環境と体にやさしい生き方

環境の悪化は生物系全体に大きな影響を与えています。環境と体にやさしい健康的な生活を考えるための新鮮な情報を紹介します。

あやうくテレビの捏造に加担?

2007年10月23日 | 暮らし全般
テレビ取材を受けましたが、視聴率を上げるための巧妙な手口に乗せられ、あやうく番組の捏造に加担するところでした。その巧妙な手口とは......


私たちのまわりには、さまざまな情報があふれています。そして、これらの情報の多くは意図的な目的をもって作られています。これは、企業の宣伝に限らず、ワイドショーや報道番組でも同様です。関西テレビ「発掘!あるある大事典Ⅱ」の納豆ダイエットなどは、その典型的な例だといえます。


私は今回、会社として某テレビ局の取材を受け、あやうく番組の捏造に加担するところでした。番組制作会社の手口はとても巧妙なため、取材される側はその意識はなくても、知らず知らずのうちにその術中にはまってしまっていたというパターンが多いのではないでしょうか。

番組制作会社の常套手段のひとつは、『視聴者に分かりやすくするため』という大義名分のもと、あの手この手を使って表現するというものです。取材内容に関して具体的なことは書けませんが、今回は、明らかに比較するベースが異なる日本とC国のものを無理やり比較して、視聴者にC国の技術力が低いという認識を持たせようという意図が見え隠れしていました。テレビの映像はどんどん流れていくため、その情報について視聴者は論理的に考える時間が無く、情報提供側の誇張した強烈なイメージだけしか残らない場合が多いのです。

取材のための電話による事前打合せでは、技術的な比較をするための土俵が同じではないにもかかわらず、制作会社のディレクターは、延々30分にもわたって『視聴者に分かりやすく説明するために』という言葉を幾度となく用いて、比較映像を撮るような台本作りへ持っていこうとしてきました。このようなやり取りの中で、私はとうとう堪忍袋の緒が切れて、怒鳴って電話を切りました。それ以降この方法について、ディレクターからは話はありませんでしたが、編集の過程でナレーションを入れるなどの方法で優劣を比較する可能性は否定できません。


常套手段の方法の二つ目は、『権威ある人、有名な人』を番組で利用するというものです。たとえば、健康器具や健康食品の宣伝などでは、「○○大学△△教授もその効果を確認!!」とか「□□博士の研究結果では・・・・」などの表現がよく使われますが、これは、専門家の権威を利用したものといえます。また、芸能人や著名人を使って安心感や親近感をもたせることもよく行われています。

今回の取材の場合、大学教授を登場させて番組そのものの信憑性を高めようという意図が見え見えでした。この教授は、今回の取材に関する技術についてはほとんど専門的な知識を持っておらず、聞きかじり程度の知識しかありません。

技術的な部分の取材では、ディレクターが大学教授と私にさまざまな質問を行い、最終的にはこの教授に対して、「これまでの話をまとめて話してください。」と指示を出すのです。要するに、最終的に教授がもっともらしく話ができるように、事前の質問のなかで回答を集約していく方法をとっているのです。
このような取材方法をとったために、わずか4~5分の放映時間にもかかわらず、取材には3時間余りも要しました。

たとえこの教授に知識が無くても、視聴者は、「大学教授の言うことだから」ということでその話を信じます。また、編集の過程でナレーションや別の映像を挿入することで、最終的には回答者の意図とはまったく異なる番組に仕立てることも可能です。

今回取材を受けた番組は全国の民放で放送されると思われ、取材内容が意図的な目的で使われ視聴者に誤解を与えることになりはしないかと大変憂慮しています。


インターネットやテレビ、新聞、チラシなどでは、視聴率や購読率、商品の購買意欲などを高めるため、さまざまな手段を使っていますが、その方法がいかに巧妙化しているかを今回、痛切に感じました。

私たちは、賢い生活者、消費者になるために、また自分自身を守るために、
・ひとつの情報のみで判断しない。常に複数の情報に基づいて客観的に評価する。
・情報には表と裏があるという意識を持つ。
 (健康情報などでも、ある一面のメリットだけを強調したものが多い。)
・権威やデータなどの根拠をむやみに信用しない。
・取材やインタビューを受ける際は、慎重に検討する。

などに留意することが必要です。


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魚の食品としての安全性

2007年10月17日 | 食生活等
魚はとても有用な食品であるにもかかわらず、海の汚染が進んでいるために、食品としての安全性が大きな問題となっています。

【魚の食品としての効果】
私たちは、食物からさまざまな栄養分を摂っています。特に不飽和脂肪酸は、心臓、循環器、脳、皮膚などの機能を保ってくれる有用なものであり、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸は人間の体内では生成できないため、食物からとる以外に方法がありません。

不飽和脂肪酸は、青魚に多く含まれています。特に青魚には、不飽和脂肪酸の中でもDHAやEPAといった良質の脂肪酸がたくさん含まれています。青魚とは、サバ・イワシ・サンマ・アジなど、背中の部分が青い回遊魚のことを言います。その種類には、サケ・マグロ・ブリ・ニシン・アユなども含まれます。

魚は身の部分の色で分けると、赤身魚と白身魚に区分されます。
赤身の魚はマグロやカツオなどであり、「ミオグロビン」という特殊なタンパク質を多く含んでいるため筋肉組織が赤色をしています。ミオグロビンに多く含まれている鉄分は、貧血がある人にはとてもよい食物です。赤身の魚は、DHAやEPAも多くもっています。

(参考:DHA、EPA)
DHAは、ドコサヘキサエン酸の略で、中性脂肪の低下や血栓症の予防効果があるほか、記憶学習能力の向上、脳や神経組織の発育促進、視力の向上、血しょう中のコレステロール低下作用などの働きがあります。また、EPAは、エイコサペンタエン酸の略で、コレステロールや脂肪を減らす働きがあり、動脈硬化や心筋梗塞、脳血栓などの成人病を予防します。


このように、魚介類には人間の健康に有用な成分が多く含まれています。しかしその一方で、これらに蓄積された有害物質による健康被害が懸念されています。


【深刻な海洋汚染】
魚の生息する海洋の環境は、さまざまな要因で急速に悪化しています。
その要因としては、次のようなものがあげられます。

・工場排水、農畜産業排水、生活排水等に含まれる有機物や窒素、リンなどの無機物による汚染
・海洋投棄物や陸上からの流失物(プラスチック類、魚網など)による汚染
・過去に海底に沈殿したプラスチックなどから溶出した有害物質による汚染
・油田や船舶から流出した油による汚染
・船舶塗料の溶出による汚染
・焼却や燃焼による大気汚染を原因とした海洋汚染
  など

この他、合流式下水道も海洋汚染の原因のひとつです。合流下水道とは生活排水と雨水を同じ管きょで下水処理場に送る方式です。このため、大雨の際に水量が増えて処理しきれない場合には、未処理の汚水がそのまま海に放流されます。東京湾には年間に約30回も処理しきれなかった汚水が流れ込んでいます。(国土交通省では、合流式下水道の改善を平成16年から10年間で完了することを、下水道法施行令の改正で義務づけています。)

海洋汚染の大きな特徴は、汚染物質の多くが海中にあって目にみえないことです。地域によっては砂浜を覆い尽くすほどの漂着ゴミも、海洋汚染物質の一握りに過ぎません。さらに、これらの汚染物質から溶出した有害物質については、姿かたちが見えないために分析しない限り確認のしようがありません。

東京海洋大学の兼広春之教授らが東京湾で海底ゴミを収集したところ、約50%がプラスチック容器や袋、約35%が空き缶だったとのことです。毎年、湾全体で年間100トンのゴミが増え続けているといいます。これと同様の事態が世界の海で起こっているのです。年間に日本全国の海岸に漂着したゴミだけでも約2万6,000トンに上ると推定されています。


【海洋汚染の魚への影響】
水中の有機物や窒素、リンなどが多くなり富栄養化状態になると、植物プランクトンが異常繁殖して赤潮が発生します。近年の地球温暖化による海水温の上昇は、これに拍車をかけています。東京湾ではここ数年、赤潮が80~120日も発生しています。
赤潮が発生すると、水中の溶存酸素濃度が低下するために魚が生息できなくなったり、呼吸する際にエラにプランクトンが詰まって窒息死します。また、繁殖した藻類が産出する毒素によって死滅する場合もあります。

大量発生した植物プランクトンが死んで海底に沈むと、分解の過程で硫化水素が発生し大量の酸素を消費するため、水中の溶存酸素量(DO)が減少して青潮が発生します。東京湾では、年間10~20日も発生しています。この青潮も、魚の成育に影響を及ぼします。


海洋を漂流するゴミ(マリンデブリ)による影響も無視できません。たとえばプラスチック製品の原料となる5ミリメートル以下の小さなレジン・ペレットを魚が飲み込んでしまうと、腸閉塞などにより餓死してしまいます。また、流失や廃棄による魚網がいつまでも海中を漂うことで海の生物を取り続ける「ゴースト・フィッシング」によって、命をおとす海洋生物も少なくありません。


さらに怖いのは、海洋への流出水に混入したり漂流ゴミに吸着した有害物質、海底の沈殿物などから溶出した有害物質です。これらの有害物質には、ダイオキシンやPCBなどの内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)、水銀などの重金属、発がん性の芳香族炭化水素などがあります。

海洋生物は、生育の過程でこれらの有害物質を蓄積していきます。特に、寿命が長く大型の魚は、小さな魚を餌として食べることで蓄積の度合いは高くなります。また、海底にすむアナゴなども海底に沈殿した有害物質を蓄積しやすい環境にあります。


【魚の食品としての安全性】
食物連鎖の頂点にある私たち人間が食品として魚を食べる場合、有害物質の体内での蓄積が健康に与える影響が懸念されます。たとえば、世界保健機構(WHO)は1日当たりのダイオキシン類の最大耐容摂取量を4pg(※)としていますが、東京湾内の魚介類の平均ダイオキシン濃度は2005年度に1g当たり4.4pg-TEQ(※)との報告もあります。

(※:pgは1兆分の1g、TEQは毒性等量で、もっとも毒性の強い2,3,7,8-TCDDの毒性を1とした換算量)


変圧器やコンデンサのほか、塗料、可塑剤、ノーカーボン紙など、幅広い分野で使用されてきたPCBの魚への蓄積も進んでいます。PCBは、体内の脂肪に蓄積しやすく、発がん性があり、皮膚や内臓の障害、ホルモンの異常を引き起こします。特に人間の胎児は母親の子宮内で胎盤を経由して、また、出生後は母乳を通じてPCBを吸収します。
日本では、1968年に、福岡県のカネミ倉庫で製造された食用油に熱媒体として使用されていたPCBが混入し、これを摂取した人々に肝機能障害や肌の異常、頭痛などを引き起こしたいわゆるカネミ油症事件で、全国で10,000人以上が被害を訴え、約2,000人が患者として認定されました。

日本では、1974年にPCBの製造及び輸入が原則禁止になってから実に27年が経過して、ようやく2001年7月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」が施行されました。これによって、PCB廃棄物の保管事業者は15年以内(2016年まで)に適正に処理することが義務付けられましたが、過去に製造されたPCBの70%以上は今でも使用されているため、環境を汚染し続けているのです。


この他、ノニルフェノールビスフェノールAの魚介類への蓄積も増加しています。
ノニルフェノールは、プラスチック製品の他、塗料や工業用洗浄剤、潤滑油、化粧品、農薬などの添加剤としても使われており、脂質と結合しやすい性質があります。
ビスフェノールAはビフェノール化合物の一種で、ポリカーボネート樹脂や食品缶詰の内部コーティング、ビンの蓋、水道管の内張り、虫歯予防のシーラントなどに使用されています。


また、愛媛大沿岸環境科学研究センターなどの分析で、近年、繊維製品や建材、プラスチック製品に使われている臭素系難燃剤の一種が、 日本周辺やアジアの海洋生物中に蓄積する量が増えていることが分かりました。この物質はヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)と呼ばれ、動物実験で甲状腺ホルモンへの影響や神経毒性も指摘され、各国で新たな汚染物質として注目されています。

関連記事
難燃剤の汚染 急拡大 アジアの海洋生物に蓄積 愛媛大調査


愛媛大沿岸環境科学研究センターは、米ニューヨーク州立大との共同研究で、北半球の先進工業国から発生した有機フッ素化合物が南極まで到達して地球規模で環境汚染が広がっていることも突き止めています。この有機フッ素化合物は、動物実験で発達への影響や免疫毒性などが指摘されています。


これまで書いてきたように、魚の食品としての効果は高い反面、安全性への不安は高まっています。食品としての安全性を考えた場合、食物連鎖の上位にあり寿命の長い魚や海底で生息する魚については、量を控えるなどの注意が必要です。また、経済発展のスピードに環境対策が伴わない国の沿岸地域や海水の流動性が低い湾内などでとれた魚についても、注意が必要です。

そして、一番大切なのは、私たちの命を支える海が汚染の一途をたどっていることをもっと認識して、私たち一人ひとりが海の環境を守るために、「汚さない」という意識を持ち、身近なところからきれいにするための行動をおこすことでしょう。


【主な参考文献】
・病気にならない生き方 新谷 弘実 サンマーク出版 2005
・日経エコロジー 2007.11号 東京湾の水質
・日経エコロジー 2007.11号 問われる大型魚の食品安全性
・日経エコロジー 2006.11号 すぐそこにある危機
・プラスチックの海 佐尾和子・丹後玲子・根本稔 編、海洋工学研究所出版部
・西日本新聞九州ねっとワードBOX ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDs)
・日経新聞(夕刊)2007.5.16 有害な有機フッ素化合物 北半球の汚染 南極到達
・Wikipedia 赤潮
・Wikipedia 青潮


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資源循環の裏で進む環境汚染と健康被害

2007年10月07日 | 環境問題
中国をはじめとした新興国の経済発展で、資源の高騰が続いています。このため、再生資源の循環が活発になってきていますが、その一方で環境汚染と健康被害も拡大しています。

現在、国内のリサイクルシステムは、次のように全体的な法律と個別物品の特性に応じた法律によって整備されています。

【全般的な法律】
循環型社会基本法(循環型社会形成推進基本法、2001年1月施行)
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律、2001年4月改正施行)
資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律、2001年4月施行)
  
①で循環型社会を構築するための基本的な事項を定め、この下に②と③の法律があると考えるとわかりやすいと思います。

【個別の物品特性に応じた法律】
容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律、2000年4月施行)
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法、2001年4月施行)
食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律、2001年5月施行)
建設リサイクル法(建設工事に係る資源の再資源化等に関する法律、2002年5月施行)
自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律、2005年1月施行)

これらの法律の整備によって、市場に供給される循環資源の量が増加している一方で、アジア地域の経済発展によって、資源の需要も増加しています。この二つの要因が相まって、現在、日本からの再生資源や中古品の輸出は、総輸出額の10%を占めるまでになっており、なかでも中国への輸出量が増えています。

貿易統計によると、2006年に日本から中国に輸出された主な再生可能資源は、鉄(275万トン、1423億円)、銅(37万トン、701億円)、アルミ(8万トン、105億円)、プラスチック(23万トン、116億円)、古紙(319万トン、438億円)となっています。また、韓国へは、鉄(337万トン、1255億円)、香港へは、プラスチック(96万トン、444億円)が輸出されています。

中国は、汚れの付着や生活ゴミの混入した廃プラスチックの輸入を禁止していますが、これらは香港を経由して再輸出されており、結果として日本は、中国に約120万トンの廃プラスチックを輸出しています。中国の2006年の再生可能プラスチックの輸入実績は587万トンですから、日本からの輸入は約2割を占めていることになります。


この日本と中国の需給関係は、「中国の急激な発展に伴う資源の確保」「日本における廃棄物の処理にかかる費用の低減」というお互いの短期的な利害の一致によるところが大きく、長期的な資源循環の視点に立ったものではありません。
有害な廃棄物の国家間の移動に関しては、国際的な条約である「バーゼル条約」で規制され、日本ではこれに基づいた国内法も整備されていますが、これらの規制等を潜り抜けて密輸や違法な貿易等の悪事を働く業者も少なからずいるようです。。


【バーゼル条約】
有害廃棄物の越境移動に関しては、1989年に「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が採択され、約170ヵ国が批准し日本もこれに加入しています。この条約の目的は、先進国内で発生した有害な廃棄物が開発途上国に輸出されて、深刻な環境汚染につながることを防止するために、ルールを定めたものです。


【特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律】
日本では、バーゼル条約に基づいて「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」を制定しています。この法律の目的は次のようなものです。

「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」の目的(同法律の第一条抜粋)
この法律は、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下「条約」という。)等の的確かつ円滑な実施を確保するため、特定有害廃棄物等の輸出、輸入、運搬及び処分の規制に関する措置を講じ、もって人の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。


他の国でも、それぞれ国内産業の保護や有害物質の流入防止などを目的として輸入禁止品目を定めています。
因みに、中国の輸入禁止品目は、日中商品検査株式会社の次のサイトなどから確認できます。

http://www.spvjcic.com/china_5.html(当該サイト内の「輸入禁止品目リスト」

これによると、2002年8月以降、エアコン、冷蔵庫、コンピューター等設備などを含む廃機電製品21品目(部品、ばらばらになった部品、かけらになった部品、砕いた部品を含む、国家の別規定を除外)が輸入禁止貨物となっています。


しかしながら、前述したようにこれらの廃棄物資源の需要は旺盛で、違反は後を絶ちません。中国へは、輸入が禁止されている中古家電や廃家電が香港やベトナムなどの様々なルートで密輸されています。また、さまざまな金属やプラスチックなどが入り混じったスクラップ(雑品)の中に、輸入禁止品を混合させることも少なくなく、混入した鉛バッテリーのショートや残留油が原因と思われる船舶火災が頻発しています。


また、日本から中国をはじめとしたアジア地域に中古品やゴミの類が大量に輸出されることで、輸出先の環境汚染が深刻になっています。たとえば、中国広東省北東部の貴嶼(グイユ)は、世界中の中古家電や廃家電をリサイクルしていることで有名ですが、作業所は零細・劣悪で、処理方法も極めて稚拙です。

たとえば、家電の電子基板からICチップを取り出すには、空き缶の中に石炭を入れて、その上に敷いた鉄板を熱して鉛はんだを溶かしています。また、金は、強酸の溶液に漬けて分離しています。このような作業はほとんど防護もない状態で行われ、排気や廃液は垂れ流し状態なのが現状です。さらに、資源として取り出された後の残物の不法投棄も環境悪化の一因です。環境対策に必要な設備のための投資が不要なので、コスト競争力は極めて強く、環境対策を整えた業者は太刀打ちできません。

貴嶼では住民の健康状態も悪化しており、2005年の中国・汕頭大学医学部による1~6歳児165人を対象とした血液検査で、80%以上が鉛中毒になっていたことが分かったとのことです。
このような事態に対して、中国政府もリサイクル団地の建設なども進めていますが、金銭的な豊かさを求める人々の危険で稚拙なリサイクルはなかなか減らないようです。


このような問題を引き起こす原因のひとつとして、日本のリサイクル制度が廃棄物の不正取引を助長しているとの指摘もあります。たとえば、現状の家電リサイクル法では、その対象となるのはエアコン、ブラウン管テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目の廃家電に限られています。中古家電はこの対象とならないため、廃品回収業者が、リサイクル料金を徴収せずに回収して輸出していているのです。経済産業省と環境省によるリサイクル対象4品目の不用家電の調査では、2005年に不用となった2287万台のうち約3割の771万台が海外へ流れています。

また、容器包装リサイクル法では、ペットボトルは飲料メーカーなどがリサイクル業者に処理費用を支払うことを前提としていますが、現状は、処理業者が購入しており、その多くが中国へ輸出されています。その結果、国内の廃ペットボトルのリサイクル工場は稼働率が極めて低くなっています。


このような輸出側と輸入側の短期的な利害の一致による資源ごみの循環は、国際的な経済の歪みと環境悪化を加速させます。政府は、もっと国際的にグローバルな見地からリサイクルに係る施策について検討するべきでしょう。また、多くの資源を輸入に頼って生活している私たち国民も、もっと身近にあるモノを限りある資源としてとらえ、資源の循環について関心を持つべきだと思います。


主な参考資料
・日経ビジネス 2007.9.17号 アジア静脈経済圏 ゴミから開ける巨大産業
・WEB版 読売新聞『「雑品」エアコン、中国へ』(2006.10.17)
・WEB版 読売新聞『海外流出、ごみ循環に影』(2007.6.9)


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