方メートル)を上回り、約640億m3にものぼると推計されています。(東京大学生産技術研究所 沖 大幹准教授らのグループによる試算)
また、水不足は、前述の那珂川水系の企業に見るように、日本国内はもとより世界各地に進出している日本企業の経営にも大きな影響を与えることになります。
日本では、ミネラルウォーターの購入が日常化しながらも、いまだに心の奥底には「水と空気はタダ」という感覚があります。しかし、近い将来、確実に水問題は深刻になると思われます。
そして、この水問題は、温暖化等による気象パターンの変化だけでなく複数の要因が複雑に絡み合っているため、解決が容易ではありません。
私たちは、もっと水問題に関心を持ち、生活者の立場から少なくともできるところから、節水に努めることが大切です。
【主な参考文献】
・日経エコロジー 2008.03号 水資源国・日本の幻想
・アジア・太平洋水フォーラム ポリシーブリーフ2007(仮訳暫定版)
・国土交通省 水の循環と水資源
・農林水産省 世界の水資源とわが国の農業用水について 平成14年9月30日
・経済産業省 (参考)世界水フォーラムの動向について
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おすすめの環境・健康商品や本などの紹介も行っています。
・姉妹ブログ「環境とからだにやさしい生活」
世界的な水不足は、日本の食料問題や経済問題に直結するだけに、私たちの生活に大きな影響を与えることになります。
WHO(世界保健機関)によると、現在世界中で安全な水を飲めない人の数は11億人以上で、世界人口の約6分の1を占めています。また、トイレなどの適切な衛生施設を利用できない人は、26億人(世界人口の約4割)にものぼります。
水問題は日本とは無関係のように思われますが、近年、日本国内でも水不足が深刻になってきていますし、世界各地の水不足も日本に影響を与えています。そして、これらの水事情は、今後ますます深刻になっていくと予測されています。
【日本国内の水事情】
日本の年間降水量は約1,700ミリで、世界平均(約970ミリ)の約1.8倍もあります。しかしながら、各地で慢性的な渇水の問題が深刻になってきています。
徳島県の那珂川水系は年間降水量3,000ミリの多雨地域であるにもかかわらず、夏場の慢性的な渇水で、工業用水を大量に使う製紙会社など10社は、取水制限を余儀なくされています。この慢性的な渇水は、企業10社の機会損失(2005年78億円、2007年33億円)を招いており、日本製紙は今秋(2008年)、小松工場の閉鎖を決めています。
また、香川県の早明浦ダム(サメウラダム)では、2007年に数回にわたる取水制限を行い、2008年に入ってもダムの貯水率に注意しながら、いつでも取水制限を行えるように準備しています。
その他、岡山県の高梁川水系や広島・山口県境の小瀬川水系など、昨年は各地で渇水による取水制限が行われています。
最近の傾向としては、地球温暖化等の影響で気象パターンが変化し、同一地域で、多雨の年と少雨の年の差が大きいことがあげられます。
国土交通省水資源部の「水の循環と水資源」によると、全国51地点における平成14年の降水量の平均は1,408mmとなっていますが、その経年変化を見ると、昭和40年ごろから少雨の年が多くなっています。特に最近20~30年間は、少雨と多雨の開きが大きくなっています。
これは、渇水の起こる確率が高くなるとともに、多雨の年でも必要な時に十分な水が使えず、逆に災害のリスクが増えることを意味します。
【世界の水事情】
世界的に見ても、人口の急増や経済の発展により、各地で水不足や水質汚染が深刻になっています。
過去ブログ「中国の深刻な水質汚染と水不足」でも書いたように、中国では水質汚染と水不足が大きな問題となっており、これらを解消するための南水北調プロジェクトや三峡ダム建設が新たな問題を引き起こすことが懸念されています。
また、地球温暖化等の影響で気象パターンが変化し、洪水や旱魃が頻繁に起きています。今月(2008年2月)も、南米のエクアドルでは大洪水で5万人以上が被害を受け、同じく南米のチリでは逆に干ばつで深刻な水不足となっています。
複数の国を流れる国際河川流域では、すでに水資源をめぐる争いが始まっています。チグリス・ユーフラテス川流域のトルコ・シリア・イラクや、ヨルダン川流域のイスラエル・シリアなど、世界各地で水をめぐる地域紛争が起こっています。
「世界水会議」(注1)主催の第2回世界水フォーラム(2000年3月、オランダ)で採択された「世界水ビジョン」では、2025年までに40億人(注2)の人間が高い水ストレスがある国に住むことになると予想しています。「世界水ビジョン」では、水ストレスとは、『降雨のうち河川及び地下水系に入る水量に占める人間が取水する水量の割合』とされており、40%を超えると高い水ストレスの状態にあるとされています。
2025年の世界の人口は80億人超との予測がありますので、概ね世界中の2人に1人は高い水ストレスを受けることになります。グローバル経済のなかにあっては、当然のことながら日本も直接または間接的に大きな影響を被ることとなると思われます。
注1)世界水会議(WWC:World Water Council)は、1996年に、世界銀行や国連開発計画(UNDP)等の国際機関や水に関する国際学会等が参加して設立されたNGO
世界水フォーラムは、1997年から3年に1回行われ、次回は2009年(第5回)です。世界水フォーラムの動向は、経済産業省のサイト「(参考)世界水フォーラムの動向について」で確認できます。
注2)予測には複数のパターンがあり、当該数字は現在の政策が維持され、現在の傾向が将来に向けてそのまま延長されると仮定した場合のもの。
【世界的な水不足は日本の食料問題・経済問題と直結】
世界的な水不足は、日本国民の生活にも大きな影響をもたらします。
特に影響を受けるのは、食料問題です。
過去ブログ「日本も本当は水不足の国?」で書いたように、日本は大量の農産物を輸入することで、間接的に農産物や製品の生産に使用された水(バーチャルウォーター・仮想水)を輸入しています。この水の量は、日本国内における年間灌漑用水使用量590億m3(立方メートル)を上回り、約640億m3にものぼると推計されています。(東京大学生産技術研究所 沖 大幹准教授らのグループによる試算)
また、水不足は、前述の那珂川水系の企業に見るように、日本国内はもとより世界各地に進出している日本企業の経営にも大きな影響を与えることになります。
日本では、ミネラルウォーターの購入が日常化しながらも、いまだに心の奥底には「水と空気はタダ」という感覚があります。しかし、近い将来、確実に水問題は深刻になると思われます。
そして、この水問題は、温暖化等による気象パターンの変化だけでなく複数の要因が複雑に絡み合っているため、解決が容易ではありません。
私たちは、もっと水問題に関心を持ち、生活者の立場から少なくともできるところから、節水に努めることが大切です。
【主な参考文献】
・日経エコロジー 2008.03号 水資源国・日本の幻想
・アジア・太平洋水フォーラム ポリシーブリーフ2007(仮訳暫定版)
・国土交通省 水の循環と水資源
・農林水産省 世界の水資源とわが国の農業用水について 平成14年9月30日
・経済産業省 (参考)世界水フォーラムの動向について
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